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12話 ボッチ はじまりの試練に挑戦する

 ――その理由はシークレットエリアに挑戦する権利を得られるからだ。


 シークレットエリアとはプレイヤーに特別な条件を要求してくる変わった場所だ。

 そして、その内容をクリアすることで特別な武器や防具が貰える。

 更に影法師ドッペルゲンガーである俺が喉から手がでるほど欲しいSPスキルポイントの巻物が貰える。

 俺は今回その場所にいって戦力を整えるつもりだ。


 たしかに、攻撃に極振りして多少は戦えるようになったが、これからもソロプレイをしていくとなると火力不足になってくるだろう。

 そして、町のNPCとお話をしなくても装備が手に入るっていうこと……これは是非とも手に入れておきたい。


 人見知りがここであだになるとは思わなかった。

 画面越しのゲームなら何の問題もなかったが、このゲームはVRだ。

 NPCも現実の人間のようにリアルな動きや会話をするため人見知りの俺は町でアイテムや武器、防具を未だに買えていない。


 なんでレッドネームでもないのに武器や防具、アイテムの購入が縛りプレイになっているのだろうか?

 それに冒険者ギルドも未だに行ってないからクエストすら受けてない。

 とことん王道から外れたプレイをしている気がする。


 話を戻すが、そのシークレットエリアはこの『はじまりの草原』にあるのだ。

 その場所には、はじまりの神が作った試練があるらしい。

 問題なのはその難易度で、未だに試練を突破して特別な武具を手に入れたのは九人しかいないということだ。


 攻略サイトによると、試練の内容は自分の影と戦うらしい。

 現在の自分のスキルを影がそのまま習得し、更にステータスはプレイヤーの3倍になるという鬼畜仕様だ。


 例えば10レベルで試練を受けた場合、相手は30レベル相当のステータスになるということ。

 更に回復系や能力アップ系のアイテムは禁止になっており使えない。


 じゃあどうやって倒すのかというと相手はあくまでAIなのが勝負を上手く決める鍵になる。

 あくまでもAIの思考で動くわけだから、プレイヤー本人の動きや思考を忠実に再現するわけではない。


 つまりプレイヤーが勝つためには、そのAIを圧倒できるだけのPSプレイヤースキルが要求される。

 相手の動きを先読みして被弾せずに攻撃や魔法を当てたりなど、普通の人のゾーンを越えた反射速度なり、操作技量なり、第六感などが強い人間が試練を突破できるということだ。


 ちなみに俺はこの試練を突破する自信がある。

 なぜかというと俺のステータスは攻撃のみ極振りで、あとは職業ボーナスもないから他の数値は0だ。

 つまり、俺の影は攻撃だけが3倍にあがるだけで、後は紙も同然というわけだ。

 

 しかもスキル構成は使い勝手の良いまともな攻撃スキルは一切ない。

 普通ならば、ゲームシステムがアシストして最適な動きで技などを放てる。

 だが、俺のスキル構成はプレイヤー自身に技量が要求される【パリィ】と【カウンター<瞬空歩>】で失敗時にデメリットつき。

 唯一ゆいいつまともなスキル【エクスプロージョン】は魔法攻撃力が0のためダメージがないとまったく意味がない状態。


 俺の場合は例えるなら、お互い拳銃を持って引き金を引き、先に弾を当てた方が勝つという別ゲーになるわけだ。

 というか、なんで職業<影法師ドッペルゲンガー>である俺が、自分の影と戦わないといけないのだろうか? 

 とまあ、その疑問はさておきシークレットエリアがある場所まで向かいますか。




 『はじまりの草原』をカウンターで飛行移動しながら東をずっと進んだ先にそれはあった。

 平坦な草原の中に、そこだけポッカリと穴が空いている。

 その大穴を覗いてみると50メートルくらい先の地面の中心に不自然なドアが、ぽつんと鎮座ちんざしていた。

 

 おそらく、あれがシークレットエリアの入り口なのだろう。

 で、これどうやって降りるんだ? 辺りに階段はないしギミックらしきものも見つからない。

 考えるのも面倒だし飛び込むか!


 俺は思考を放棄すると大穴へ身を投じる。

 ひゃっほうー! 風が気持ちいいな。

 まるで紐なしバンジーで高所から飛び降りている感じだな。

 武術の修行で親父に崖から落とされたことを思い出す。

 あの日のことを絶対に許さないぞ! いつか泣かしてやる。


 そのまま下降していき地面にぶつかる瞬間に【エクスプロージョン】を放つと上空へ身を飛ばす。

 後はこれを繰り返して【エクスプロージョン】の爆発範囲を調整することで、だんだん下へと降りていくだけだ。

 よし、着地成功。


 そして俺は縦半分に黒と白で分かれた扉を開くと中に入る。

 中に入ると真っ白な空間が広がっており宙には黒の四角いかたまりが大小様々なサイズで浮かんでいる。

 しばらくその光景を眺めながら歩いていると、そこにもドアが、ぽつんと鎮座していた。

 俺はそのドアに向かって歩いていると突如、目の前の真っ白な床から黒い影がい上がってきた。


 その黒い影の根元を辿たどると、どうやら俺の影につながっているようだ。

 少しすると俺の影が完全に切り離され目の前の黒い影と一つになった。

 ついに現れたか、ということは試練はもう始まっているのか?


 俺の影は手元に初心者のナイフを構えると俺の方に走ってきた。

 ――って俺の影、足がおそいなぁ!

 速さのステータス0だから仕様がないけど。

 

 やっと目の前にきた影が俺に攻撃を振るってくる。


「パリィ、パリィ、パリィ、パリィッ!」


 右から左から上から下からくる攻撃を【パリィ】で防いでいく。

 大振りの攻撃は一切行わず、隙が少ない動作でこちらの体勢を崩そうと様々な角度で攻撃してくる。

 俺のステータスのせいで足は遅かったけど攻撃する技術は、なかなか鋭さがあるな。

 これほどの動きができる技術持ち、三倍の速さで動かれていたら厄介だっただろうなと思う。


 それから何度も同じような攻防を続けて、こちらから攻撃する機会をうかがっていた。

 今までの影の動きを観察していたからか次は右からくると直感的に判断すると姿勢を深く下げる。

 そして予想どおり右からきた攻撃を避けると影に足払いを仕掛ける。


 それにより影がバランスを崩して体勢を整える、その僅かな隙に【エクスプロージョン】を放つ。

 俺と影との1メートルしかない距離で爆発が起きる。

 ダメージはないが【エクスプロージョン】の爆風によって影が吹き飛ぶ。

 俺は爆発を利用して【カウンター<瞬空歩>】を発動すると宙に浮き影を追うように加速する。


「宙で身動きができないだろ? これで終わりだぁああああああ!」


 一瞬で距離を詰めると初心者のナイフが影を切り裂く――と思ったが手応えがおかしい。

 金属がぶつかり合う音が響くと俺の体は影から僅かに横にズレそのまま通り過ぎる。


 

 ――嘘だろう!? あいつ……あの瞬間に【パリィ】を成功させて防ぎやがった!! 

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