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亮太の化物日常記  作者: 鈴木梨亜
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亮太の化物日常記

「ここが部室棟。夜は真っ暗で、誰がどこにいるかすら分からないんだよ。だから、合宿のある日は肝試しするんだー。」

咲良は、楽しそうに指をさしながら言った。

「部活...って?」

亮太は首を傾げた。咲良は驚いた様に声をあげた。

「部活を知らないの!?」

亮太は頷き、ごめん。と申し訳無さそうに呟いた。

「あ、謝らなくていいって!!でも、びっくりした。今時、部活知らない人なんていたんだねー。部活っていうのは学校が終わってからやる運動とかの活動の事だよ。主に二種類に分かれていて、そのうちの一つが運動部なの。運動部はさっき行った体育館を使う、バスケ部やバトミントン部があって、グラウンドには、サッカー部、野球部があるの。あともう一つ文化部っていって、音楽室を使う吹奏楽部と、美術室を使っている芸術部っていうのがあるんだ。」

「え、と、白江さんは部活入ってる、の?」

「私は吹奏楽部。…といっても、部員少なくてあまり活動できてないんだけどね。」

咲良が亮太の方を向く。風に乗って咲良の髪がふわりと浮いた。

「だから今、初心者大歓迎!どう?楽しいよ。」

とん、と亮太の肩を叩く。驚いて身を引くと、そこには咲良の楽しそうな笑みがあった。

「あはは!まぁ、考えといてよ。それはそうと、次は特別棟の方案内するからついてきて!」

咲良は亮太の前を通り過ぎ、渡り廊下を歩いて行く。亮太もその後に続いて行った。

「私ね、家が神社で、お父さんとお母さん二人とも神職に就いてるんだ。相模君のお母さんとお父さんは何をやってるの?」

亮太は返答に困った。しばしの逡巡(しゅんじゅん)の末、分からない。と小さな声で呟いた。

「そっか。変だねぇ。相模君って記憶がないみたい。」

咲良が後ろで歩いている亮太の方を振り向く。その疑いの目に耐えかねた亮太は視線をずらした。

「よぉ咲良。こいつが例の転校生か?名前は?」

失礼しましたー。と声がして、渡り廊下の先にある職員室から一人の男子生徒が出てきた。

身長は咲良の頭一個分ぐらいでかく、髪は九一分けの金髪だった。

「相模、亮太。」

亮太が、少し緊張した様に名乗るとその男子生徒はゲラゲラと音を立てて笑い出した。

「こいつが、高一!?お前、年齢誤魔化してんじゃねーの?」

亮太はギクリとし、目を見開いて固まった。

咲良の目が釣り上がる。

「ちょっと空我(くうが)!幾ら何でもそれは初対面で酷すぎるよ!」

空我と呼ばれた男子は、目尻にたまった涙を拭い、

「だってよー、そんな髪の色高一で見たことねーよ!その真っ白な髪の毛の色!言っちゃ悪いけど、バケモンみてーだよな!」

亮太の頭を指さした。

亮太は下唇を前歯で噛んだ。顔を見られない様にそっぽを向き、空我の手を払った。

「…やめてよ。俺は化物なんかじゃ、ないから。」

小さく呟いた亮太を、面白くなさそうに見るとチッと舌打ちをした。

「相模君を化物扱いするなら、空我みたいな金髪の方が化物だよ!」

「なんだと!?これは染めたんだ!こいつみてーに地毛じゃねーよ!」

「校則違反!どうせまたそれで職員室呼び出しされてたんでしょ!」

咲良は、空我のことを指さした。空我がウッと言葉に詰まる。

空我が言い返そうと口を開いた時だった。

「おい」

後ろの方から声がした。

空我が驚いて後ろを見ると、ガラの悪そうな男がいた。

(そう)先輩!」

「おい空我、俺ら今から遊ぶんだけどこねぇ?…くるよな?」

明らかに脅迫まがいな言い方に、咲良と亮太は息を飲んで二、三歩後ずさった。

「はい!喜んで!」

だが空我は、はしゃぐ犬のように宗と呼ばれた先輩の方へ駆け寄った。

「ちょ、待ってよ空我!わっ」

咲良が空我の手を掴む。

その直後、空我は咲良を突き飛ばした。

「…お前みてぇな奴といたって面白くなんざなんともねぇんだよ。」

「…!」

咲良は顔を引きつらせた。

空我はニヤリと顔を歪めて笑うと、今度こそ先輩の後についていってしまった。

「あ、あの、大丈夫…?」

亮太は、突き飛ばされてしりもちをついてしまった咲良をおそるおそる声をかけた。

だか咲良は一向に下を向いたまま体が震えている。

もしや泣いてるんじゃないかと思って、亮太はどうすればいいのか分からなくなってしまった。

「…あのやろぉ…」

そんな時だった。

あまりにも唐突で、最初は誰の声か分からなかった。

「ぜっっったい後で言ったことを後悔させてやるからなっ!!!」

絶叫と共に咲良は猛烈な速さで立ち上がった。

亮太の(あご)に咲良の頭が突き刺さる。

亮太は顎を抑えてうずくまった。

「あ、ご、ごめん!大丈夫!?」

咲良は慌てたようにうずくまった亮太のほうを見た。

亮太は涙目になりながらうなずいて、ゆっくりと立った。

「俺、は大丈夫。白江さんは、頭大丈夫?」

「…その言い方はやめてほしいなぁ。でも、別に私は平気だよ。こう見えても私石頭だから!」

亮太の失礼とも取れる心配の仕方に、咲良は若干(じゃっかん)苦笑しながら答えた。

咲良は困った様に笑って、それからはぁ…とため息をついた。

「空我はね、昔からケンカっぱやくてさ。

家も近いし、仲良かったんだけど、最近は話してもすぐ口論になっちゃうし、それ以前に全然話してないんだよね。…あの先輩達と絡むようになる前まで髪だって染めてなかったのに…。」

「そう、なんだ。」

亮太は心の中に、少しモヤモヤしたものがあることに気付いた。

だがそのモヤモヤは、何なのか分からずにすぐに消えてしまった。

「ごめんね。こんな話を聞かせちゃって。」

亮太は首を振る。

「別に、俺は大丈夫だよ。」

咲良はにっこりと微笑んだ。

「ありがと。じゃあもう下校時刻になるし、今日はこの辺でお開きだね。」

「あ、うん。案内してくれてありがとう。」

「こちらこそ。亮太君も気をつけて帰ってね。最近は影切りバサミが出るって噂だから。」

「かげきりばさみ?」

聞き慣れない単語に亮太は首をかしげた。

「そう。その名の通り、私達の影を切り取れるハサミを持った男がいるんだって。…まぁ、単なる噂だから本当にあるとは思えないけどね。じゃあ、また明日!」

咲良は亮太に手を振って、そのまま前を向いて歩き出した。

「あ、うん。また明日…。」

亮太は手を挙げ、咲良が見えなくなるまで見送ってからおかしなことに気付いた。

「………りょうたくん?」





「それにしても、急にどうしたんすか?いつもなら下っ端だからって遊びに誘ってくれないのに。」

空我が嬉しそうに言った。

宗は、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながらまぁもう少し待ってろと言った。

そしてまたしばらく歩き、学校から離れた河川敷の下に辿り着いた。

「…ここ、なんすか?」

さすがに空我もおかしいと思ったのか、さっきよりも少し落ち着いた顔で尋ねた。

空我のすぐ先。そこには、宗以外のガラの悪そうな男が数人いた。

「さぁな。お前、俺らの仲間になりテェんだろ?だったらよぉ…。」

「これ、キメようぜ。」

宗がポケットから出したもの。

それは、麻薬だった。

「分かってんだろ?断ったらどうなるか。」

空我は、いつの間にか男らが自分の周りを囲んでいることに気付いた。

「お、れは…。」

空我が答える。

男のうちの一人が、右手に力を込め盛大に口を歪めた。

「やれ。」

To be continued…



















何ヶ月経ったでしょうか…。

最後(といってもまだ二回しか投稿していないけど)から、結構待たせてすみませんでした。

楽しんで読んでくれると幸いです。

では!また次の機会に!


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