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○薬草園での再会

2018/06/11 修正しました。

最近色々と忙しく、それになかなか慣れずにバテてしまい、修正や更新などが滞ってしまってすみません。

 夜会から一夜明け、久々に実家の自室で目覚めた時、一瞬「ココは何処?」と思ってしまうほど王宮でのガーデニング生活に馴染んでしまっているようです。



「昨夜はホント大変だったのよ」

と、朝食時にお母様に言われました。

 滅多に踊らないことで有名なエドワード様が私と踊ったことで色々と聞かれたらしいのです。

「王立大学を卒業したことへの褒賞の一つかしら?」

と、答えたそうです。

 ちなみに現在の私の状況については、

「王立大学で植物に関して学んだことを知った園芸好きのご婦人から、庭園の一角の改装の依頼を受けて、現在はそのご婦人のお邸に滞在している」

ことになっています。

 モノは言い様ですね。

 そのご婦人は王妃様で、滞在先は王宮(の中のコテージ)ですが。


「それにしても、しばらく会わない間に、ずいぶんとダンスが上手くなったようだけど?」

 お母様が笑顔で尋ねてきました。

「王妃様の特訓の成果ですわ・・・・・・」

 この笑顔、苦手なんです。つい、視線を逸らせながら答えてしまいました。

「あら、そうなの。では、ずいぶんとお上手な方を練習のお相手として選んでくださったのかしら?」

 先ほどよりさらに笑顔のお母様。


「あら、もうこんな時間ですわ。今日は、珍しい苗が届くことになっているので、急いで王宮に戻らなければ・・・・・・」


 苗が届くのは本当のことですが、別に私がいなくても優秀な庭師の方達が植えてくださいます。

 ですが、お母様の追及から一刻も早く抜け出したかったのと、最近、指示を出すだけで庭の事に一切関わっていなかったので、気になって仕方が無いこともあって、昼食前にコテージに戻ることにしました。



「マリー様。昨夜の夜会はどうでしたか?」

 ココにも昨夜のことが気になる人達がいました。事情を知っているだけに、かなり興味津津のようです。

 その事は夕食時に話すことを約束して、ダンスの練習等で庭仕事に関われなかった間の事を尋ねます。


 男性の庭師さん達が、パーゴラとテラスを完成してくださったそうです。

 パーゴラに絡ませるつるバラの苗もフロレンティア(実家のヴェニディウム伯爵領地)から届いて、こちらも植え終わっていました。

 菜園とハーブガーデンをレンガで縁取りして、中の土作りまで終わり、野菜の苗はすでに植えてありました。


「ハーブは薬草園に話はしてあるので、そちらで苗を分けてもらって下さいとの事です。見学できるようにもお願いしているそうですよ」

「嬉しい!薬草園、興味あったの。さすがデニスさん。早速、午後から行きたいのだけど、大丈夫かしら?」

「では、あちらの予定を確認に行ってきます」

 返事は、「お待ちしております」でした。準備出来次第、お迎えが来るそうです。


「苗を頂くことを考えて、わたし一人で行くのは無理よね。誰か、一緒に行く?」

 昼食時、聞いてみると、

「「「「行きます!!」」」」

 リズさん、エミリーさん、ローラさんだけでなく、侍女のメアリまでも返事します。

「疲労回復のハーブティーのレシピを教えて頂きたくて・・・」


 ダンスの練習の後、メアリが入れてくれていたハーブティーは薬草園で作られたものだそうで、その効果の高さは使用した私が断言します!翌日に疲れがほとんど残らないので、連日、過酷ハードな練習が可能になりました。


「え~と、その様子からじゃそれだけではないわよね・・・・、もしかして、素敵な殿方でもいるのかしら?」

 四人がやけに浮かれているのです。


「解ってしまいました?」


 以前、会話にでた素敵な男性(王宮侍女さん評)がいるとか。


「めったに会える方ではないのです」

 薬草園は魔術庁という王宮の機関が管理しているそうです。魔術庁の仕事のひとつに、薬の開発があることから、薬草園の管理は魔術庁となっているとか。

 その魔術庁の長官、筆頭魔術師がその男性らしいです。


「27歳とお若いんですが、魔術のランクが上位上級を超えているので、魔道師という階級なんです」


 その方のお姿を見ることが出来た日は、良い事があると言われるほど、お目にかかることはないそうです。

 良い事があると言うのもただの噂ではないようで、探していた物が見つかったとか、欲しかった物が安くで手に入れられたとか、ちょっとした幸運を実際に体験した人もいるそうです。


「そんな方が、案内してくれるのかしら?」

 筆頭魔術師が直々に案内してくれるとは、考えられないのですが・・・。

「案内は無理でも、挨拶ぐらいはされるんじゃないですか?」

 それもそうですね。

 たぶん、これからも時々お世話になることもあるでしょうから、挨拶ぐらいは交わすでしょう。めったにお会いすることが出来ない方なら、彼女達にとっては千載一遇のチャンスです。

 せっかくなので、全員で行くことにしました。


 迎えに来た魔術庁の職員の方(事務方なので魔力は下位と少ないそうですが、問題ないそうです)の案内で薬草園に行きます。

「今日はどなたが案内して下さるんですか?」

 一応、聞いてみました。

「長官が案内いたします」

 早速、幸運に恵まれたようです。 


 まず、案内されたのは薬草園入口にある建物の応接室でした。

「こちらでしばらくお待ちください」

 お茶を持ってきた女性職員にこの建物のことを聞きます。

 ここは、薬草の生育を記録・管理する事務所と、薬草園の手入れをする人達の休憩所だということでした。また、厨房もあり、

「王宮で使用される、ハーブオイルやハーブビネガー、ハーブ酒、ハーブティーなどを作っているのです」

 彼女の仕事だそうです。

「質のいいハーブを作るために、剪定は必要なので、剪定で出た物を有効利用しているんです」

 元々は事務仕事だったそうですが、料理が趣味で、余ったハーブで色々作っていたら、食品部門が新しく出来、そこの責任者となったそうです。 

 メアリは早速ハーブティーのレシピについて質問していました。


 料理の話で盛り上がっていると、ドアがノックされました。

 ドアが開き、

「長官がいらっしゃいました」

 男性職員が告げると、銀髪長身の男性が入ってきました。


「シオン先生?」

 その男性に見覚えがありました。大学で薬草学の講師をしていたシオン先生でした。

「もしかして、シオン先生が長官なんですか?」

「久しぶりだな、ローズマリー。結局、王宮(ここ)で働くことになったか。私の元で働けとあれほど(・・・・)誘ったのにな」

「あの時は、卒業したら実家の手伝いをすることを条件に大学に通わさせてもらってたので、働くことは考えていなかったのです。それに、シオン先生が魔術師で王宮で働いているなんて知らなかったですから」

「まあ、言ってなかったしな。もし、言っていたらどうした」

「親に交渉したでしょうね」

 王宮で働くのでしたら、お母様も許してくださったでしょう。現にこうして働いていますし。

「そうか、言っておけばよかったな。まあ、これからは顔を会わせることも多くなるだろう。それで、そちらの女性達は?」

「私の手伝いをしてくれている人です」

 彼女達の紹介をすると、

「魔術庁長官のシオンだ。ローズマリーのことをよろしく頼む」

 そのセリフ、保護者が言うセリフでは?


「では、案内しよう」

 さっと身を翻し、ドアから出て行きます。

 四人がシオン先生の後ろ姿を何故か拝んでいました。


 薬草園は広かったです。

 貴重な薬草は、専用の温室や建物で栽培されていて、ハーブ類は効用ごとに区画された畑で栽培されていました。

 シオン先生の銀色の髪が、日の光でキラキラと輝いています。

 それを、私以外の四人が「神々しい・・・」と呟きながらうっとりと見つめていました。


 苗は先生お勧めと、料理上手の女性職員さんお勧めが用意されていました。

 魔術庁の男性職員が後で運んでくれるそうです。


「自分達で運ぼうと考えていたのか?」

 シオン先生が半ば呆れた様に言いました。

「仕事ですから」

 苗の数を確認して、五人で手分けして運ぶか、数が多いようならデニスさんから台車を借りてきて自分達で運ぶ気満々でした。


「大丈夫だとは思うが、一応注意事項を書いておいた。あと、料理のレシピを職員が是非にと渡してきた」

 メアリが気にしていたハーブティーのレシピももちろんありました。

「ありがたく頂きます」

「時々、暇なときに様子を見に行く」

シオン先生のこの言葉に、四人が喜んだのは言うまでもありません。 

 


「マリー様。シオン様とお知り合いだったのですか?」

 コテージに帰り着くと、エミリーさんが尋ねてきました。他の三人も興味があるようです。

「大学で薬草学を教えて頂いたの。若いけど詳しいなとは思っていたんだけど、まさか魔術が使えるとは知らなかったわ」

「シオン様に誘われていたというのは?」

「うちの領地でもハーブ栽培が盛んで、領地で作っているハーブを使った化粧品について話たら興味を持たれて、先生の元で研究・開発しないかと誘われたの。今、考えると惜しいことしたわ。ん?でも、私、魔術師ではないけど入れるのかな?魔術庁に?」

「シオン様推薦なら入れたかもしれませんよ」

「時々様子を見に来ると言ってたし、その時にでも聞いてみようかしら」


 後日、本当に様子を見に来たシオン先生に尋ねました。魔術師でなくても魔術庁に入れるのかと。

「事務職に関しては魔術が使えるかどうかは特に必要ない。だが、研究・開発は魔力が必要となる」

「シオン先生が私を誘ったのは、研究・開発でしたよね?私、魔力は無いのですが」

 魔力の有無で育て方が違ってくるので、子供の頃測定することになっています。

 その時は“魔力無し”と判定されたはずですが・・・。

「おや、気づいてなかったのか。ローズマリー、君は魔力持ちだ」

 先生が当然のように言いました。

 

「一般的な測定の仕方、建物の中では君の魔力は測定できない。自然の中、特に植物が多い場所で魔力が増える。珍しい体質のようだ。今からでも魔術庁に移るか?」


 初耳です。

 先生が、どうやってその事に気が付いたか気になります。


「魔術庁のお仕事にも大変興味はありますが、現在の仕事は私がやりたかった事なので。それに、私の雇用主は王妃様なので、そう簡単には移動できないのでは?」

 小規模ではあるけれど、庭園を自分の好きな様に改装できるなんて、夢のような仕事はこれが最初で最後でしょうから。


「そうか、それは残念だ」

 残念と言う割には、何故か嬉しそうなシオン先生でした。



 

 

 

魔術師は、魔力の量によって、上位・中位・下位に、技術(使用できる魔法の種類)によってさらに上級・中級・下級にランク付けされます。

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