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○夜会当日

4月20日に修正済みでしたが、差し替えられていませんでした。すみません。

バックアップに残っていて良かった・・・。

 この2週間。

 どうにか夜会を回避できないかと努力しましたが、無駄でした。


「急なことなので心の準備が・・・」

「2週間もあれば十分でしょう?」

 

「ダンスに自信が・・・」

「練習時間を増やしましょう」


「ドレスが間に合わないのでは?」

「それなら、仕上がっているわよ」 


 ドレスは、王妃様が用意して下さっていました。

 いつの間に、と思いましたが、そういえば作業着を作るときに採寸されたのでした。

 あの時の細かい採寸は、このためだったのかと納得しました。

 光沢のある高級な生地を活かしたシンプルなデザイン。色はグリーンのグラデーション。所々に薔薇の飾りがついています。

 

 私の計画では、エスコートしてくれる父と共に国王夫妻に挨拶に行った後、ロジャー兄様と一曲踊り、その後は二人揃って壁際で適当に時間をつぶし、適当なところで帰る予定・・・でした。

 めったに夜会に参加しないロジャー兄様も協力してくれることになっていました。


 ですが、現実は・・・。


 何故、私はエドワード様と踊っているのでしょう?


 お父様と共に陛下へご挨拶に伺うと、


「王立大学、卒業おめでとう」

「卒業式でのスピーチ、とても素晴らしかったわ」


と、王妃様とお二人で周囲に聞こえる大きさの声で褒めてくださいました。

『今後を期待する』と、お言葉を頂き、何とか挨拶は終わったと油断したところに、


「ローズマリー嬢。私と踊って頂けませんか?」


と、エドワード様からのダンスのお誘いが・・・。


 一瞬、頭の中が真っ白になりました。


 エドワード様がにこやかに手を差し伸べてきます。一応、笑顔でその手に応えましたが、自分でも笑顔が引きつっているのが分かります。

 

 エドワード様は、わたしの手を取りホールの真ん中へ。

 もちろん、私達以外に踊る人はいません。


 自らが発した余計な(・・・)一言で、ダンスの練習時間が増え、何とか王妃様とダンス講師の方から合格点は頂けましたが、それは周囲に侍女さん達しかいない練習での事。

 流石に、この大勢の前で踊るのは緊張してしまいます。


「ずいぶん練習したと聞いているが?」

「はい、それなりに。踊ってない時期がかなりあったので」

 大学在学中の4年間のを埋めるのは、かなり大変でした。


「サイラスが褒めてた。ずいぶん上手になったと」

「そうですか・・・・」

 時々、サイラス様は王妃様に呼び出され、私の練習に付き合わされていました。


 私はステップを間違えないように、エドワード様の足を踏まないように集中するので精一杯でした。

 そんな私をエドワード様は華麗にリードして下さいます。


 エドワード様にも私の緊張が伝わっていたようで、踊り終わるとお互い自然と笑顔になりました。

 

 ロジャー兄様が心配して、踊り終えた私の元まで迎えに来てくれたのですが、私の手はエドワード様から兄様の隣にいたサイラス様へと移っていました。


「せっかくだから、俺とも踊ろう。ロジャーには許可を取っている」

ロジャー兄様を見ると苦笑して頷きました。


 仕方なく、サイラス様と踊ることにしました。


「私の計画が・・・・・・」

 ロジャー兄様と二人壁際で、料理や飲み物を楽しむ予定が・・・・・・。

「王妃様に関わって、平穏に過ごせると思わないほうがいい」

 サイラス様が言うと、真実味を帯びるから、怖いです。

 

「さっきは緊張していたようだけど?」

 サイラス様とは練習で何度か踊ったおかげか、緊張もせず、会話をすることも出来ます。

「あの状況で緊張しないほうがおかしいです。何故、大勢の前で踊らないといけないのですか・・・。すごい視線を感じたのですが・・・」

 突き刺さるような視線を感じたのですが?


「めったに踊らないエドワードが踊ったからね」


「えっ?そんなにエドワード様って踊らないんですか?」

「ああ。俺の知っている限りでは、国賓ぐらいかな?」

「それじゃあ、あの、突き刺さるような視線は・・・・」

「嫉妬の視線だろうね」

 楽しそうに答えないで欲しかった・・・。


「まぁ、これも王妃様の計画のうち。王立大学を卒業したことに対する褒美(・・)という事にするらしい」

「なんとなく分かりました・・・」

 めったに踊ることの無い王太子殿下と踊る機会を与えられることは、エドワード様に憧れる女性にとっては何よりの御褒美ですね。

 貴族の子女が王立大学に進学する一つのきっかけとなるかもしれません。


 サイラス様と踊っている間も突き刺さるような視線を感じましたが、エドワード様で耐性が出来たのか、先ほどよりは気になりませんでした。

 

 無事、踊り終え、サイラス様にエスコートされたままロジャー兄様の元へ。


「お疲れ様」

 兄様が果実酒を渡してくれました。

 

 兄様と共にいたのは、サザランディー公爵家嫡男のギルバート様でした。ロジャー兄様とサイラス様は同級生。ギルバート様は兄様達より年上ですが、家同士仲がいいので顔見知りです。


「ダスティ学長はお元気か?」

 ギルバート様に尋ねられました。

 

 ギルバート様は王立大学で1年間の短期コースで外国語と経営を学ばれていたそうです。

 ちなみに、この短期コース、入学試験は特に無いので、王立大学に入学するほどではないけれど、学びたいという貴族のご子息に人気です。コース終了時には終了証書が授与されます。

 貴族学園を卒業しただけの方より出世は早いそうです。

 女性も受講できますが、貴族のご令嬢で受講された方はいないようです。


 サイラス様も短期コースで法律と経営を。ロジャー兄様は法律を中心に、4年間、学べる物は全て学んだそうです。

 

 私も1年生の頃、選択科目で経営の基礎を学びました。

 伯爵家(実家)に役立てばと思って選択したのですが、今後、王妃様のお店にも役立ちそうです。


 王立大学で大変盛り上がってしまいました。

 中でも、私の寮生活について興味があるようで、色々と質問されてしまいました。

 

「寮では友人に教わりながら、料理も作って皆で食べていたんですよ」

「へぇ・・・、意外・・・」

「サイラス様、それはどういった意味でしょうか?」 

 貴族の令嬢が自ら料理を作ることに対しての言葉というより、

「ちゃんと食べられる物が作れたんだ・・・」

だと、思いました。

「マリーは意外と手先は器用なんだよ。まぁ、たまに、大雑把なこともあるけど・・・」

 ロジャー兄様、それ、援護フォローになっていません。


「サイラス様。殿下がお呼びです」

「・・・・・・しまった。エドワードのところに行かないと・・・。それじゃあ、また」

 エドワード様の侍従の言葉に、慌てて去って行きました。


「サイラスと仲良くなったんだね」

 ロジャー兄様が嬉しそうに言いました。

「今日のためのダンスの練習で何度か相手して下さったので」

 サイラス様が私のダンスの練習に付き合うきっかけとなった経緯を話します。


「ああ、そうか。サイラスはエドワードの補佐をやっているから、王妃様のところに行く機会があるわけか」

 数日に一度はダンスの相手として王妃様に捕まってました。


 約4年ぶりの夜会は、前半は予想外の出来事で大変でしたが、後半はロジャー兄様とギルバート様のおかげで楽しく過ごすことが出来ました。

 


 後日、サイラス様から、エドワード様が夜会の間少々不機嫌で、そのご機嫌を直すのに大変だったと聞きました。


「私に言われても・・・・・・」

 エドワード様の機嫌を直す方法など、私は知りません。


 

 

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