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○王宮勤め ~文官?編~

2018/4/17 サブタイトル変更

2018/4/18 本文 加筆・修正

 デニスさんに庭園のことを相談して数日後、パーゴラ用の資材が準備できたということで、早速、明日から庭師さん達が設置作業に取り掛かってくださるそうです。


 その事は、王妃様にも伝わっていたようで、

「『明日は、私の所に来てね』だそうだ」

と、“散歩ついで”にいらっしゃったエドワード様から伝えられました。 


 当日、朝食後、王妃様付の侍女が迎えにきました。

「何を着ていけばいいのでしょうか」

 朝食前に水遣りなどをしてので、まだ作業着のままです。

「こちらで用意してありますので、そのままで大丈夫ですよ」


 後を付いて行くと使用人専用入口から入ります。

 王宮で住み込みで働いている方たちは、私の身分を知っていますが、外部の方には“花の専門家のマリー”ということで通すことにしたので、念のためにこちらの入口を使用することになりました。


 使用人専用エリアを通り、ある部屋に入るとさらにドアが。

 秘密の通路のドアでした。

 そして、その先は、なんと衣裳部屋。大きな鏡が隠し扉になっていました。

「あの、ここは・・・?」

「王妃様が若い頃にお忍びで出かけるために使用していた部屋です」

 衣装部屋の隣は、寝室と浴室でした。

「こちらは王宮内のマリー様のお部屋となります。ここでお着替えをして行くことになります」


 用意されていた服は、ドレスではなく女性の文官の制服である上品なワンピース。彼女達の制服は青や緑なのに対して、私のは淡いオレンジ色です。そして、襟と袖口が白のレースが使われているのも違っています。

 靴はヒールが低めの動きやすいものでした。


 王妃様のお部屋には、サイラス様がいらっしゃいました。


「これが王妃様が所有されている店の資料です」

 サイラス様から資料を渡されました。


 資料には、店の名前、所在地、店舗の広さ、扱っている商品一覧が書かれていました。


 お店の名前は『デイジー』で、意外なことに、高級品店が並ぶ通りではなく、庶民向けのお店の多い地区にありました。商品一覧から雑貨屋のようです。


「庶民の若い女性向けのお店ですか?」


 商品一覧には、アクセサリー類、リボンやハンカチ、日用品類が手ごろな値段で売られています。

 主要な商品は、パワーストーンと呼ばれる石を使ったアクセサリーのようです。


「この店で取り扱っている石は、王領地の鉱山の副産物として取れる物が主です」

「希少な物や品質の高い物は高額で取引されるのだけど、色が薄いために価値がかなり下がってしまう物もあるのよ。キレイなのにもったいないでしょ。そこで、これで庶民向けのアクセサリーを作って試しに売ってみようと考えてお店を作ったの。王家うちの領地で副産物として取れる石だから仕入れ値はほぼゼロだし。軽い気持ちで始めたんだけど、意外と上手くいっちゃって。取り扱う商品も増やして、今のようなお店になったの」


 王妃様は商売上手のようです。


「取り扱っている石自体が、お守りとして人気のある物がほとんどですからね。特に(・・)若い女性に」

 サイラス様の言葉に資料を見直します。


「サイラス様、お詳しいのですね。恋愛小説も商品に加えるといいかも知れませんね」

 恋愛のお守りとして人気の石を使用したアクセサリーの売り上げが多いので、提案してみました。


「あら。それはいいわね」

 王妃様も賛成してくださいました。


「このお店は、マリーに任せることにしましょう。一月以内に、さらに詳しい資料を用意するようにエドワードに伝えてちょうだい」

「分かりました。他には?」

「そうねぇ。私が関わっている事業の一覧かしら。王都内の賃貸の建物の一覧も・・・・・・」

 

 サイラス様は王妃様の言葉を手元の紙に書き付けています。

 王妃様の資産はエドワード様が管理しているとおっしゃっていましたが、結構な量だと思います。

 

「以上ですね。一覧の方は私が作成して、出来次第こちらにお持ちします。では、これで失礼します」

 サイラス様が部屋を後にしようとしたところ、

「もう少し時間はあるかしら?ちょっとお願いしたい事があるのだけれど」

と、王妃様に引き止められてしまいました。

「構いませんが、何でしょうか?」

「マリーも一緒にいらっしゃい」


 王妃様の後に付いて行くと、ピアノが置いてある広い部屋に着きました。

 

「マリー、2週間後に陛下主催の夜会があるから、ダンスの練習しましょうね?」

王妃様はとても嬉しそうです。

「私は、欠席で・・・・・・」

「王宮での夜会は仕事の一つよ。サイラス、練習相手お願いね」

「喜んで」

 サイラス様の笑顔が怖い。


 大学在学中、研究を理由に夜会などの社交の場に全く参加していませんでした。だって、苦手だから。

 卒業してから実家で特訓を受けましたが、練習に付き合ってくれたロジャー兄様に迷惑ばかりかけてしまいました。


 サイラス様のステップが高度すぎて、ついていけません。

 一曲踊っただけで、肉体だけでなく、精神的にも疲労が・・・・・・。


「明日からは、ちゃんとした衣装で毎日特訓ね。じゃあ、もう一曲踊りましょうか?」

 私のあまりの下手さに王妃様はため息まじに、だけど何故か嬉しそうにおっしゃいます。


「サイラス様は仕事に戻らなくていいんですか?」

 お願い。戻ると言って下さい。哀願の眼差しでサイラス様を見つめながら尋ねます。

「いえ、あと数曲は大丈夫ですよ」

 笑顔で答えられてしまいました。それも楽しそうに・・・。


「ううっ・・・・・・」

 私は今、半ベソ状態で踊っています。

 それをサイラス様は嬉しそうに見つめています。

「本当に戻らなくていいんですか?」

 再度、尋ねてみました。

「こんな楽しいこと逃すなんて、もったいない」

 とは、言いつつも、一曲目と違いステップは簡単になり、的確なアドバイスを下さいます。

 三曲踊り終わったときには、少しだけマシになった気がします。


 翌日からは、毎日、ドレスとヒールの高い靴で、ダンスの先生の特訓が始まったのでした。

 夜会までの間、庭園の仕事は指示を出すだけしか出来ませんでした。

  



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