◯王立大学へ
2020/06/26 加筆修正 サブタイトルを『公務~準備~』から変更
隣国、トリテレイア王国の王太子殿下ご夫妻が到着される日となりました。
あの雷の日以来、コテージの自室に帰ること無く、王宮内の部屋で過ごすことになってしまいました。
元々、ご夫妻が到着する前日まで、王宮での予定が組まれていたことと、雨が降り続いたためです。
本日は、今までの雨が嘘のように、綺麗な青空が広がっています。
この数日、午前は外務省の方による、トリテレイア王国についての講義です。
大学で学んだ基礎知識に加え、最近の隣国の状況等をギルバート様が教えて下さいました。
正午ごろ軽食を取り、しばらく休憩した後サイラス様とのダンスの特訓です。
私は大学での案内以外関わることは無いはずなのですが・・・。そう言って理由を聞いたところ、「ついでに」だそうです。
「こんな機会がない限り、練習なんてしないでしょう」とまで王妃様に言われてしまいました。おっしゃるとおりです。
練習中にサイラス様から、
「この間、エドワードが図書室からなかなか戻って来なかったけど、何があった?」
と、尋ねられた時は、動揺してサイラス様の足を踏んでしまいました。
「あの広い図書室を案内して頂いてたのです・・・」
と、言っておきました。雷に驚いて抱きついてしまったことは内緒です。
ダンスの後は部屋で侍女さん達に全身を磨かれます。
庭で作業をしているのに全く日焼けをしていないことに驚かれてしまいました。
そして、王宮で過ごしているこの数日間、何故か朝晩の食事を王家の方々と共にしています。
初めは部屋に運んでもらうこ予定でしたが、何故か王家専用の食堂に案内されてしまいました・・・。
緊張して味がよく分かりませんでした。
あと、図書室でのことを思い出して、エドワード様をまともに見ることが出来ませんでした。
本日は王宮で王太子ご夫妻の歓迎式典と晩餐会が開かれます。
王家の方々はそのための準備で忙しく、朝食を共にすることはありませんでした。
ご夫妻が王立大学を訪問されるのは、明日の午後の予定です。
私は、本日の行事には参加しないので、今日のうちに大学がある学園都市に行き、学長との打ち合わせをすることになっています。
「ローズマリー、学園に行く準備は出来ただろうか?」
やって来たのはシオン先生でした。
「シオン先生も行かれるのですか?」
「ああ。大学での仕事があるからな」
シオン先生は、侍女が用意してくれた私の荷物を持つと王宮の奥に進んで行きます。
「どこに行くんですか?」
入口とは反対方向です。
向かった先に、サイラス様が立っていました。
「サイラス様も行かれるのですか?」
「ああ、仕事で大学に用があるので、ついでに連れて行ってもらおうと思って」
ここでサイラス様と合流予定だったのですね。と、一人納得していると、シオン先生が魔法でドアを開け、入っていきました。慌てて付いていきます。
「ここは・・・?」
「転移装置の部屋だ。ここから大学に行く」
部屋の中央には、大きな円形の印があります。その横には背の高い小さなテーブルらしき物が置かれています。
「まず、この円の中に立つように」
言われたとおり、サイラス様と私は印の中に入ります。
シオン先生がテーブルらしき物を触ると、円が光り出します。
「行くぞ!」
私達は、薄緑色の光に包まれました。
光りが消えると、先ほどと同じような場所に居ましたが、壁の色が違います。
王宮の部屋の壁の色は紫でしたが、こちらは緑です。
「気分は悪くないか?」
「・・・大丈夫です・・・」
光りに包まれた時、僅かに浮き上がった感じがしたのですが、それも既に消えています。
部屋から出て、小窓から外を見ると、学園都市が見渡せます。どうやら、ここは大学の塔の一番上らしいです。
階段を降りていくと、小部屋に着きました。ドアを開けるとそこは学長室でした。転移装置には、学長室からしか行けないようになっているようです。
前もって連絡が行っていたのか、学長はわたし達が現れたことに驚いた様子も無く、
「お茶を用意させますから、座って下さい」
と、にこやかに言いました。
たぶん、この場で一番驚いているのは私です。
転移装置の事や、連絡の早さなどについて、理解できていません。
私の様子を見て、シオン先生が説明して下さいました。
学園都市を始め、王都から離れている場所にある王立の主要機関がある所には、転移装置が必ず置かれていて、一度に運べるのは成人男性五人分。文書などは卓上の転移箱に送られるそうです。緊急または重要な場合にのみ使用されるということでした。
瞬時に移動できるのは便利ですが、王都からここまでは馬車で二時間程度。道も整備されているので移動もそれほど辛くはないのですが。
「歓迎式典の関係で思っていた以上に馬車での移動が難しそうだったからだ」
王都の道はもちろん、街道沿いも人が多く、移動に時間がかかるとのことでした。
「それに、移動時間の分、仕事の時間が増える」
お茶の後、私は学長と明日の打ち合わせ、シオン先生とサイラス様はそれぞれのお仕事をしました。
明日、再び移動するのは大変だとのことで、学園都市に宿泊することになっています。
宿屋ではなく、大学そばの学長のお宅にお世話になることになっていました。
明日の仕度も、学長の奥様とお嬢さんがお手伝いして下さいます。奥さまは昔、貴族のお屋敷でで侍女をされていたそうです。
お化粧と髪をどうしよかと思っていましたが、安心しました。
***side サイラス***
「サイラス、これを見てどう思う?」
エドワードから渡されたのは、先ほどローズマリーの兄、ロジャーが持ってきた資料だ。
学園都市にある、王立大学を始めとする王立の学校への進学数を各領地ごとにまとめた物だ。
「あいつも凄いな・・・」
ヴェニディウム伯爵家は一家揃って優秀らしい。
資料を見ながら、ある領地が気になった。
「他に比べて進学数がかなり少ないな・・・」
領地にも色々あるから、一概にも言えないが、同程度の他の領地に比べて少ない。
「ここよりも収入が低く、領民も少ない、いくつかの領地の方が進学数が多いのは明らかに変だと思わないか?」
ひとつの領地だけが多いならば、その領地を治めている貴族がかなりの教育熱心だということで納得できるのだが。
「じっくり調べてみる必要があるな・・・・」
この国は、教育に力を入れている。国に収める税金も、教育を受ける必要がある子供の数などで優遇される。
「領民の数を偽っているか、教育費として報告した金を別のところに使っているか・・・。進学した子供達への領地からの奨学金も気になるな・・・。サイラスは、王立大学に行って調べてきてくれ。領地は、その手の者に捜査させる」
「了解。シオン殿に一緒に連れて行ってもらうことにする」
「そうだな・・・。ついでに、例の件も宜しく」
シオン殿と聞いて、エドワードがさらに真剣な顔をする。
「ああ・・・」
俺もシオン殿からの報告を思い出し、頷いた。
読んで下さり、ありがとうございます。




