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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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◯バラ園での魔力測定

 シオン先生が私の魔力を測定したい場所とは、バラ園でした。

 バラ園に到着すると、測定杖を渡されました。

 今までの中で一番の値。青です。少し緑がかってはいますが。青なのです。

 先生もこの値には満足しているようです。

「しばらくバラ園で好きに過ごすといい。私はその間ローズマリーの魔力を観察したいと思う」

 先生のブルーグレーの瞳が少し碧味を増したようです。


 ちょうどデニスさん達が作業をしているところでした。

 せっかくなので、作業のお手伝いをしようと思います。

 デニスさんが革の手袋を貸して下さいました。


 現在の作業は、花びらが開ききった花の剪定です。

 この作業をすることで、新しい枝が延び、そこにまた蕾が付くのです。


 デニスさんの指導のもと、剪定する花に手をかけました。


「え!?」

「は!?」

「なんだ!?」


 バラ園のあちこちから、作業している人達の声が聞こえてきました。なぜか、皆さん驚いているようです。

 不思議に思っていると、先生が近づいてきました。


「特徴的な香りの花はどれかな?」

 デニスさんも先生の言いたいことを理解しているようで、バラ園の中心にある真っ赤なバラへ案内していました。


「ローズマリー。この花に触れてもらえないだろうか?」

 先生が指し示したのは、蕾から開き始めたばかりの花でした。

「はい。これですね」

 言われるままに、花に触れてみます。


 不思議なことに花が少し開いてきました。

 それとほぼ同時にバラ園のあちこちから、

「「「おおー!!!」」」

と、歓声が聞こえてきます。


「花を幾つか分けてもらえませんか?」

「それぞれ違う香りの花がいいですかね?」

「そうですね。お願いします」


 デニスさんと先生の間で、話が進んでいますが、私には何のことだか分かりません。


「では、私の執務室に戻ろうか」

 デニスさんにお礼を言って、バラ園をあとにしました。


 先生の執務室に戻ると、セイラさんがすぐにお茶とお菓子を持ってきて下さいました。

「わぁ!素敵なバラですね」

「すまないが、花瓶に生けて持ってきてもらえないだろうか?」

「了解しました」

 セイラさんは、先生から花を受け取ると、楽しそうに部屋から出ていきました。


 お茶とお菓子をいただきながらくつろいでいると、花瓶を抱えてセイラさんが戻ってきました。

 先生の指示で、窓際のテーブルに花瓶が置かれました。

 先生は、部屋から出ていこうとするセイラさんを引き留め、私を花瓶の方へと手招きします。


「では、ローズマリー。花に触れてもらえないだろうか?」

 言われたままに花に触れます。甘い香りが漂ってきます。

「あら?花の香りが先程よりも強く感じます」

 セイラさんの立っている場所は、花からはいちばん離れたドア付近です。

「セイラ。悪いが、部屋の外に出て確認してもらえないだろうか?」

「はい」


 しばらくして戻ってきたセイラさんが興奮しています。

「長官!!隣の部屋のドアを通り越して、その先まで香りがしました!!」

「そうか。では、ローズマリー。今度は違う花に触れてみてくれ」

 

 さきほどとは別の花に触れます。今度の花はフルーツのような爽やかな香りがします。


「!!今度は、さっきとは違う、美味しそうな香りがします!」

「・・・美味しそう・・・。フルーツ系の香りだからそうかもしれないが・・・」

 セイラさんの香りの表現に、先生が苦笑しています。


「君が花に触れると、その花の香りが増幅されるようなんだよ」

 先生の説明で、バラ園で庭師さん達が驚いていた理由が分かりました。


「それから、ローズマリーの魔力の傾向について、解ったことなんだが・・・」


 先生は本日、私の魔力の観察をしていたそうです。

 バラ園への行く間、何ヵ所か寄り道したのは私の魔力を視て確認するためだったそうです。


「魔力がローズマリーを包み込んでいるように視えることがあるのだが、それもよく視てみると魔力の光りの帯がローズマリーを取り巻いているんだよ。その帯の幅の違いが魔力の量の違いとなっているようなのだ」

 芝生広場の真ん中辺りでは、大きめのリボンの幅ぐらいとか・・・。


「あと、光りの球がローズマリーの周りに幾つも漂っている・・・いや、廻っていると表現した方がいいのかな?それは、花が関係しているようだ。あと、ハーブや薬草・・・。光りの球の数が魔力の量に関係がありそうだ」


 先生は、昨日、薬学研究所の職員の方達の魔力の視え方を改めて確認したそうです。

 私の様な視え方をする人は一人もいなかったそうです。


「・・・職員全ての魔力の確認をして・・・、それから・・・」

 先生が呟きながら、なにかを真剣に考えています。


「私はしばらく忙しくなりそうだ。ローズマリーもある程度、魔法が使えるようになったようだし、明日からはここに来る必要はない。何か用があるときはセイラに伝えておいてくれ・・・」

 そう言いながら、椅子に座るとすごい勢いで紙にペンを走らせています。


「では、失礼します」

 返事はありませんでした。

 仕事に夢中になっている先生の邪魔にならないよう、そっと部屋をあとにしました。 

 


 


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