表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/53

◯魔法の特訓

2020/06/19加筆・修正

「つまらん」

 シオン先生がつぶやきました。

 何がつまらないかというと、

「すっかり、平気になったのか」

 私が魔力の使い方のコツを覚えて、大きな魔法を使っても普通に歩けるようになったからです。


 昨日までは、セイラさんのアドバイスのおかげで初日のようなひどい魔力疲れをおこすことは無くなったものの、うまく歩けなかったり、コケたり。その度にシオン先生に抱えられて執務室まで連れて行かれるのでした。

「ローズマリーが嫌がるのが面白かったのに・・・」

 私は恥ずかしかったです。


 ここ数日で色々な魔法を覚えました。

 どれもガーデニングに使えそうな魔法です。

 土を耕したり、風をおこしたり、雨の魔法も調整が出来るようになりました。


 魔法の特訓の後は、先生の執務室で休憩をしながら薬草学の講義を受けていました。

 大学時代の薬草学は、それぞれの薬草の効能と作られる薬についてだったのですが、現在のシオン先生の講義は、薬草の成分とその効能についてと、より専門的になりました。

 

 魔術庁には、薬学研究所という機関があって、薬の研究・開発が行われているそうです。

 この研究所が出来たきっかけは、先生の師匠が

『作り手による薬の効果のバラつきを無くすためにはどうすれば良いのだろうか?」

と、考えたからだとか。

作り手の技術の向上以外にも何か方法があるのでは?と、色々と研究した結果、薬に含まれる有効な成分の量が関係していると解ったそうです。

 薬草から有効な成分を精製する技術?の差が薬の効果の差となっていたようなのです。

 有効な成分を意識して精製することで、技術も向上したそうです。

 薬草の良し悪しによっても左右されていたのも、解決したとのこと。

 一定の品質の薬を作れるようになったそうですが、まだまだこの技術、出来てから年数がたっていないのと少々複雑なため、現在は王宮でしか利用されていないそうです。

 今後、多くの人がこの技術を取得できるよう、日々研究中なんだとか。

  

 先生の師匠によって考案・研究された成分分析の魔法が高度な魔法らしく、使える人も限られているそうです。

 そのため、まだ解っている成分も多くないとか。

 ただ、毒に関してはほぼ終了しているとか。

「鑑定魔法を使用した時に、どんな種類の毒か解るようになったので、適切な解毒剤が使用できるようになった」

そうです。

 それまでは、『麻痺毒』としか解らなかったのが、『○○に由来する麻痺毒』と結果が出るようになったそうです。


「いい機会だ。鑑定魔法も教えよう」


 なぜか、薬学研究所へとお邪魔しています。

 研究室ではなく、集会室兼休憩室ですが。

 室内には、薬草やハーブの鉢植えが置かれていて、気持ちの良い空間となっいました。


「まずは、これからだ」


 乾燥して細かくされた薬草が入った皿が出されました。


「直接触れて鑑定する方が精度はいいが、有害な物質が含まれている可能性を考えると、このように手をかざす方法が良いだろう。この中には毒など含まれていないから、安心するように」


 先生に言われたとおり、手をかざします。

 意識を集中させると、手のひらが暖かく感じると同時に頭の中に薬草の名前が浮かんできました。

 その薬草名を読み上げると、

「正解。正しく鑑定出来ている」

先生からお褒めの言葉をいただきました。


 薬草の種類や数を変えて試したところ、なんとか8割程度の正解でした。

 含まれる薬草の種類が多いと、少し間違えてしまいます。


「では、今度は少し難易度をあげてみよう」


 今度はカップに入った液体です。

「これは薬草を煎じたものだ。何の薬草が使われているか。分かるかな?」


 鑑定してみましたが、『身体を暖める効果がある。風邪の初期症状に有効。少し苦味がある』とだけは分かりました。


「・・・意外と鑑定の才能があるかも知れないな・・・。では、この資料を見てからもう一度鑑定してみよう」

 女性の研究員の方が、薬草茶と共に持ってきた資料を渡されました。

 現在、分析が終了した成分の資料だそうです。

 色々な記号が並んでいます。その横にはどの植物から抽出された成分で、どんな特徴があるかなどが書かれていました。


 自信はないですが、再び鑑定してみます。

 今度は、頭の中に資料の記号が浮かんできました。

 資料を確認しながら記号を基に薬草名を言っていきます。

 似たような記号もいくつかあって、迷ってしまいました。


「初めてにしては上出来だろう」

 今ので、かなり疲れました。

「鑑定も細かくなると結構魔力を使うからな」

 それを先に言ってほしかったです。



「研究の仕事はローズマリーには難しいかもな」

 お茶を飲みながら先生が言いました。

「興味はあるのですけれど・・・」


 研究室を見学させていただいて、分析魔法について説明してもらったのですが、難しかったです。

 いくつもの段階に分かれていて、繊細な魔力の調整が必要だったりして、今の私の能力では無理があります。訓練すればなんとかなるかもしれませんが・・・。どれくらいの時間が必要となるのでしょう・・・。


「植物絡みだから、少し期待はしていたのだが・・・・・・」

「どうしてそこまで期待されているのかが不思議なのですが・・・」

 以前から疑問に思っていたことを尋ねます。


「大学で、君が世話をしていた薬草の出来が良くてね。なにか心当たりは?」

「子供の頃から植物を育てるのは好きでしたが・・・・・・。そういえば、何となくですが、肥料をあげた方がいいとか、剪定をした方がいい枝とかが分かっていたような・・・・・・。だけど、それは、慣れているからですよね?」

「確かに、植物を育てるのが上手いのは大勢いる。今までも、君と同じような良い出来の薬草を育てた者もいる。ただ・・・、彼らと君の薬草の違いは、君が育てた薬草から作った薬が()()高品質だったんだよ」

「ただの偶然では?」

「偶然で済ませられる確率ではないだろう。やはり、ローズマリーの魔力の影響だろうか・・・?」



「大学で、君が植物の世話をしている時に視た魔力が他とは違っていてね」

 先生がポツリと言いました。

 

 先生は他人の魔力を、その人の身体から溢れだす光りとして視ることができるそうです。

 魔力の消費は大したことはないものの、四六時中視ていると疲れるため、普段は視ないようにしているそうです。

 そんな先生が、魔力の無い私から魔力を感じたので視たところ、私の周りを魔力の光りの球が漂っていたとか。


「別の日に視た時は、魔力の光りに包まれていた・・・。色は・・・そうだな・・・例えるならば木漏れ日の光りだな・・・」

「他の人達はどんな感じなのですか?」

「感情や体調などで色が変化するんだよ。人によって基本の色というのがあるのだが、多くの者が原色だな。それが体調が悪いとくすんだ色になるし、攻撃的な感情を持っていると激しく点滅したり、目まぐるしく色の濃度が変化するので、目が疲れる・・・」  

 特殊な能力があるのも、大変なんですね・・・。


 

「・・・そういえば、まだ、魔力を測定してない、興味深い結果がでそうな場所があったな・・・。ローズマリーの魔力について、色々と検証したい項目も増えたし・・・」

 先生が何やら呟いています。

 充分測定したと思いますが・・・


「よし!明日はそこで測定だ!」

 いつになったら庭園の仕事に戻れるのでしょう?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ