表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/14

探し人は家族?従者?

遅くなりました。m(_ _)m

「よう、久しぶりだなファム嬢ちゃん。勝ち逃げしたかと思ったぜ」

「お、お久ぶりです、ドスタジさん。

人混みの移動はちょっと…。ですので一つご提案するのです。お店を黄色いたまご亭の近くに移転するのはいかがです?」

「いや、それ普通に無理だからな。

まぁいい、ファム嬢ちゃん覚悟は出来ているんだろうな」

「も、勿論です、負けませんよ」


ゴクリと誰かの喉がなり、わたしの横にいるトム君とセイタさん、そして周りを囲む人たちが固唾を飲み見守ります。

カーーンッ!さぁ、真剣勝負ですよ。





「スッゲー!ファム姉ちゃん!」

「ふふふ、豊作です!」

「…頼んどいて何だが、容赦ないな」

ホクホク顏のトム君とわたし、若干呆れ顔のセイタさんの両手には大量のお野菜。それを次々にセイタさんの用意した台車に乗せていきます。戦利品がギッシリ詰め込まれる背後にはドスタジさんの力尽きた姿と慰める観客たち。

残酷ですが、世界では常に勝者と敗者に分けられるのですよ。

野菜や果物の事になると、ついつい力が入ってしまうのですが、生産者たる者、お野菜や果物の知識で負ける訳にはいかないのです。

因みにこの世界でもダイコンの横にナス、スイカにイチゴなど、季節無視のお野菜たちが並んでいるのです。






「ファム姉ちゃんは凄いや!なあなあ、ナスはこの部分が尖っているのが新鮮なんだよな?」

トム君が尊敬の眼差しでわたしを見ます。ふふふ、わたしは褒められて伸びる子なのです。

入院中、ゲームの為にと菜園番組やネット様で調べた甲斐があると言うものです……結局ゲームには役に立たなかったのですが、いま役に立っているのでモーマンタイ、なのですよ。

「そうです、トム君はよく覚えていましたね。エライのです。

こちらの玉ねぎは少し古い上に先端が広がってるのが分かるですか?そこから悪い菌が侵入して腐りやすくなるのですよ。切った時に中身が茶色く腐った部分がある場合は、ほぼこれが原因なのです。

このブロッコリーは花が開きそうです。そうなったら味も鮮度も落ちてるのですよ。

人参は頭の方が緑色です。日焼けしてしまった所為で味が落ちてしまった証拠の色なのです。

これを全部まとめ買いする事でだいぶ値引きして頂けたのですよ」

「へー、何でこんなに詳しいんだ?」

「それは、わたしがファーマーだからです!」

「……うん、そうだったね。農業をしてたんだよね。ファム姉ちゃん大丈夫だからな。俺たち何があっても味方だからな」

「安心しろ」


何故二人とも生暖かい目で見るのですか?





今日は定休日。

漸く銀貨が数枚まで貯まったので冒険者ギルドに依頼をする為に外出することを告げると、トム君が案内をかって出てくれたのです。何て良い子!有り難や有り難や、へへ〜なのです。

丁度セイタさんが同じ道にある野菜の仕入れに行くと言うので、日頃からお世話になってるお礼に前回同様、値引き交渉をお手伝いしたのですよ。エッヘン!


セイタさんと別れトム君の案内で歩いていると、向こうから見覚えのあるお顔が。


……ラウドさんです。

しかも左腕に絡んでいる女性付き。

褐色を帯びた肌と赤い瞳が印象的で、防御無視のビキニアーマーをセクシーに着こなしている、お色気ダダ漏れの女性です。


……色気って、何処で売ってるですか?



ラウドさんもこちらに気付き一瞬だけ顔をしかめましたが、別にお邪魔はしないですよーだ。

「おっさん!って……うわー真っ昼間からサイテー」

「あら?可愛らしい坊やね。そっちのお嬢ちゃんも可愛いわぁ」

「俺は坊やじゃねえ!」

「ト、トム君失礼ですよ!えっと、褒めていただきありがとうございます?……こんにちはラウドさん」

「お、おう。お嬢はトムと二人で何か用事か?」

「はいです。冒険者ギルドに用事があるのですよ」

「ギルドに?あんな所二人だけで大丈夫か」

「大丈夫ですよ。トム君が一緒なので心強いのです」

「そうか…」

「はい……」

なんとも言えない微妙な空気。

分かっていましたけど、こうやって現実を見せられると少しだけ落ち込んでしまうのです。

「なー、ファム姉ちゃん。早く行こうぜー。それに俺、腹が減ったよ」

「あ、そうです。ゴメンなさい、お昼ご飯もまだでしたね。ではお二人とも失礼します」

なるべくラウドさんの顔を見ない様にお辞儀をし、少し先で待ってくれているトム君の方に小走りで追い付き、二人で歩き始めました。

歩きながら口を開いては閉じるトム君に、申し訳なさを感じ、何とか話題を探して探して漸く出た言葉は。


「ビキニアーマーを着ている人、本当にいたのですねぇ」

「……………そうだね」

トム君の目が哀れんでいる様に見えるのは、わたしの被害妄想ですか?

馬鹿です。

もっと別の話題もあった筈なのに。






「トム君、先ほどはありがとう」

「ふぇ?……ああ。別に〜、俺は腹が減ってただけだよ」

以前お店の常連さんがお勧めしていたカフェで、でっかいオープンサンドを食べていたトム君はニカッと笑い、指に付いたマヨネーズを舐めとりました。

パンに挟んでいる具材は海老やアボカド、ブラックペッパーが効いたカシカシベーコンに薄切り玉ねぎやレタスを特製マヨネーズで和えたものが、パンからはみ出るくらいギッシリ詰まってボリューム満点なのです。

ただ美味しそうですが少し食べ難そうですね。


…ふぅ、やっとお礼が言えたのですが、子供に気を使わせてしまったです。

トム君の気持ちが嬉しくて、でも気持ちを見透かされて若干気恥ずかしくもあり、黙って目の前にあるサンドイッチを齧りました。

甘めのふわふわ厚焼き玉子を軽くトーストしたパンに挟んだ玉子サンド。

付け合わせのフライドポテトと具沢山のコンソメスープとの相性は抜群なのです。



紅茶を飲みながら一息。

アールグレイですかね?ちょっと癖のある優しい紅茶の香りがほっこりと心と体をリラックスさせてくれるのです。

食後のオレンジジュースを飲んでいたトム君が、ストローの口をガジガジ齧りながら言い辛そうに問いかけてきました。

「なー、ファム姉ちゃんは冒険者ギルドに何の用なんだ?あ、別に言いたくなかったら言わなくていいんだぜ」

子供ながらに本当に良く気が回るトム君に思わず笑みが浮かぶのです。

商売人の子供って皆んなこんな感じなのですか?それともトム君だからですか。

「ふふ、別に聞かれて困る事ではないのですよ。人探しですから」

「人探しって?」

「家族を探したいのです。わたしの大切な三人の……兄?いえ血の繋がり的に言えば無いので…従者?……う〜ん、兎に角わたしの家族です」

「…家族?…三人も血が繋がらない、しかも大切なって…え、ええええええっ!?記憶が戻ったの!?ってか、ファム姉ちゃんはおっさんが、ラウドが好きなんだろ!?」

「ふええぇぇえ!?す、す、好きって、そ、そんな恐れ多いのですよ。い、いえ憧れと言いますか好ましいと言いますか何と申しますか。でもラウドさんには先ほどの方の様な大人の女性がお似合いなのですよ…お付き合いがある女性は皆さんスタイルがいいですし。それに沢山お付き合いされている男性はちょっと…ラウドさんは素敵だなぁ、と憧れてるだけなのですよ」


「…あの馬鹿野郎が…へっ、自業自得だな(ボソリ)」




何事かブツブツ呟いていたトム君が落ちついた頃を見計らい、紅茶を一口飲んでから話し始めました。

「先ほどの続きですが、わたしの家族は三人。一人は執事のシリルです」

「…執事?」

「シリルは完璧に仕事をこなす、闇魔法のエキスパートなのです。高い知性と洗練された物腰で、わたしは彼以上の美形さんに会ったことはありません…性格は、、、うん。わたしには優しいですよ」

「俺、何処から突っ込めばいいんだ?」

三年に一度の超レアイベントで入手したファミリーなのです。

正体はブラックドラゴン。当時のわたしはイベントには参加せず農作業をしていた途中、空からヒュルヒュルーー…どっかーんと、血だらけで畑のど真ん中に落ちてきたのです。他のプレイヤーにやられたのか、かなり傷は深く、そのまま放置するか他のプレイヤーに連絡するべきだったのでしょうが、痛そうで可哀想で何となく介抱していたら、何故かそのまま居着いていたのです。

人間の姿は黒目黒髪、洗練された物腰と敬語。女性スタッフの願望がこれでもかっ!と詰まった美形キャラクターなのです。



「もう一人は料理人のバッツァです」

「…り、料理人?まぁ貴族なら有りか」

「田舎料理から宮廷料理まで、当時あった全てのレシピを網羅しているのです。可愛らしいツンデレさんで三人の中で一番の力持ちなのですよ」

「全部のレシピって、そんな人間いるのかよ」

いるですよ。人間では無いですけど。

こちらも一年に一度のレアイベントで入手したファミリー。場所がランダムに発生するそれは、偶然にもわたしの家のすぐ側に現れ、畑を荒らしていたので退治(わたしでは無くシリルが)すればお腹を空かせていたとの事。ひもじいのは辛いのです。なので果物や野菜をあげたら何故か懐いたのです。

正体はフェンリル。人間形態では銀髪で瞳は琥珀色。成長途中の身長が気になるお年頃。お姉様方の夢をいっぱい詰め込んだキャラクターなのです。



「最後はソーカ、鍛治職人です」

「可笑しい!最後変だから!」

「農具から聖剣まで、彼に作れない道具は無いと思うです。水魔法が得意で何時もにこにこ優しいお兄さんタイプなのです」

「まさかの無視!?つーか農具から聖剣ってその説明も可笑しいから!」

こちらはサイトからの報告が無い、所謂隠しイベントで入手したファミリー。隠しイベントとは情報もなく隠され、場所と条件が揃うと自動的且つ強制的に発生するイベントの事なのです。二人と海に行ったら問答無用で襲ってきたので返討ち(シリルとバッツァが)にしたら仲間になったのです。

正体はリバイアサン。人間形態では薄い水色の髪と青い目で、確かコンセプトは薄幸の美青年風、理想のお兄様。スタッフは良い仕事をしているのですよ。

一番最後にファミリーになったのですが、三人の中では一番年上なのです。




「……なんか濃い人たちだなぁ。でもファム姉ちゃん。記憶やら何やら聞きたい事はたくさんあるけど、何で鍛治職人がいるんだ?」

「わたしはファーマーですよ?農具や罠が必要なのです。買うよりも素材を集めて作った方が断然お得且つ高性能なのです」

「あ、まだその設定なんだ」

おかしな事を言うのです。ファーマーに農具や害虫退治の罠は必須ですよ。


「……もし妄想の依頼でもギルドは受けてくれるのかなぁ(ボソリ)」






店を出て大通りにあるギルドへと向かいます。

うう、何処から人が湧いて出てくるですか?怖いです。あ、猫型獣人の子供です。もふもふしたいのです。あちらはドワーフ族ですね。ドワーフ族は似た顔が多い上にご長寿なので髭の長さで年齢が分かると言ってたです!………あれ、何歳ですか?

そう言えばお店のお客様にもドワーフのラダーさんがいるので今度教えてもらうですよ。


「ファム姉ちゃんー。あんまりキョロキョロし過ぎて迷子にならないでくれよ」

むむ、片手で数えるぐらいしか大通りには来ていないのですよ。少しぐらい大目に見て欲しいのです。

途中で露店に立ち寄り購入したイチゴ飴を二人で舐めながら歩いていた時です。

遠くから小さく聞こえてきた破壊音と、門側の方からこちらに向かい逃げてくる人たちと辺りを包む悲鳴と叫び声。



「門が破壊されたーーっ!!」

「侵略が始まったぞー!みんな逃げろぉぉーーっっ!!」




え、侵略ってイベントのあの侵略の事ですか?






金貨・・・十万円

銀貨・・・一万円

銅貨・・・千円

小銅貨・・百円

青銅貨・・十円

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ