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華麗にジョブチェンジ?

たくさんの方々に見ていただき、ありがとうございます。m(_ _)m


「ファムちゃーん、こっちにも水ー!」

「は、はいぃーっ、少々お待ちくださいなのですよー」



皆様二ヶ月ぶりでございます。

ファーマーから華麗にウエイトレスにジョブチェンジした新生ファムなのですよ!


あ、ファムはシャングリラでのわたしの名前なのです。ですのでここでは、ファム=ヴェルデが私の名前。ヴェルデはイタリア語で緑色。ファムは…ファーマーから取ったんじゃないんだったらないのですよっ!



コホン、皆様もわたしのジョブチェンジに驚いていることと思いますが、わたし自身も大変驚いているのです。



なにせ気が付いたら宿屋のベットの上。

周りは知らない大人達に囲まれた状態。


誘拐犯ー!?と叫ばなかったわたしは大人な女性。エライのです。


叫ばなかった真相は、単に喉がカラカラで声が出なかったのと、ビビり過ぎて固まっていただけなのですけど。

起きてから目の前に差し出された、蜂蜜入りのホットミルクの美味しさに胃袋から懐柔されましたが何が悪いのです?美味しいものを作る人に悪人はいない、がわたしの持論ですのであしからず。


要約すると、おマヌケさんにも畑のど真ん中で倒れシオシオに干からびる筈だったわたしでしたが、たまたま近くを通りかかった冒険者さんに助けられ、彼が拠点にしている町まで移動したと言う訳です。有難や有難やへへ〜っ、なのですよ。


兎に角、目覚めたら知らない大人たちから矢継ぎ早に質問の嵐。ですが、わたしにもわかるはずは無いのです。コールボタンはどこ?スタッフ状況説明をプリーズ。

責任者が不在の為、知らない大人に囲まれ半泣きにながらも、ゲームやらなんらやをボカしつつ自分の名前を名乗り、何故あの場所に居たのかは分からないのですが、あそこはわたしの土地と家だと説明していたくだりで、周囲から憐憫の眼差しと共に記憶喪失と認識されました。

…何故なのですか?


あまり人と関わらず過ごしてきた弊害なのか、必死の説明も虚しく記憶喪失だと勘違いされたまま、現在わたしはここテスコ、王都に次ぐ大きな港町に居るのですよ。

世界的にも貿易港として有名な港町で、海側を見渡せばたくさんの小型船や豪華客船、釣り船に時には偽装した海賊船や軍艦も停泊し、港へ降ろされた積荷は連日世界中から集まるスパイスや織物、木材や見た事も無い様な果物や野菜、異国人、旅人商人たちが集まり凄い賑わいをみせています。

積荷や魚などが並び威勢のいい掛け声が飛び交う港から一歩出れば、目の前に飛び込んでくるのは一直線に伸びる大通り。

名物のイカのタレ焼きやスパイスを効かせた串焼き肉など食欲をそそる香り漂う屋台に、巻貝や夜光貝で作られたオパール色の神秘的な装飾品、色鮮やかな鱗を持つ新鮮な魚など、店が軒並み連なるメイン通りがあるです。

その活気ある中心部から二本外れた海沿いの場所に建っている宿屋と食堂を兼ねた、黄色いたまご亭、その場所で現在わたしは住み込みのバイトをしているのですよ。



筋肉が素晴らしい寡黙な旦那さんは、料理人のセイタさん。ふくよかで姐御肌のおかみさんのリズさん。後は元気いっぱい小学生、息子のトム君の三人。いえ、リズさんのお腹の中にもう一人いるからもうすぐ四人家族。

皆さんとーっても優しい一家なのです。


え、お金があるのにバイトするのかって?

お金有ります。多分一生食べていける金額が。因みに通貨も同じで、少し安めの買取価格にはなりますが、ギルドに登録していない人でも素材買取もしてくれる有り難や有り難やへへ〜、な場所なのです。


でも一人ぼっちは嫌なのです。ブルブル。

寂しいのですよ〜怖いのですよ〜。元々ビビりのわたしでしたが、どうやらあの出来事は完全にトラウマになったのですよ。

持ち家はありますが、最初は町で家の購入も考えましたが、一人は絶っ対嫌なのです。

かと言ってファミリーも知人も居らず周りは知らない人ばかり。その辺の道行く人に、ちょっとわたしの家で一緒に暮らしませんか?等言えるはずありません。

わたしは奥ゆかしい大和撫子なのですよ。

宿屋に長期滞在して日がな一日ゴロゴロという誘惑もありましたが、寝るのは現実リアルで嫌という程してきたのです。

今のわたしは体も苦しくない、自由に動ける、走れる。勇気を出し今まで出来なかった事にチャレンジして大人の女性になるのですよ!



思案していたわたしに声をかけてくれたのはリズさんでした。

リズさんが妊娠中もあり、丁度店の手伝いを探していた最中だったとか。

すぐに了承し、住み込みウエイトレスに華麗にジョブチェンジしたという訳なのです。



後から聞いた話では、記憶喪失の貴族が無一文で途方に暮れていたので放っておけなかったとか言われたのです。


……待って下さい。いろいろ突っ込みどころがあるのですが、貴族って。無一文って。

ゲームでは基本、ステータス画面を開きタップする事で武器やアイテム等必要な物を出し入れ出来る仕組みになっているのです。

ゲームを進めてレベルが上がり特定のアイテムを入手すると、物の名前を呼ぶだけで武器が瞬時に出てくるようになったり、倉庫に入れる事が出来るのです。

この世界ではステータス画面など存在しない代わりに、次元鞄と言って空間魔法を付与したレアな鞄がありました。

次元鞄はたまにダンジョンで出現するレアアイテムで、その希少さから裕福な貴族や一流の冒険者が持つ、一種のステータスとか。

勿論鞄の色や大きさ、入る容量も様々。キャベツサイズから、レアになると荷馬車が入るものまでピンキリでした。

わたしの倉庫?イベントで入手した無限収納ですが?エッヘン!


話は逸れましたが、働いている理由は一人は嫌だからなのです。

それに働けば、一人ぼっちじゃなくなる上にお給料だって貰えるのですよ。一石二鳥なのです!

自分のビビりと社交性の無さに多少不安を覚えましたが、


何時やるの?今でしょう!


きっと直ぐに慣れるはずです。


しかしその時わたしはウエイトレスを舐めていたのです。



フリフリのエプロンドレスを着て愛想を振りまいていればいいと思っていたのですが、可愛い制服とは裏腹に気力体力精神力を使う過酷な職業だったのです。

新米のわたしは、皿を洗えばお約束のように割り、お客様に怯え厨房に逃げ帰り、注文を取りに行けば緊張で声が裏返り、テーブルを拭こうとすれば滑って頭を打ち気絶。初めて見る厳つい顔のお客様に体がガクガク震えまた気絶、背後に立ったお客様の気配に驚き運んだ料理を客にぶち撒ける。止めは体力の無さなのです。

今でこそ回数は減ったものの、凶器しょくじを手にプルプル震える姿はさぞかし怖かった事でしょう。怒鳴るどころか笑いながら心配してくれる皆さんの優しさにわたしの目頭は熱くなるのですよ。


だけど聞いて下さい!皆さんの尊い?犠牲でHPが5になったのです!パンパカパーンなのですよっ!……たったの5、ゴミめ(泣)


二カ月で2しか上がっていないこの事実。元々ファーマーは、スキル数が多い代わりにパラメーターは伸びにくい職種ですが、それにしたってこれは異常なのです。


推測ですがHPが3(ザコ)だったのは、もしかしたら現実でのわたしの体力そのままなのではないかと思うのです。

長い闘病生活を舐めてはいけないのです。

小学生と腕相撲をすればプライドがズタボロにされ、鬼ごっこをすれば哀れみの眼差しと共にお水が手渡される、まさに体力は幼児並み。

本当に3と言われても納得する数値なのですねぇ。トホホ。

因みにMPは不明です。入院生活が忍耐力と精神力を鍛える事になって賢者並みになったとかですか?

まぁ、分からないものは考えても仕方がないのです。さぁ、今から楽しいお昼ゴハンタイムなのですよ。



「よ、お嬢」

「ひょっ!?ラ、ラウドさん、おお帰りなさいです」

「ハハハッ。お嬢ビビりすぎだろ」


昼もピークを過ぎ、少し気を抜いていたわたしに掛けられた腰砕けになりそうな素敵なお声。

店の扉からひょっこり現れたのは、襟首まで伸びた青みがかった黒色の髪、長身の引き締まった身体。大人の魅力に溢れ野性味を帯びた顔はひょうひょうとした性格と相まって凄っい男前イケメンさんです。

そして倒れていたわたしを助けてくれた恩人でもあります。


狙っているお姉様方は数知れず、大変おモテになられています。

この前もボッキュボーンなセクシーなお姉さまと腕を絡ませて歩いていましたし、香水の匂いをプンプンさせての朝帰りもあったのです。逆ナンされるのは当たり前。しかもAランクの有名な冒険者さんです。

正にこの世の男性の呪詛を一身に受けている人なのですよ。


でもラウドさんは危険です。

性格ではなく、惚れたら危険。


だからわたしは彼に近付きたくはないのです。






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