表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

貴方たち、何しに行ったです?

今年初投稿が二月…(・・)…あれ?


大変お待たせ致しましたーっ

(スライディング土下座)ε-ε-m(_ _)m


わたしの命令オーダーと共に飛び出す二つの影ーーーその影の一つ、バッツァが踵で急ブレーキをかけて後ろのシリルに詰め寄ったです。


「シリルっ!アンタ何しれっとマスターの側にいるのさ。敵を殲滅しろってたった今!命令されたばっかりだろ!」

「ええ、マスターの命令は絶対ですので速やかに実行しますよ」

「だ、か、ら、早く行けって言ってんの!もう歳だもんねボケた?」

「失礼な。少なくともソーカよりは年下ですよ。大体バッツァは私の二つ名を忘れてはいませんか? 影があるのならばそこは私の領域です…ほら、このように」


パチンッと指が鳴ると同時に、建物と建物の隙間に潜んでいた魚人フィッシュマンが、円錐の形をした影に貫かれてたです。


うっひょっ!?グ、グロイのですよ。


シリルは闇魔法のエキスパート、中でも影スキルの最高峰、シャドウマスターを持ってるです。

シャドウマスターは文字通り影を操ることを得意としてるです。影を実体化させ攻撃したり、短い距離なら会話を盗聴したり影から影へ瞬間移動も出来ちゃう万能スキルなのですよ。

仲間内でもそのチートさから、無慈悲な闇の帝王とか影から操る男とかストーカー規制法外の男とか言われてたですねぇ。

ぼんやりと昔を思い出している間にも二人の舌戦は続いているです。


「それにこんな場所に一人マスターを残してはおけません。誰かがお側にいなければ」

「う、うぐぐぐっ、、そ、そうなんだけどそうなんだけど! 納得いかないっ!!」

「ふふふ、ほらほら。貴方達が動かないのであれば私が全て殲滅しますよ。いいのですか?私が手柄を独り占めしても」


そう言っている側からバッツァを挑発するように、近くにいるモンスターを次々と串刺し、もとい討伐してるですが、、結構エグいでのすよ。 なぜか見ているこっちの方がダメージが大きいのですよ!?


「あーーっ!!本当っにムカつくっっ!!仕方ないから今っ回っだ、け、は譲ってあげるよ!

マスター!!俺が一番デッカい獲物を狩って来るから待っててよ」

「は、はいです」

わたしの返事に満足げに頷くとバッツァはあっという間に見えなくなったです。


「あ〜あ、行っちゃった。若いっていいね〜。

ん〜、それじゃあ〜僕は港側を担当しようかなぁ。マスター、行ってくるね〜。

(…マスターに傷一つでも付けたら潰すからね〜)」

「有り得ないことを言ってないでさっさと行ってください」

「? 行ってらっしゃいです」


ソーカは和かにバイバイと手を振ると、のんびりと港の方へと歩いて行ったです。


そして一人残ったシリルは聖域化サンクチュアリの結界を出ると、静かに両手を広げたです。






薄暗い路地を二人の幼い姉妹が走っていた。


その愛らしい顔は今は恐怖に引きつり、汗で滑りそうな妹の手を姉は必死で掴む。

どれぐらい足を動かしていたのか。

本人たちが思う程にはそれほど距離は走ってはいないのだろう。それでも懸命に走る二人の視界の先に大通りが見えてきた。

後もう少し、もう少しで大通りだ。そうすればきっと大人たちが助けてくれる。

ホッと気が緩んだのか妹がぬかるみに足をとられ、その拍子に手を繋いでいた姉もバランスを崩し一緒に地面へと投げ出されてしまった。

ぬちゃりとした泥がふっくらとした頬にも服にもべったりと付いてしまったが、姉妹は背後から自分たちをいたぶる様に追って来たゴブリンにそれどころでは無い。

暗闇からゆっくり姿を現したゴブリンは、腰を抜かし震える姉妹の様子に喜悦の笑みを浮かべ棍棒を振りかざす。

無駄だと知りつつも姉は妹に覆い被さりギュッと目を閉じた。


ザッシュッッ!!

『グギョゲッッ!?』



全く痛みがないのを不審に思った姉が、固く閉じていた目を恐る恐る開けると、そこにいたのは無数の黒い槍のようなものに全身を貫かれたゴブリンの無残な姿だった。


悲鳴を聞きつけた冒険者は、あちらこちらでモンスターが串刺しにされているという同じような状況にここもか、と呟くと震えていた姉妹を救出した。









「チクショウッ!何てパワーだよ!?」


オークジェネラルの一撃の余波で飛ばされ、ゴロゴロと地面を転げ起きながら、男は悪態を吐く。

口の中のジャリジャリとした砂をぺッと、唾と共に吐き出した。

彼らは三人組Cランクのパーティー炎の斧。実力的にはBランクなのだが、攻撃は最大の防御がモットーな為、なかなか昇級できない攻撃重視の脳筋パーティーだ。

侵略の最中に運悪く彼らが出会ったのがオークジェネラル。

オークの進化系で、肌は鉄のように固く魔法耐性もある。しかし動きは遅いので、攻撃をした後直ぐに離れまた攻撃をし、少しずつ体力を削るしか方法は無い。驚くべきはそのパワーで、下手に攻撃を受けようものならば盾ごと体が潰されてしまう。


「ねーねー、倒さないのならアレ俺が狩ってもいい?」


己の体力が先に尽きた時点で負けだと斧を握りしめた時、場違いに陽気な声がかる。他のパーティーが来てくれたのかと背後を振り向けば、銀髪に琥珀色の瞳の美しい少年が一人立っていた。

まるで物語に出る王子様のようだが、惜しむらくは手に持つのが細く優美な剣ではなく、海賊の親玉が持つような大きなカトラスが少々不似合いだが。


「うー、生姜焼き?ハーブソルトで味付けしたポークチョップ?…いやここはマスターの好きな燻製した厚切りベーコン、、余った骨は野菜と一緒に煮込んでスープにして後から麺を入れて……マスターお帰りなさいパーティーだし、やっぱり豪快に揚げ物にしようかな…」


いきなり現れた少年は、ぶつぶつと呟きながら危なげのない足取りでオークジェネラルに近付いている。

援軍じゃねぇ!自殺志願者だった!

男は少年を止めようと手を伸ばす。


「ーよしっ!!特性ソースをかけたカツサンドに決定!!」


その手が届く前に地面を蹴り上げた少年が、頭上にかざしていたオークジェネラルの大剣ごと脳天から股間まで、まるで紙でも切るかのごとくあっさりと切り裂いた。


ーーは……?


真っ二つに倒れたオークジェネラルに呆然とする炎の斧のメンバーに、


「ねー、アンタたち悪いんだけどそれ、ドロップするまで見張っててくんない?あっちにミノタウルス(ビーフステーキ)が出たって言ってるから俺そっちに行きたいんだよね。お礼にドロップした肉、半分あげるから。

じゃ宜しく!」


と少年は男たちの返事も聞かず言いたい事だけ言うと、ビーフシチューにワイン、牛スジの煮込みにはビールだよね〜と、こんな状況なのに聞くだけで腹がすきそうな組み合わせを呟きながら走り去って言った。










「……俺は夢でも見てんのか…?」


ほんの少し前まで男は死を覚悟していた。

次々と海から現れるモンスターたちを相手に、もう二度と会えないであろう妻と子供たちの顔を思い浮かべ、血で霞む目を拭い銛を握りしめる。

その時彼の横を青い髪の男が横切った。ソーカだ。

貴族の様に身なりが良く、青く長い髪は途中から緩やかに結ばれている。木陰で本を読むのが似合う線の細い穏やかな顔の美青年だった。その身には無粋な武器も防具も一切なく、軽やかに海に向かう足取りに迷いはない。

男は思わずアッチャー、と頭を抱えた。

時々いるのだ。劇やら物語やらに触発され、脳内で無敵の英雄になったお貴族様(勘違い野郎)が。

しかし自業自得とはいえ、流石に見殺しはマズイ。


「おいっお前何してやがる!!死ぬ気か!」

「ん〜?ここの漁師さんかなぁ。心配してくれてありがとう〜。でも僕は大丈夫だから〜」

「大丈夫〜じゃねぇ、早く逃げろ!」

「大丈夫なんだけどな〜。やっぱり男らしく筋肉ムキムキになれば逞しく見えるのかな〜?ま、いいや。

でもここって小魚ザコばっかりなんだね〜 残念。あ…そうだ〜、バッツァにカルパッチョつくって貰おう〜と。オレンジのスライスが入ったのってすっごく美味しいんだよね〜」


なぜにカルパッチョ?


首を傾げた男の横で、ソーカはにっこりと笑うと手を横に滑らせた。





まるで指揮者のようだ。


ソーカが手をひらめかせれば、動きに合わせて海水がしなる鞭のように動き魚人フィッシュマン半魚人マーマンを次々に切り刻む。

浮世離れした雰囲気の青年が奏でるのは死のレクイエム。

既に辺りには、ドロップされた鱗や魚の切り身、武器などが散乱し、その数の多さを物語っている。

助かったと周囲の拍手喝采の中、しかしソーカは一人その優しげな表情を曇らせる。

「魚ばっかり……そろそろ侵略も終わりかな〜。今回は陸と海どっちから来るんだろうね〜?」

青年の呟きをひろった男たちは浮かれていた気持ちを立て直す。

規模が大きい侵略の最後には、必ずボスと言われる大物が現れるのだ。


その言葉を聞いたわけでもないだろうが、前触れもなく急激に海面が大きく盛り上がり、派手な飛沫を立てソレが現れた。


「ウソだろ……」


あまりの大きさに息を飲む。

海中から姿を現したのはクラーケン。ただのクラーケンならば数年に一度くらいの割合で現れる為に特段驚くことはないが、目の前のクラーケンはそれと比較にならないほどに大きい。

足の一本一本は小屋と同じぐらいの太さだ。

冷や汗が止まらない状態の中、それを分かっているのかいないのか、ソーカの緊張感のないのんびりとした声がした。


「わ〜今回のラスボスは海側からのやつだったんだ〜。大きなクラーケン(イカ)だね〜。僕ってばラッキー♫」

「この状況のどこがラッキー♫、なんだよっ!?」

「え〜、だってあれだけ大きければ、イカ焼きだけじゃなくて前にヒノモト国で食べた、イカ刺しもできるよ〜。食べ終えた後は天ぷらにして〜藻塩に抹茶塩にそうそう天ツユも美味しかったな〜。

あれ〜?イカ刺しってば活き造りだった〜?イカの足がウネウネしてたし、やっぱり生け捕り?…マスターには一番美味しく食べてもらいたいもんね〜、よ〜し」


生け捕り生け捕り〜と歌いながら両手を広げると、海水が大きな投網の形を成しクラーケンへと覆い被さった。

驚いたクラーケンが逃れようと網の中で必死にもがくも、投網がクラーケンを捕獲したまま段々と小さくなり遂には手のひらサイズにまで縮まったそれをソーカはアイテムボックスにしまいながら、


「新鮮で美味しいし〜 バッツァの活け造りショーまで見られてお得お得〜♫」


と笑顔でピースサインをし、周囲を呆気にさせた。










いたたまれない。

いたたまれないのですよ。



初めはわたしも討伐のお手伝いをする筈でしたけど、『既に40パーセントほど討伐しており今から行ってもほぼ間に合わないでしょう』の言葉に撃沈したです。

ならば怪我人を!とポーションを持って怪我をした冒険者さん達の元へと渡しに行ったですが、駄目です汚れますとシリルが彼らを治癒魔法で一瞬で治し、わたしが触った手がバッチいとハンカチで拭き拭きされたです。

あっち見るです。バイ菌扱いされた冒険者さんたち涙目になってるですよ。



その後、周囲の敵を全て虐殺もとい排除したシリルは、アイテムボックスから小さなテーブルと椅子を一脚用意し横で優雅にお茶を淹れてるです、が。

わたし晒し者ですか?

ここだけ優美な雰囲気が漂ってるですよ。

トム君に一緒に座りましょうと目でヘルプコールを送ったですが、青い顔で首を横にブンブン振られたです。

裏切り者なのです。




…ふぅ、セレブなお紅茶が大変美味しいのですよ。お高価そうなカップですねぇ。落としても割れないので安心ですが。

何故割れないのか、ですか? これは期間限定イベントで手に入れた『神々の』シリーズにある『神々のティーセット』だからなのですよ。

『清浄』『温度調節』『破壊不可』『天上の美味』などが付与してあるです。

因みに『天上の美味』は、どんな安物の茶葉でも、瞬く間に高級セレブなお紅茶に変わる優れものなのですよ。

これは執事のシリルが持つしかないですね〜と、ノリで譲渡したですけど多分コレ、この世界で売ったら城が軽く買えそうな気がするので秘密なのです。



今、わたしは世のオトメたちが夢にまで見た、執事でパラソルでお紅茶でスコーンですの、をほほほほ状態なのですよ。

たとえ皆さんが生暖かい目でこちらを遠巻きに見ていても、周囲が瓦礫だらけで建物が破壊されていても、気にしたら負けなのです。脳内ではここはベルサイユ宮殿の中庭なのですよ。

でもスコーンって初めて食べたですけど、噛めば噛むほど味はいいのに口の中の水分が奪われるですね。

現実世界リアルでもスコーンってこんなのですか?正直お紅茶がなかったらキツイのです。ほぅ、スコーンにはクロテッドクリーム?が合うですか…ところでそれってピーナッツバターとかの親戚です?




上機嫌で甲斐甲斐しくスコーンにクロテッドクリームなる高脂肪の親戚をぬっていたシリルの手が止まったです。


「…マスター、全ての討伐が完了しました。ついでにですが、バッツァとソーカの両名もこちらに向かっているようです」


ああ良かったです。

その言葉を聞いて心底ホッとしたです。

今回の侵略はレベルで言えば中級ぐらいで、今まで上級どころか厄災級レベルもこなしてきた家族達ファミリーでしたから大丈夫とは分かってたですけど、二人とも怪我がなさそうなので一安心なのですよ。



「そうそう、バッツァはミノタウルス(牛肉)コカトリス(鳥肉)、ソーカはクラーケン(烏賊)魚人(小魚)などを持ち帰るそうです。なかなか大漁のようですよ」



「……貴方たち何しに行ったですか」






イカ焼き食べたいです_φ( ̄ー ̄ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ