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第一章 the first moon 2

「――メンドくせぇんだよ、アイツ」

 どこかふて腐れたような末永の言葉を、僕はエビフライと一緒に飲み込んだ。ああ、何にも味がしない。何で僕は、こんな奴とこんな話をしながら弁当を食わなきゃいけないんだろう……。


 マックでの会食――その翌日。僕と渡辺は、末永を部室に呼び出して、事の真相を聞き出していた。

 体育館の横に設置された二階建てのコンテナ群――男子バスケ部の部室は、二階のほぼ中央にある。部屋の両側は部員達のロッカーで占拠されていて、部屋の中央には折りたたみ式のテーブルと簡素なベンチが置かれている。汗とホコリにまみれた、お世辞にも快適とは言えない空間だけど、不思議と部員達の溜まり場となっている。まあ、どこの部室も似たようなもんなんだろうけど。練習の前後には、入れ替わり立ち替わり、学年・レギュラー・補欠関係なく部員が出入りしていて――人に聞かれたくない話をするには不向きに思える。かと言って、他に最適な場所も見当たらない。

 そこで、発想の転換。

 練習前後の部室がマズくて、他にいい場所がないのなら――時間の方を変更すればいい。かくして、僕達は四〇分しかない昼休みを部室で過ごす羽目になってしまったのだ。

 午前中に早弁を済ませていたらしい末永を半ば無理矢理引っ張って、あまり面白いとも言えない会食の始まり始まり。「オレにはオレの時間ってモンがあンだけど」とか「プライバシーのシンガイじゃねーの?」とか、ブーブー文句を言っていた末永ではあったのだけれど、なんだかんだでキャプテンの渡辺には従う模様。渡辺が怖い訳では――ないと思う。確かに体も顔も声もでかいけど、どちらかと言えば性格は温厚な方で、いい意味で平和主義者。いちいち気が利くし、やたらと面倒見がいい。要するに人徳があるのだ。人の顔色ばかり気にして、適当な軽口でその場を乗り切ることばかり考えている、悪い意味での平和主義者であるどっかの誰かさんとは大違い。まあ僕のことなんだけど。


「――で、何よ?」

 ベンチに足を投げ出して、末永は問う。

「姫のことで、ちょっとばかし聞きたいことがあってさ」

 問われるままに、渡辺は答える。あまりにもストレートすぎるその言葉――どうかとは思ったけど、逆に今回はその方がいいのかもしれない、とも思う。昼休みの時間は限られているし、それより何より、末永も気の長い男ではない。遠回しな言い方をしても苛立たせるだけだ。

「……アズサの、こと?」

 眉間に皺を寄せる末永。

「……ンなこと、オメーらに関係ねェだろ……」

 何故、今、渡辺にそんなことを聞かれなければいけないのか、心底分からない様子だ。

「そんなことない。姫はウチの大切なマネージャーであり、お前はウチの大切なレギュラー選手だ。俺も困るし、ノボルも困る。そして何より男バスが全体的に困る」

 昨日橘に聞かされた話を交えながら、渡辺は事の次第を話した。と言うか、そのタイミングで僕の名前を出さないでほしい。僕は別に困らないし、痴話喧嘩に興味などないし。……本当に、どうでもいいのだけど。

「もちろん、これはお前と姫、二人の問題な訳だから、俺やノボルが出しゃばるのもどうかとは思う」

 だから僕を巻きこむなっての。

「正直、話を聞いたところで、二人の関係が完全に元通りになるなんて俺だって思ってねえよ。もしかしたらこのままマネージャーを辞めちまうかもしれない。……だけど、このままじゃよくないってのは、お前でも分かるだろ?」

 噛んで含めるような、諭す口調で渡辺は続ける。さっきまでは、マネージャーの橘が練習に参加しないことで部が迷惑している、みたいな趣旨の話をしていたのに、実際は辞めてもいいと思っているらしい。つまり、男バスがどーのこーのではなく、橘のことを個人的に心配しているのかもしれない。関係ないくせに。他人のためにわざわざ面倒なことに首を突っ込むその個性が、僕にはとてつもなく忌々しい。やるならやるで、僕を巻きこまないで欲しい。関係ないんだから。

「アイツはさ、多分納得したいだけなんだよ。ちゃんとした理由もなしに『別れよう』なんて言われて、『そうですね』なんつー人間はいないだろ? 他に好きな子ができたとか――」

「言えるワケねェだろ」

 久しぶりに、末永が口を開いた。眉間に皺を寄せたままの表情で、小さく呟く。

「オメーは、あの女のことを知らねェから、そんなことが言えるんだよ。ちゃんとした理由があって、それをちゃんと話して、ンで『別れよう』っつったって、アイツはゼッタイに納得なんてしねーぜ?」

 堰を切ったように話し始める末永を、渡辺は黙って聞いている。僕が無言なのは相変わらず。毎朝、通学途中のコンビニで買う弁当を黙々と平らげている。美味くも何ともない弁当だけど、こんなものでも腹に入れておかないと午後は空腹地獄だからね。


 そして、冒頭の台詞。


「『面倒くさい』ってお前――」

「メンドくせェんだよ。毎日何度も電話してくるし、授業のある時以外はずっと一緒にいたがるしよ」

「……でもそれは――」

 当たり前じゃないのか。付き合ってるんだし。

「度を超してンだよ。アイツの場合。電話たって、一日最低三回は電話してくンだぞ? 帰ってきてからと、飯食った後と、寝る前と――そんなに話すことねェっての。ずっと一緒ってのも、本当にずっと一緒じゃないと、不安になるみたいでさ。ガッコ終わった後とか、土日とか、オレがどこで何してンのか全部把握してないとダメなんだよ。信じられるか? オレだって、軽音楽部(バンド)とかけもちしてるワケだし、男友達と遊ぶことだってある。四六時中、あずさと一緒にいることなんてできるワケねェんだよ。そうだろ?」

 同意を求めるな。知らないよ、お前の都合なんか。

「だけど、アイツはそれを許さない。ずっと一緒にいて、ずっと自分のことを見て、ずっと自分のことを考えていてくれないと――アイツは満足しないんだ」

「……それだけ、お前のことが好きってことなんじゃないのか?」


「――重いんだよ」

 

 吐き出すように、絞り出すように、忌々しげに末永は呟く。

 何だよ、ソレ。

 人に求められて、人に必要とされて、人に愛されて――そこに存在することを許されて認められて――それだけで充分な筈なのに。

「オレは、もっと楽しく――何つーか、気楽にやってきたいワケ。アイツとは根本的に合わないんだよな。アイツ、学校では明るく振る舞ってるから分かンねェだろーけど、けっこう根暗(ネクラ)でさ――いい加減、こっちまで滅入ってくるっつーか……」

「――まぁ、お前の言うことも分からないでもないけどな? でもさ、仮にも恋人として付き合ってるんだから、ある程度は姫の想いに応えてやらないといけないんじゃないのか?」

「オメーはあっちの味方かよ……」

 渡辺が橘の肩を持つような発言をした途端にむくれる末永。周囲の人間を敵か味方にしか分類できないらしい。どんだけ精神年齢が低いんだ。

「そりゃ、オメーに言われなくてもさ、オレだって我慢したっての。なんか周りには遊び人と思われてるみたいだけど、アイツの告白をOKしたのはオレだし、それならそれだけの責任はあるとは――オレだって思ってンだけど。……だけどさ、限界ってモンがあンだろ、人間には。付き合い切れねェよ」

「それならそれで、姫にそう言えばいいじゃないか」

「オメーは人の話聞いてねェのかよ? アイツが納得する筈がないんだよ! なんで? なんで? 私のどこが悪い、私はどこを直せばいい、他に好きな人ができたんでしょそうなんでしょって――うるせェんだよ! やってられっか!」

 ガン、と近くのベンチを蹴り上げ、末永は背を向ける。


「――要するに、橘とは遊びで付き合ってたんだ?」


 口にしてから、しまったと思った。思ったことをそのまま言ってしまった。決して本音を語らないことに定評のある、この僕が。大丈夫だろうか。冷たい口調になってなかっただろうか。あまり末永の機嫌を損ねたくない。短気で幼稚な男だけど、部活内でのポジションはコイツの方が上だ。敵に回すと後々面倒になる。

 ……とまあ、僕のつまらない心配も、全ては杞憂だったようで。末永は機嫌を損ねた様子もなく、ただ不思議なモノを見るかのように目をスッと細めて、

「……遊びじゃない恋愛ってあるか?」

 と呟いただけだった。



 憂鬱だった。


 放課後、体育館での練習。湿度が不快にまとわりつくこの空間で、ただ弛緩して練習を眺めていた。

 ――なんで。

 何で、この僕は。 

 何で、この僕はこんなところでこんなことをしているんだろう。

 全てにおいて水準以下で、誰からも必要とされない、誰にも認められない、救いようのない無能者。誰からも必要とされていないのなら、いなくてもいい。

 世界に僕は必要ない。

 ――その筈、なのに。


「おしっ、んじゃ一旦休憩なッ! 一〇分後にシュート練習入るからッ!」

 渡辺の号令と共に、わらわらとコートから出てくる選手達。僕は慌てて、タオルやらドリンクやらを汗だくのメンバーに渡してやる。

「お疲れー」「ハイ、タオル」「お茶、冷やしておいたからっ!」

 混雑したファミレスのウェイトレスのように、目まぐるしく働いてみる。スマイル0円です。……いや、僕の作り笑顔に価値がないことぐらい、重々承知しているのだけれども。

「ハイ、お疲れ様ー。辻岡はポカリでよかったっけ?」

「これだけ汗を流してるんだからな。スポーツドリンクは水分補給という意味では尤も効率がいい。水や麦茶は口当たりはいいが、水分補給を目的とするなら――」

「ハイハイ本当だねー。ご高説は承ったので、早くしないと休憩終わっちゃうからねー」

 辻岡の御託を適当な言葉で軽く流し、仕事に戻る。無愛想で周囲に無関心なくせに、妙なこだわりの多い男だ。悪い人間ではないのだろうけど――もっとも、成績が良くて正レギュラーというだけで、僕には許せない存在ではある。

「ハイ、末永はウーロン茶でよかったよね?」

 軽音部と掛け持ちのため、練習の八割くらいしか顔を出さない末永だけど、今日は真面目に参加している。昼のこともあるし、コイツはコイツなりに思うところがあるのかもしれない。

「……悪いな」

 いつもはもっと偉そうにしているのに、何だか殊勝なことを口にしているし。

 末永拓。

 軽音楽部に籍を置き、バンド活動をしながら(ちなみにギター担当)、男子バスケット部にも所属していて、他の部員より練習量が少ないにも関わらず正レギュラーという、ちょっと信じられない男。運動神経は抜群だし、元々バスケのセンスもいいんだとは思う。だけど……やっぱり釈然としない。性格は短気で単純で単細胞。下品で自己中心的な奴だけど――阿呆みたいに女にモテる。そりゃ、バンドやってて、バスケもうまくて、容姿(ルックス)だって水準以上のうえに、本人も無類の女好きなんだから、モテない方がどうかしてるんだけど――釈然としない。

 釈然と、したい。

 この男、少し前まで橘あずさと付き合っていたらしい。彼女は地元でも有数の資産家の令嬢で、奔放で明るく、軽薄な末永にはお似合いだと、二十四時間前までは思っていたのだけど――話を聞く限りでは、随分と粘着質で、僕に負けず劣らずのネガティブ人間らしい。他人に執着があるだけ、あっちの方がタチが悪い――いや、逆に救いがあるとも言えるのだけれど。いずれにせよ、いい兆候だと思った。阿呆みたいに女にモテる男が阿呆みたいな女につかまって阿呆みたいに苦しんでいる。

 もっと苦しんだらいい。

 お前にはその資格がある。『恋愛は全て遊び』なんてふざけたこと言っていたツケがまわったと思え。自業自得。


「アオヤマ、俺にもタオルくれるかな」


 下らない悦に浸っていた僕を現実に戻す、その声。

 目の前に立つ、一人の男。


 ――嗚呼。


 彼の姿を視認した途端、僕の意識はまた鬱という名の奈落へ引きずり落とされた。

「……ああ、ゴメンね。はい、タオル」

「ありがとう。いつも悪いね」

 ニコニコと――柔らかな、和やかな、何て真っ直ぐな目で――僕を見るのだろう。

 こんな僕のことを。

 こんな、無能で臆病、卑怯で卑屈な小者を。

 そんな、正当な目で。

 

 彼の名は、峰岸秀典(みねぎしひでのり)という。


 望月高校始まって以来の優等生――彼がそんな風に謳われているのを、何度か耳にしたことがある。勉強では、学年一位はもちろんのこと(それだけでも充分凄いのだけど)、全国模試でもトップクラスらしい。そりゃそうだろう。話していても分かる。高校生とは思えない程に知識豊富で、頭の回転が速く、記憶力が抜群で、発想が飛び抜けているくせ、常に論理的でもある。運動神経は抜群、眉目秀麗で、性格は温厚。恐らく、これまでの人生で、本気で怒ったことなどないのではないだろうか。当然のように女子からの人気も高く、同性の友達も多い。あまりにも柔和な物腰のため、なかなか底を見せない個性ではあるものの――いずらにせよ、完璧(パーフェクト)であることに変わりはない。

 僕とは正反対だ。


 なんでだろう?


 何故、ここまで――出来過ぎな程に――不公平なのか。

 誰からも愛され、誰からも一目置かれている人間がいる一方で、誰からも馬鹿にされ、誰からも軽んじられている人間がいるという――この、事実。

 許せない。

 もちろん悪いのは峰岸ではなく、僕が勝手に嫉妬して、勝手に歪んでいるだけな訳で、ますます僕の自己嫌悪に拍車がかかる訳で――要するに、僕は峰岸が苦手なのだ。

 そりゃあ、彼はいつだって、僕に優しい言葉をかけてくれるし、口汚い末永や無愛想な辻岡、過剰にお節介焼きの渡辺に比べれば、それは数段マシなんだけど……。

 どこか――見下されている気がする。

 僕の被害妄想なのは分かっている。

 それは分かっているんのだけれど。

 何て才能。

 何て存在。

 何て人格。

 何て個性。

 ――きっと、この世に神はいないのだと思う。

 この落差は何なんだろう。

 僕の周囲だけに、やたら才能に恵まれた人間が偏っているような気がする。もし本当にそうなのだとしたら、いよいよ酷な話ではある。イジメとしか思えない。 

 なんで、みんな僕にないものばかり、持っているんだろう。

 勉強もできない、顔は十人並み、信頼が厚い訳でも、特出する特技がある訳でもない、唯一の取り柄だったバスケは……もうできない。何て無能な、何て無様な駄目人間。何もできない、何もない癖に、自己愛だけはやけに肥大している。だから苦しく――だから痛いのだ。

 もうちょっと――もうちょっとだけでいいから――みんなに認めてもらいたい。

 僕は負け犬ではないのだと。

 僕だって、みんなに必要な人間なのだと。

 喉を枯らしてそう叫びたいのに――口をついて出る言葉は、どこまでも卑屈で、どこまでも媚びている。

 プライドとコンプレックスは激しい摩擦を起こし、さらに出血量は増していく。

 もうちょっと強くなれたのなら――

 もうちょっと鈍くなれたのなら――

 少しでも、僕は救われるのだろうか。


「スミマセーン!」

 不意に声をかけられ、我に返った。と同時に、足元にテン、テン、とボールが転がってくるのに気が付く。無意識にそれを取り上げて、

「ああ、スミマセンスミマセンっ!。ありがとうございますっ!」

 妙なイントネーションでペコペコ頭を下げる少女――町田梢。

 どうやら、ドリブル練習の途中でボールを蹴飛ばしてしまったらしい。今まで何度もあったことなので、すぐに分かる。――というか彼女、入部してからドリブル練習しかさせてもらってないんじゃないだろうか。

「おっかしいナー? 椎名センパイに言われた通りにやってるのに、何でそっちにボール行っちゃうんだろー?」

 いやいやいやいや、女子バスケ部キャプテン・椎名香織の言う通りにやっていたなら、そんなちょくちょくボールを蹴っ飛ばしたりしない筈だろうし。

「あ、センパイっ、いつもスミマセンですっ!」

「あ……うん」

 てくてく駆けてくる小柄な少女に、僕はボールを渡してやる。と、不意に彼女と目が合う。

「――センパイ、暑くないんですか?」

「え?」

 言われて気が付いた。彼女は、僕がジャージの上着を着ていることを不思議がっているのだ。七月の中旬に長袖でいるのだから、不審に思われても仕方がない。

「いや、別に……大丈夫だよ」

「ならいいんですけど!」

 いいのか。こんな時に何か気の利いた言葉でもかけられたらいいのだけれど、どういう訳かいつもの調子が出ない。だから彼女ができないんだろうけど。ほっとけ。

 ……いや。これが他の――例えば椎名とかだったら、いくらでも軽口を叩けるのだけど、この壊滅的にバスケが下手な一年生、梢が相手だと、どうも調子が狂う。なんでだろう。

「ありがとうございますっ。センパイも頑張ってくださいねーっ!」

「あ……うん」

 何を頑張ると言うのだ。何を。

 内心、くさくさ腐りながら、僕は彼女の姿をいつまでも見送っていた。女子バスケ部のコートに戻った彼女はこちらを一瞥し――笑顔で一礼して、またドリブル練習に戻る。

 僕はただボールを拾ってあげただけだってのに――丁寧にお礼をして――僕を視認して――僕の存在を認めて――僕の存在を、僅かばかりでも肯定してくれた。ちょっとした、本当に取るに足らない出来事なのは分かっているのだけれど、それでも僕は、そんなちょっとしたことがとてつもなく嬉しくて。

 ――どうかしてる。

 こんな僕が。

 こんなどうしようもない僕が。

 こんなどうしようもなく救われない僕が。


 何を――調子に乗っているのだろう。


 僕は駄目な人間だ。僕には何の価値もない。誰にも肯定されないし、誰にも認められない、誰にも愛されない。そんなことは分かってる。そんなことは分かってる筈――なのに、心のどこかで、まだ望みを捨てないでいる。いつかは――きっといつかは、自分の全てを理解してくれる人がいるなんて……そんな、到底実現しようもない、甘ったれた夢を抱いている。そんな夢、抱くだけ無駄なのに。何も行動しないで、赤子のように怯え、幼児のように身勝手で、児童のように狡猾で、中学生のように尊大な、この僕が――


 どうして、世界と繋がりを持てるというのか。


 いいんだ。

 ずっと、このままでいい。

 いつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでもいつまでも――――このままでいればいいんだ。

 僕のような人間は。

 僕のような、駄人間は。

 ……………………。


 練習が終わり、後片付けを終えると、すでに時計の針は七時を越えていた。すでに、体育館には誰の姿もない。僕は学生鞄を肩にかけ、一人、校門をくぐった。

 帰り道、駅前に駐められている自転車を、力一杯蹴り倒した。

 僕を見下す月が、やけに汚く見える。

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