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フラッシュバック 2
綺麗な満月が、そこに浮かんでいた。
もうすぐ死ぬと言うのに――ひどく、安らかな気分だった。
これで、全てから解放される。
もう、顔色を窺ってビクビクする必要もない。
もう、期待を裏切られて失望することもない。
痛みも、辛さも、孤独も不安も絶望も、何も感じないで済む。そう考えると――ひどく、心が安らいだ。アスファルトに広がる血溜まりに身を浸しながら、ゆっくりと、息を吐く。
サイレンが、どこかで鳴り響いている。
満月だけが、無表情に下界を見下ろしていた。