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第二章 the second moon 8

『もうつらい、つらいです。

 これ以上、生きていくのがつらい。

 ずいぶんがまんしたけど、もうげんかいです。

 もうこれ以上はムリです。

 ごめんなさい。

 みんな、ごめんなさい。

 家族のみんな、学校のみんな、

 みんなみんなごめんなさい。

 でももうムリなんです。

 今までありがとうございました。

 さようなら』


「……これ、どう思う?」

 文面に顔を落とす僕たちに問いかける、渡辺の声。どう思うも何も。

「……遺書――なのかな」

「俺はそう思っている」

 こちらの目を真っ直ぐに見据え、渡辺はそう続ける。 

「自殺しようって……考えてる人間がいるってこと?」

「遺書とはそういうモンだろう」

 それはそうだけど。僕は適当な言葉が継げない。


「問題は――誰がコレを書いたかってことだね」


 横から、やたら柔らかな声が割り込む。全てを許すかのような、全てを包むかのような、柔らかく、温かい声。

 峰岸秀典。

 ……いくらか、普段より緊張しているように聞こえるのは、僕の気のせいだろうか。

「誰が書いたか分かるか、峰岸」

「無茶言わないでよ。これだけじゃ、情報量が少なすぎる」

 微かに柔和な笑みを浮かべ――もっとも、峰岸にとってはこの表情こそがデフォルトなのだが――あくまで、柔らかく語る。

「だけど……ちょっと気にかかる部分があるのも確かだね」


 その日は朝から曇り空で、いつ崩れてもおかしくない空模様だった。梅雨明けはとうになされた筈なのに……全く、厭な季節だ。

 渡辺によって招集がかけられたのは、昼休みのことだった。場所は男バスの部室。いつかの集まりと同じだ。ただ、揃った面子だけが違う。僕と渡辺の二人は同じだけど……今回は、それに峰岸が加わっている。

 なんでだ。

 なんで、ここに峰岸がいる。

「悪かったな、峰岸。何か面倒くさいことに巻きこんじまって」

「いいよ、どうせ暇だし。それに、渡辺が俺を頼ってくるなんて、きっと大変なことなんだろうし。俺なんかでどれだけ力になれるか分からないけど……まぁ、それなりに頑張ってみるよ」

 峰岸が『どれだけ力になれるか分からない』のなら、僕がここにいる意味など一ミリもなくなる。行き過ぎた謙遜は嫌味なだけだ。

 峰岸秀典というこの男――今まで、校内外で起きた数々の事件をいとも簡単に解決してきているらしい。ちょっとした名探偵というやつだ。そんな人間が、たまたま所属する部活のキャプテンにちょっと呼び出されて、ちょっとした事件を持ちかけられて、ちょちょいと解決しようと――そういう図式らしい。なるほど僕は完璧に空気ですね。帰っていいですか。寝不足で眠いんだけど。

 ……いや、今回は僕もこの場にいないといけないのか。

 と言うか渡辺、僕に対して『面倒くさいことに巻きこんだ』謝罪はない訳? 僕はお前の小間使いでも何でもないのだけれど。

「――それで、今回はどんな問題が起きたの?」  

 穏やかに先を促す峰岸に対し、渡辺はポケットから一通の封筒を取り出して――

「実は、今日の朝練の時に……これを見つけたんだ」

 古ぼけた折り畳み式椅子に並んで腰掛ける僕と峰岸の前に、スッとそれを差し出す。読め、ということらしい。すでに封は開けられている。峰岸は何の躊躇もなく、封筒に収められていた便箋を抜き出し、さっと目を通す。

「……続けて」

「あ、ああ。それは体育器具庫に落ちていた。絶対とは言い切れないが、昨日の段階ではそんなものはなかった。少なくとも俺らが練習してた時にはな」

 大会が近い男バスレギュラー陣は朝早くから自主練習を行っている。室内競技の部活としては、他にバレー部、卓球部、バトミントン部などがあるけど、そこらはバスケ部ほど強くない。夏の大会でも、いつも地区予選どまりだ。朝練までして夏の大会に備えているのはバスケ部だけ。体育館使い放題。やったね。……なんて言っても、当の僕は特に仕事もなく、顔を出さないことの方が多い。

「――青山。昨日の片付けをしたのはお前だよな? その時には、こんな封筒は目につかなかったか」

 なるほど。僕は証言者としてこの場に呼び出されたらしい。大層な役回りですね。ああ眠い。

「……んや。昨日はこんな封筒には気が付かなかったけど……。体育器具庫って、細かく言うとどの辺りに落ちてたの?」

「一番手前に置かれた、マットの脇だ」

「……入り口の近くだね。だったら断言できる。昨日の段階では、そんなモノどこにもなかったよ」

「なるほどな。だが……分からないな。ある程度絞られるとは言え、いつ落としたのか分からないんじゃ、落とし主の特定も難しい」

 いつもながら、この男は年齢不相応な喋り方をする。本当に同じ年かよ。

「――ふぅん、これは、ちょっと問題かもしれないね」

 文面を何度も何度も読み直しながら、峰岸が溜息混じりに語る。

「だいたい、ソレ何なのさ。二人だけで悩まないで、僕にも読ませてよ」

「誰も読ませないなんて言ってないよ。ほら、アオヤマも見てごらん」

 峰岸に差し出された文面に、僕は目を通す。

 それには、現状の苦痛に対する訴えと、謝罪と、感謝と――そして、別れの言葉が刻まれていた。


 そして冒頭の遣り取りである。

 峰岸の言葉に、僕と渡辺の二人は呆気にとられていた。

「気にかかることって……これ読んだだけで、もう何か分かったのか?」

 目を丸くして驚いている渡辺。そりゃそうだろう。僕だって驚いている。こんな短い文章で何が分かるってんだ。

「いや――分からないよ。分からないから、気にかかるんだ」

「悪い峰岸。俺には、お前が何を言っているのかがさっぱり分からない」

「僕も」

「うーん、何て言うか……この文章は、何のために書かれたんだろうね」

 軽く頬杖をつきながら、峰岸は語り始める。

「何のためにって……そりゃ、遺書だからな。いつか自殺する時のために決まっているだろう」

「そう。遺書は自殺のために書かれるものだ。死んだ後に、自分の意思を表明するために書かれる文章だよね。つまり、自殺が発見された時点では当然、書き主は誰なのか分かっていることになる」

 何を当たり前のことを。

「だとすると、不自然なんだ。この文章は、意図的に書き手が誰なのか、特定できないように計算されて書かれている――そこに作為的なモノを感じるんだよね……」

「……そうか? まあ俺だって現実に遺書なんか見たことはないが……特に変わった部分はないように思えるけどな」

「表面的にはね。だけどさ……まず、字がキレイすぎるよね。活字で書かれたみたいだ。うがった見方をすれば、筆跡を誤魔化しているようにも思える」

「考えすぎだろ」

「そうだよ。筆跡を誤魔化すんなら、もっと崩した文字になるんじゃないの?」

「だからだよ。いかにも筆跡を誤魔化しました、的な文字だったら、一発で怪しまれる訳でしょう。だから敢えて、逆に活字を写したみたいな物凄く丁寧な字で書いたんじゃないかな? ……文章を見る限り、とてもまともな精神状態とは思えないのに、字だけは物凄く丁寧――まずそこが、不自然なんだよね」

「そうかあ? 俺には、やっぱり考えすぎに思えるけどなあ」

「いや、でも確かに一理あるよ。続けて、ヒデ」

「うん……書き手が誰が特定されないように書かれてるって言ったけど、それは内容についても言えることなんだよね。まず、一人称がどこにも使われていない。『僕』とか『俺』とか『私』とか、これだけで性別とか普段の話し方とか分かっちゃうからね。――普段の話し方と言えば、ほら、ここ」

 遺書の一部分を指差し、さらに畳み掛ける。

「『家族のみんな、学校のみんな』――なんてさ、今生の別れをしようってのに、ずいぶんと他人行儀な書き方だよね。普通なら、『お父さん、お母さん』とか『パパ、ママ』とか書きそうなもんなのに。『学校のみんな』ってのも、仲のいい友達がいるのなら名前ぐらい出したっていいのに、それもない。友達が一人もいないんじゃ仕方ないけど、だったら端からこのセンテンスは省けばいい。家族の呼称や家族構成、交友関係なんてのは、一番個人の特定がしやすい部分なのに……これじゃ、情報量ゼロだよ。まるで何も分からない」

「……なるほど」

 細かい部分が気になる性分というのは本当に困る。頭が論理的にできていない渡辺は、押し切られる形で納得してしまっている。何でもいいから反論しろよ、この野郎。

「漢字の使い方にしてもそうだよ。大して難しくない字でも、仮名で書かれている。そもそも語彙自体が物凄く少なくて、まるで小学生の作文みたいだ。もちろん、文章能力が高い人間でも、平易な文章を書くことはある。遺書となればなおさらだ。だからこそ――やっぱり、誰が書いたのか特定できない。文字にせよ文章にせよ、まるで計算されたかのように個人を特定する材料が削ぎ落とされているんだよね。物凄く不自然だ」

「……なるほど」

 お前はそれ以外の言葉を知らないのかよ、このバスケ馬鹿。

「これ、体育器具庫に落ちてたって言うけど、もしかしたらわざとそこに置かれていたのかもしれない。運動部の人間なり、体育の授業で器具庫に入った人間なり、誰かに見つけてもらいたくて。……何のために? 遺書を見つけてもらって、自分の現状を理解してもらって、あわよくば自殺を止めてもらおう、自分の苦痛を取り除いてもらおう――そういうSOSの一つなのかもしれない。そういう思考は理解できるし、いかにもありそうな話だよね。だけど、今言った通り、これじゃあ誰が書いたか特定するのはほぼ不可能だよ。遺書としても不自然、救済を求めるにしても意味をなさない――まるで、意味が分からない。この文章が書かれた目的が分からない。

 俺が最初に『分からない』って言ったのは、そういう意味だよ」

 ……よく回る口だ。この短時間で、この少ない材料から、よくもまあそれだけの可能性を列挙して整理できるもんだね。やっぱり僕ら一般人とは根本的に頭の作りが違うんだろう。――だけど、

「だけどさ、ヒデ。やっぱりそれは推測で――根拠は分かったけど、証拠なんて何もないんだよね。これは本当に、本物の遺書なのかもしれないじゃない。個人を特定できない文字も文章も、たまたまかもしれない。そうでしょ?」

「もちろん。細かいことが気に掛かるのは俺の悪い癖なんだ。考えすぎで、それがただの的外れだったってことも、ない訳じゃないし」

 難儀な性分ですこと。

「だったら……やっぱり、これは本物の遺書として扱うべきじゃないのかな? ヒデの意見を採用したって、結局は何も分からないんだから、進展しない訳じゃない。だったら――」

「うん、それは、俺もそう思うよ。長々と推理を披露しといて何だ、って思うかもしれないけど」

「……要するに、話は振り出しってことか?」

 久しぶりに渡辺が口を開く。僕とヒデの論議が難しかったのか、少し疲れているみたいだ。

「――渡辺、これは確認なんだけど、この遺書のことは、先生たちには――」

「言うつもりはない。話を大事(おおごと)にしたくはないしな。できれば、この三人だけで解決できればいいと思っている」

 あー、やっぱり僕も数に入れられる訳ですね。最初から分かっていたことだけど。

「じゃあ……差し当たって、僕、心当たりがあるから、そこをあたってみるよ」

「え!? 心当たりってお前、自殺しそうな人間がいるってのか!?」

 何を驚いてるんだ、キャプテン。むしろそこが本題だろうが。

「いや、自殺しそうかどうかは分からないけど……最近、何か色々あって、悩んでいるみたいだから……。それとなく行動を共にして、本心を聞いてみる。……それで、できれば前向きに生きていけるように、励ましてみるよ。僕なんかでどれだけ力になれるか分からないけど……」

「そうか、じゃあ、そっちは頼んだ。俺は俺で怪しい人間がいないか探ってみるから」

 一応の形で渡辺が結び、今日の集まりはお開きとなった。問題が問題だけに、この類の集まりは今後も行われるのだろう。

 とは言え、僕は満足だった。峰岸がゴチョゴチョ言い出したのは計算外だったけど、取り敢えず目的を果たすことはできたし。……最後の方、無言でこちらを見つめる峰岸がやけに不気味ではあったのだけれど……。

 ああ、眠い。

 午後の授業、居眠りせずに過ごせる自信がない。昨日は二時すぎまで机に向かっていたんだし、おまけに今日は誰よりも早く登校したんだ。慣れないことはするもんじゃない。遺書を書くのに慣れてる人間なんて、いないのかもしれないけど。



 我ながら、女々しいとは――いや、馬鹿馬鹿しいとは、思う。

 好きな()に近付くために、その大義名分を得るために、こんな面倒な手を使ったりして。あちこちで適当なことを吹聴して、夜なべして偽の遺書まで書いて。でも、今さら後戻りなどできない。

 もう随分前から、後戻りなど考えてないのだけれども。


 昼休みの集まりを半ば強引に終わらせ、僕たちは部室を後にする。外は案の定の空模様。まだ雨足こそ弱いものの、上空を覆う厚い雨雲を見る限り、当分やみそうもない。バスケは室内競技だから練習に支障はないけど――問題はその後だ。雨ならば、さすがの辻岡も屋上で物思いに耽ることもないだろう。そっちは放っておいていい。

 予鈴が鳴った。あと五分で午後の授業が始まってしまう。峰岸、渡辺の二人はとっくに教室に戻っている。辺りに人の気配はない。僕は一年生エリアの下駄箱へと向かう。彼女は確か二組だった筈だ。下駄箱に併設された傘立てに存在する無数の傘の中から、特徴的な柄の傘を抜き取る。以前に彼女が差していたのを見たことがある。ご丁寧に、柄に小さく『MACHIDA』と刻印が彫ってある。間違いない。周囲に人がいないのを、もう一度確認。大きく息を吸い――膝を使って叩き折る。

 彼女には必要ない。



 今日も今日とて部活が始まる。

 外はザーザー降り。扉を開放しているのでいい涼みにはなるのだけど、それでも選手達は汗だくになって練習に励んでいる。ああ何て美しい青春の一ページ。一生そうしてたらいいよ。

 僕は練習が一段落したところで、目的の人物に近付く。彼はハードな練習に息を切らしながら、スポーツタオルで全身の汗を拭っている。肩まで伸ばした茶髪を後ろでざっくり結んだ、ぱっと見には軽薄にしか見えない――そして実際その通りの――女好き。

「ね、ね、ちょっといい?」

 尻尾でも振らんばかりの勢いで末永に近付いていく。

「あん?」

 対する末永は決して機嫌がいい訳ではないらしく。

「ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ――」

 幾分トーンを落とし、怪訝な顔の彼を物陰に連れて行く。

「……なんだよ。こっちは暇じゃねえっつーのに」

 ゴメン。こっちだって暇じゃないんだよ。少なくともお前よりはね。さっさと本題に入らせてもらうよ。

「六組の長原さんと付き合い始めたって、ホント?」

「オメェに関係ないだろ」

「関係なくないよー。忘れたの? 橘のことー。誰が話つけたと思ってんのさー。人に縁切りさせといて、新しい彼女のことは関係ないって、水くさいんじゃないのー?」

 ユニホームの襟をクイクイ引っ張って、甘えた声を出してみる。相手の目をじっと見て、心をこじ開ける。チビで童顔ってのは、こういう時に得だね。相手の懐に飛び込んで、心をほぐし、警戒心を解く。

「……水くさいってことはねーだろ……。別に、告白されたから付き合おうってなっただけで……。わざわざ言うことでもないと思ったからさ」

 若干目をそらし、末永は簡単に口を割ってくれる。馬鹿が相手だと楽でいいよ。

「そっか……。ふうん、そっか、もう新しい彼女できちゃったんだ……。ならいいか。うん。よかったよー」

「……何だよ。言いたいことがあるなら言えって」

 露骨な言い方をする僕に引っ掛かてくれる末永。

「町田梢って、知ってる?」

「女バスの一年だろ? 知ってるに決まってンだろ。何か知らねェけど、オレがアイツ狙ってるって噂が流れてたンだよなー。オレはロリコンじゃねェっつーの。やめてほしいよな」

 ロリコンって言うな。

 と言うか、その噂は末永本人の耳にも入っていたのか……。そりゃそうだ。お喋りな知り合い、多そうだもんな。そりゃそうだ。そりゃそう。別に驚くに値しない。そのくらいは予想していたことだし。

「へー、そんな噂が流れてたんだー。変なの。実際は逆なのにね」

「逆って何だよ」

「んや――実際、狙ってるのは末永じゃなくて町田梢の方だってこと。あの子、何か末永のこと好きみたいでさー」

「はぁ?」

「ほら、あの子もよく片付けとかやらされてるからさ、けっこう話す機会あるんだけど……この前、『好きな人とかいないの?』って聞いたら、それが末永だって――。目をキラキラさせながら、『カッコイイ』、『カッコイイ』って連呼してた。そんなこと僕に言われても困るんだけどね……」

「ふうん……」

 まんざらでもないみたいな顔してんじゃねえよ、この色魔。

「って言っても、告白する勇気ないみたいだったからさ……こんな僕でも、恋のキューピッドってやつ? なれたら嬉しいかな、と思ったんだけど――もう新しい彼女ができたんじゃ、意味ないね……」

「そうだな。オレもう彼女いるし。ちょっと遅かったな……」

 などと言いながら、視線は確実に女子バスケ部の方を追っている。

 僕は知ってるんだよ。

 末永拓――どうしようもない女好き――よほどタイプじゃない限り、来るモノ拒まずという主義――二股、三股も厭わないというスタンス――きっと、この男の脳味噌は下半身と直結しているのだろう。夜道で背中を刺されたと聞かされても、きっと僕は驚かない。

 そんな男が、客観的に見て魅力的であろう()に(ロリ趣味であることは否定しないけど、末永がそういう子と付き合っていた過去を僕は知っている)好意を寄せられてると知って、大人しくしている筈がない。新しい彼女が出来たにも関わらず、梢と接触をはかろうとするに違いない。

 飛んで火にいる夏の虫。

 誘蛾灯に焼かれて死んでしまうといいよ。

 どうかしている。

 こんな――こんな――確かに僕は、背も低くて童顔で、卑屈で卑怯で臆病で脆弱で、優れたところも、正しいところも、美しいところもない――本当にどうしようもない人間だけれど、それでもこんな、色欲だけで動いている愚鈍な人間よりも下だなんて。そんなことがあってたまるか。僕だって、努力すれば彼女ぐらい作ることはできる。優位性を示すことぐらいは、できる。

 馬鹿にしやがって。

 馬鹿にしやがって。

 馬鹿にしやがって。

 今に見ているといい。お前みたいな浅はかな人間は未来永劫救われない。一生女の尻を追い掛けて、追い掛けて追い掛けて追い掛けて――絶望すればいい。



「あれー? あれー? あれー?」


 部活が終わったその後。

 渡辺と峰岸が例の遺書の件で話し合いをしたいと言っていたけど、僕は欠席させてもらった。昼休みから数時間で大した成果が上がるとは思えないし。二人を部室に残し、僕は校舎へと向かった。

 何だか――ひどく疲れた。

 演じて、妬んで、怯えて、騙して、(かた)って恨んで逃げて罵って――マイナス感情マキシマム。ネガティブランキング暫定一位だ嬉しいな。

 ――だけど。

 僕はいつもそうしているように、昇降口に体育館シューズを戻し、傘立てから自分の傘を抜き出して。……そこで初めて、一年エリアで頓狂な疑問符を垂れ流している小柄な少女に気が付く。何というタイミング、何という僥倖、何という――巡り合わせだろう。僕は自分の傘(家にあるので一番大きいモノを調達してきました)を引き摺り、彼女に近付いていく。

「どうしたの? 捜し物?」

「あ、センパイ――あのあの、私の傘がないんデス。雨が降ることは分かってたんで、持ってきてた筈なのに……。あれー?」

 さかんに首を傾げている梢。

「……あのさ、梢ちゃん」

「はい?」

「こういうことはあまり考えたくないんだけど――ああ、やっぱりいいや。さすがにそこまではしないか」

「えー、なんですかー? 気になるじゃないですか言ってくださいよー」

 僕の目の前、小柄な少女が見上げている。何でだろう。途中で言いかけて止めると、みんな絶対に聞き返してくるよね。聞かない方がいいこともあるのに。


「――隠されたんじゃないの?」


「……え。」

 表情が固まる。……想像もしてなかったのかな。こんな状況なんだから、もうちょっと人の悪意に敏感になろうね。

「ほら、例の、さ……東条とか……トイレで水ぶっかけてくるような連中だし……もう椎名が勘付き始めてるから、目立つような攻撃はしてこないとは思ってたんだけど……まさか、こんな陰湿な真似してくるなんて……」

「…………」

 黒目がちの瞳が、見る見る間に光彩を欠いていく。

 僕の目の前で。

 悪意は闇の姿を借りて、少女の心を確実に蝕んでいく。


 嘘なのに。


 全部嘘っぱちなのに。


 嘘は本当になり、推測は事実に、想像は真実になる。

 面白い。

 面白いなあ。

 口先一つで、舌先三寸で、僕は世界と繋がっている。誰に認知される訳でもないけど――騙し(かた)って偽り欺いて、複数の人間を操作して――我ながらひどいことをしているという自覚はあるのだけど、でも――

 

「よかったら、入ってく?」


 大きな傘を開き、声をかける。蒼白な顔をした彼女は、視線を下に向けたまま小さく頷いて、

「……よろしくお願いします」

 お願いされました。何を? ……まあいいや。かくして、僕と梢は相合い傘で帰途につくことになりました。ちなみに、梢の傘は多分もう見つからない。焼却炉の中じゃね……。


「……大丈夫?」

 校門を出て百メートル程歩いたのだけれど、梢は俯いたまま一言も喋らない。喋ろうとしない。セミロングの髪が顔にかかっているために表情はよく分からないけど、ずいぶんと顔色が悪いように見える。

「――どうしよう」

「ん?」

「傘……お父さんからもらったのに……怒られちゃいます……」

 何かと思えば、そんなことを心配していたらしい。

「お父さん、怖い人なの?」

「……怒ると、角が生えるんです」

 それは怖いな。多分、牛の化身なのだろう。

「せっかくもらったのに、なくしちゃったりして……」

「大丈夫だよ」

「…………?」

 根拠のないことを言いました。僕は嘘つきです。嘘は得意です。嘘は人を救います。嘘は人を動かします。嘘は偉大です。嘘万歳。

「お父さんも、そんなことで怒ったりしないよ。……断言はできないけど。少なくとも、僕がお父さんだったら、そんなことで怒ったりはしないな」

 嘘は得意なんです。

「そうですか……。そうです、よね」

 嘘は――得意なんです。


「わたし……男の人と相合い傘するの、夢だったんです」


 おぅ、また唐突に話題が飛んだなあ。

「そう……なの?」

 相合い傘なんてレトロな趣味を持ち合わせてるの、僕だけだと思ってたけど。

「雨は嫌いだけど……距離を縮められると思ったら、それもアリかなと思ったり……」

 アリですか。

 見上げる梢と、久しぶりに目が合う。

「このこと、今日の日記に書きますね」

 その目には、何が映っているのだろう。

 僕の姿は、ちゃんと映っているのだろうか。

 物理的な距離は近いのだけれども――周囲を雨垂れに囲まれて、濡れないようにとお互いに躰を寄せ合って――果たして、精神的な距離は如何ほど近付いたと言うのか。

 ……そもそも、今の発言の真意は、どこにあるのだろう。

 男性と相合い傘をするのが夢だったと、彼女は言う。

 だったら、その夢は叶ったのだろうか。

 こんな僕と、大きな傘の下、互いの体温が感じられる程に身を寄せ合って――彼女は、僕を肯定してくれたのか。

 僕を――受け入れてくれたのか。

 思わぬ趣味嗜好の一致に、人知れず舞い上がる僕。嘘八百並べて人を動かした成果があったということだろうか。

 こんなにも近くにいて、

 こんなにも近くに感じて。

 それだけで満足の筈なのに。

 それだけで満足の筈だったのに。

 今さらながらに彼女の存在を意識して、僅かに筋肉が強張る。昔からそうだ。どうやら、僕には女性恐怖症の気があるらしく――話すのは平気なのに、物理的に近付いたり触れたりすると、躰が固まり、変な汗が流れる。何でだろう。何で、僕はこんな風になってしまったんだろう。


「話戻るんだけど……梢ちゃんはさ、他に心配することがあるんじゃないのかな?」

「……センパイたちのこと、ですか」

『イジメ』のこと、とは言わない。それが優しさのせいなのか、プライドのせいなのか、それとも臆病のせいなのかは、僕には分からない。

「そうじゃなくて――末永のこと……聞いたことない?」

「……マネージャーの人と、別れたっていう話デスか……?」

 顔を俯けたまま、彼女は静かに呟く。

「その後のことは、知ってる?」

「……噂では……わたしのことを……」

 へえ。適当に流した噂だったのに、けっこうな伝播力だね。まさか当事者二人の耳に入っていたとは。

「……でも結局、別の人と付き合うことになったんですよね……。クラスの友達から聞いたんですけど」

 末永、お前一年生女子の噂になっているらしいぞ。ちょっとした有名人だね。十中八九、悪い噂だろうけど。

「でも正直なところさ、梢ちゃんとしてはどうなの? あまり話もしたことないだろうけど、アイツのこと、どう思う?」

「……なんか、怖いです……。ああいう、いかにも遊んでる風な人は、ちょっと……」

 末永、お前告白もしてないのに振られたっぽいぞ? 梢ちゃんは派手な人間が苦手なんだそうだ。

「――でも、気を付けた方がいいよ」

「……え?」


「アイツ、まだ梢ちゃんのこと……諦めてないみたいだから」


「えぇ!?」

 傘の紛失からずっと塞いでいた彼女が、ひどく久しぶりに大きな声をあげる。その声には驚愕と恐怖、そしてほんの少しの嫌悪が含まれていて。

 ――末永、お前……けっこう嫌われてるっぽいぞ? 

 ざまあみろ。

「でも、だって、わたし……あの人のことなんて何とも思ってないし、と言うかそもそもあんな噂がたったこと自体謎なのに……。なにもわたしみたいな、ちんちくりんな女相手にしなくても――って、あれ? 新しい彼女できたんですよね? それなのに何で? 何でわたし?」

 おー、混乱してる混乱してる。カワイイなあ。

「……梢ちゃん。あの男相手に常識は通用しないんだよ。残念ながら。新しく彼女ができたとか、どういったタイプが好みなのかとか、そーゆーの、全然関係ないんだよアイツは。一度狙ったら諦めないの、絶対に」

「えー……」

「肉食獣だからね」

「えぇー……」

 本人がいないところで奴の人格を木っ端微塵にしている気がするけど、事実だからしょうがない。

「だから――今梢ちゃんが本当に心配しなきゃいけないのは、末永の動向だよ。アイツだけは、何をしでかすか分からないからね」

「……えー」

「ついでに言えば、橘にも気をつけた方がいいかもしれない」

「マネージャーの人ですか?」

「そう、橘あずさ。正確には、元マネージャーだね。もうずいぶん前から練習には出てないし。アイツ……練習来なくなるちょっと前に末永と別れたんだけど、何でか、自分が振られたの、梢ちゃんのせいだと思ってるみたいなんだよね。アイツもちょっと思い込みの激しいところがあるから……もしかしたら、腹いせに梢ちゃんを傷つける行動にでるかもしれない」

「……えー」

 さっきからドン引きだな。ほとんど『えー』しか言ってないよ?

「……わたし、どうしたらいいんですか?」

「逃げるしかないだろうね。末永にしろ橘にしろ、まともに相手するだけ危険だよ。どういうコンタクトの取り方してくるか分かんないけど、できるだけ避けた方がいい」

「……そうですね」

 蚊の鳴くような声で、それだけ呟く彼女。ずいぶんと、追い詰められてる。

「もしよければ――僕のこと、もっと頼ってくれないかな」

「……え?」

「前にも言ったでしょう。辛い時には、支えてくれる人が必要だ。梢ちゃん、今物凄く辛い時期だと思うし……そんなの間近で見ていて平気でいられる程、僕の神経も図太くないんだよ」

「…………」

 傷つけられて、痛めつけられて、追い詰められて――彼女の声に、僕の声はどう響いているんだろう。僕は彼女を救うことができるんだろうか。僕の側に置いて、そのまま繋ぎ止めておくことが出来るのだろうか。

「僕は、味方だから」

「……ありがとうございます」

 梢の声はとても小さく、傘の布地を打ち付ける雨の音に打ち消されてしまいそうだった。



 雨足はずいぶんと大人しくなっていた。先程までの雨弾幕は本当に凄まじく、傘で防がなければ数秒で濡れ鼠になってしまう程だった。それが今では、数十秒くらいなら耐えられるシトシト降りにまで、レベルを落としていた。かと言って、もちろん傘を手放す気にはならない。弱いと言ってもまだ雨は降り続けているのだし――梢との距離を縮めるチャンスを、自ら逃す手などないのだし。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

 もうすぐ駅に着いてしまう。もうすぐ、相合い傘が終わってしまう。なのに。それなのに。シナリオに描いた台詞を消化してしまうや否や、紡ぎ出す台詞を失ってしまう。アドリブには定評がある筈だったのに。いつも、適当な台詞ばかり垂れ流しているくせに。肝心な時に場を和ませる台詞一つ口にできないってどうだろう。

 せっかくのチャンスなのに。

 梢との距離を縮める、またとないチャンスなのに。

 自らの目的のために、(いたずら)に彼女に警告を与えて、引かせて驚かせて怯えさせて――彼女にダメージを与えることが目的ではないのに。追い詰めることが本意ではない――筈なのに。

「――梢ちゃんは」

 意識せず、口が開く。


「死のうと思ったこと、ある?」


 沈黙を恐れての発言は、恐らくその場で展開するには最も適さない、話題としては最悪なモノだった筈で。

 阿呆か僕は。

 何を聞いてンだ。

 確かに――遺書を発見して、自殺志願者を見つけ出さなくてはならなくて、そのために町田梢という少女に接触した――そういうポーズを、僕はとっている。だけど、遺書は僕が捏造したモノだし、彼女とこうして相合い傘で帰途に着いているのも、僕がそうしたかったからだ。そこにあるのは純然とした欲望だけで、自らの掲げた大義名分など何の意味もなさない。こんな質問、いよいよ彼女を追い詰めるだけなのに……。

 第一――死にたくない人間など――死のうと思ったことのない人間など、この世に存在するのだろうか。

 意識するしない、言う言わないの差はあれども、死にたいとか、消えたいとか、逃げたいとか――そう思わない人間がいる筈がない。生きていくのは辛いし、怖いし、恥ずかしい。

 人間は生まれてきたことが罪で、その罪は、生き続けることで(あがな)うしかない。誰が罪人だとか咎人(とがびと)だとか追及する以前に、人は皆、『生まれてきた』という『罪』を背負って生きている。

『生きていく』ってことは――『罰』なのだ。

 そこから逃げ出したくなるのは当然で、僕の質問など愚問以前の、何の意味もなさないモノだったのだけれど――


「それはないデス」


 彼女は俯きながらも、それをきっぱりと否定して。

「確かに、今は辛いことも色々あって、よく分かンないことばっかりデスけど……」

 混乱と恐怖と不安と驚愕と、短期間で降りかかった災難で相当に追い詰められている筈の彼女は、意外な程に強い口調でそう前置きした後、

「自殺しようと思ったことはないです」

 そう断言する。

「――強いな、梢ちゃんは」

 これは台詞でも計算でもなく、素で出てきた言葉。

「わたしは弱いデスよ」

 半ば自嘲を込めたような口調で、彼女が呟く。

「今は……支えがあるから、何とかなっているんデス。……正直、ここ何日かは本当にしんどかったんですけど……だけど……わたしは、一人じゃないから」

 相変わらず、俯いたままだけれども。

 その声音は弱々しく、今にも壊れてしまいそうだけれども。

 何だか――無性に羨ましい。

 イジめられても、追い詰められても、負けないだけの強さを彼女は持っている。『支え』があるから、『一人じゃない』から、彼女は『何とかなっている』と言う。

 僕のこと――なんだろうか。

『支えになる』と、『味方だ』と、練習後の体育器具庫で――そしてついさっきも――僕は彼女に、そう告げた。少なくとも彼女はその台詞でいくらかは救われた筈で――なのに、梢の視線は、一貫して斜め下四十五度に固定されている。こんなにも近くにいるのに、一向に僕に目が向くことはない。

 信用していいのか?

 安心して――いいのか?

 僕は本当に彼女の心に近付けているんだろうか。僕を肯定してくれていると受け取っていいのだろうか。僕は、僕は、僕は――


「あ、王子(おうじ)ー」

 梢の声で我に返る。見ると、梢がいつの間にか路肩に移動してしゃがみ込んでいる。ついさっきまで僕の隣にいたのに。その俊敏さは、他の所で活かすべきだ。

「え? 何、どうしたの?」

「どうしたのおまえー、びしょ濡れじゃないのー」

 甘えた声で、目の前の何かに喋りかけている。僕の言葉が無視されたことは、今さらどうとも思わないけど。

「……あ、猫?」

 傍らから覗き込むと、どうやらそれは、小さな子猫のようだった。泥で汚れているけど、元は白かっただろうその体を、梢は愛おしそうに撫でている。対する猫も気持ちよさそうにしているところを見ると、だいぶ梢に懐いているみたいだ。

「首輪はしてないみたいだけど……野良?」

「ハイ。ちょっと前に、残したパンあげたら、それ以来懐かれちゃってー。王子、ゴメンねー。今日は何もあげるモノないんだー」

 甘ったれた声を出しながら、今日初めての笑顔を見せる梢。……いや、今日どころか、数日ぶりの笑顔かもしれない。最後にこの娘が笑ったのを見たの、いつだったっけ?

 沈みかける気持ちを振り払うように、僕は質問を続ける。

「『王子』って、その猫の名前?」

「ハイ」

「何で『王子』?」

「王子駅の近くにいたんで」

「……梢ちゃんが命名したのか」

「へへ、だって、名無しじゃ可哀想だし」

 というか、そのネーミングはどうかと思うよ。ちょっと場所が違ったら、『東十条』とか『上中里』になっていた訳か。そんな名前の猫は、ちょっと嫌だ。

『王子』と名付けられたこの猫、梢に撫でられた喉を気持ちよさそうに鳴らしている。

「へぇ、カワイイね……」

 と、僕が近付こうとするや否や、身をピクリと反応させ、驚くべき速度で逃げ出してしまう猫王子。

「…………」

 あー、いるよね。敵意もないのに動物に懐かれない人――ハイ、僕のことですね。すみません。


「……駅、着きましたネ」

 

 暗くてよく分からなかったけど、僕たちはすでに駅前に到着していたらしい。雨はすでにやんでいる。梢は別れしなにぺこりと頭を下げ、とっとと改札に向かってしまった。

 ――僕は、こんなことがしたかったのか。

 確かに、これは最終目的ではないのだけれども。目的に向かう間の、ちょっとしたイベントに過ぎないのだけれども。

 何だか――とても――痛い。

 血は出ない。いつものように、やるせなさに抉られた訳でも、苛立ちに刺された訳でも、己の無能さに斬られた訳でもない。多分違う。なのに痛い。例えれば――それは鈍痛に似ている。明確な理由は分からないけれど、負傷箇所も治癒法も分からないけれども、何だかジクジクと疼くのだ。……内出血を起こしているのかもしれない。

 結局、血は出ているのだ。

 駅前の道、下を向きながら歩く。その道すがら、路上駐輪してある自転車とぶつかる。いつも、僕が蹴り倒しているヤツだ。いつもは、その苛立ちを全力でぶつけていたのだけれど……今日はそれだけの元気もなくて。力なく、押し倒した。

 がっしゃあああん。

 雨上がりの駅前に虚ろな金属音が響く。中途半端な倒し方をしたのがいけなかったのか、倒れた勢いでライトが壊れてしまった。別にどうでもいい。興味ない。

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