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五章 唐突な戦闘パート

 第五話


 そして月日は流れ、親父がこの町に来た。

 とは言っても、別に月日が勝手に流れたと言う訳では無い。

 一日二十四時間が通常通りに経過し、その一日一日が積み重なり、今に至った。

 今日は中間テスト初日。

 だが今の俺は、学校に行かず、親父が居ると言う廃墟に向かっていた。

 学校への連絡はとっくにすませてある。

 徹夜のしすぎで疲れてダウン、と言っておいた。

 この時期なら疑われ無さそうな嘘、と言う事でこの理由を選んだ。

 あああああはあああああで別の理由を考えていたが。

 後、何だかんだで姉は来ないらしい。

 冷静になって考えた結果、テストをサボるのは嫌だったらしい。

 内申がどうとか言ってた(電話で)。

 テストを受けない事で落ちる成績に関心は無いのかよ。

 ……まぁ良いや。

「あの人と戦うって……、ムムムに勝ち目あるの?」

 隣に居るあああああがそう言った。

「無い」

 まるで全然無い。

 そんな物があったら、俺はとっくに実践している。

 親父が街に来るのなんて待たないで、だ。

「大体、これからラスボス戦だってのに、ムムムは何も装備してないのね」

「……何を装備しろと?」

 ひのきの棒と鍋の蓋とかなら装備出来ない事も無いが。

「トリシ「待て」」

 俺はあああああの口を手で押さえた。

「ふぁひふんほほ!」

 何すんのよ、とでも言ったのだろ。合否は知らん。

 俺は口から手を離した。

「何処の世界に、そんなアイテム持ってる高校生が居るんだよ」

 一気に三つも都市を破壊するのかよ。俺。

 巻き添えになる奴の身になってみろ。

「私の世界には居ない事も無いけど?」

 ……そうだった。

 コイツの世界(つまり二次元)には、そんな輩が結構居る。

 って言うか、二次元の人物達って、どうしてあんなに幻のアイテム持ってるんだ?

 実はパチモンだったりするんじゃないか?

 伝説のバーゲンセール、ってか。

「だったら無難な所でエクスカ「待て」」

 またもや、俺はあああああの口に手を当てていた。

 何処が無難なのかさっぱり分からなかった。

 確かに、さっきのアイテムよりは知名度が高いかもしれない。

 だからって、三次元に住む俺に、やたらと伝説のアイテムを持たせようとするな。

 使いこなせないで魂吸われる未来しか見えないから。

 所詮、俺は噛ませ犬。永遠の……何番手だ?

「……七番手じゃない?」

「何故今俺の心を読む必要があった! って言うか、何だその微妙な番号!」

 何人居る中の七番手なのだろう。

 七人中の七番手で無い事を祈る。


 で、だ。

 こんな感じに駄弁りながら歩いていたら、俺達は廃墟前に到着した。

 入り口には『KEEP OUT』とか何とか書かれたテープが貼ってあった。

 元からあった物なのか、誰かが悪戯で貼った物かは分からない。

 が。

「無視無視」

「だな」

 あああああも俺も、そんな警告を無視して廃墟に入った。

「決着が付いた後、脱出する間も無く建物が崩壊する、なんて無いよね?」

「そんな鬱ゲーみたいな展開、あってたまるか!」

 やっぱり引き返したくなってきた。

 引き返さないけど。

 と言うか、引き返せないけど(あああああが俺の腕を掴んでいるから、だ)。

「あ、そうだ」

「?」

 いざ廃墟の中に入ろう、と言った所で、あああああが歩みを止めた。

「ちょっと渡しておきたい物があるんだけど」

「え?」


「やっと来たか」

 本来なら、建物の二階に立っている人は、一階に立っている人を見る事が出来ない。

 が、この廃墟は、天井や壁が所々崩壊している。

 何故取り壊されずに残っているかが分からないレベルだ。

 その為、その男は、二階から俺を見下ろしていた。

 実年齢はそこそこ若いのに、見た目はけっこう老けている。

 そんな紹介文がピッタリな、俺の親父。

 夢霧村正宗が、そこに仁王立ちしていた。

「何でわざわざテスト期間中に呼び出すのかね」

 俺は溜息混じりに親父に文句を言った。

 大声を出さなくても、俺の声は親父に届いた様だ。

 親父は、漫画なんかに出てくる敵キャラみたいに、高笑いをした。

「私がお前の都合なんて気にする訳が無いだろう?」

「言うと思った」

 親父は、俺の都合なんて考えた例が無い。

 唯我独尊を地で行く男だ。俺の親父は。

 と言うか、俺の家族は全員そうだ。

「大体、お前らが私の行く先に立ち塞がっているだけだろう? 私はお前らを呼んだ覚えは無い」

 自己中心的な奴だな。俺の親父。

「……なら、何で姉貴に手紙送ったんだよ」

 正直、イラっと来た。

 だから、親父の矛盾を突いておいた。

「……で、お前の後ろに居るのが愛川綾香か?」

「え?」

 スルーかよ。

 いや、そこじゃない。

 まながわ、あやか?

「……あぁ。お前の本名ってそんなだったっけ」

「忘れないでよ!」

 ずっとあああああって呼んでたから忘れてた。

 そう言えば初めて会った時、コイツは自分の事をそんな名前で呼んでいた気がする。

「フン。……随分とこっちの世界に慣れてきた様だな」

 親父はあああああに視線を移すと、興味深そうにそう言った。

 まぁ、『興味深そうに』とは言っても、常人には分からない位の差だが。

 仮にも俺は親父の息子だ。声の中の若干の差は読める。

「……まぁ良いや。俺は親父に聞きたい事があってここに来たんだし」

「ほう?」

 親父はそう呟くと、二階の穴から一階に飛び降りた。

 足の骨が折れている様子は無い。

 もしこれで足が折れてたら不恰好以外の何物でも無いが。

「聞きたい事、か。手短に言「親父があああああを造った理由」」

 要望通り、手短に言ってやった。

 他にも色々と聞きたい事はあるが、それは後回しで良いや。

「人の話は最後まで聞け。……で、愛川綾香を作った理由、か」

 説明してないのに、親父は『あああああ=愛川綾香』を理解したらしい。

 まぁ、この話の流れで推測出来たんだろうが。

「そんな事は前も言った筈だが? 何度も『二次元の人物を三次元に召喚する』事だと」

 想定通りの回答をしてきやがった。

「それは本当か? ……いや、理由はそれだけか?」

 だから、俺は言ってやった。

 今の俺だから言えた台詞だ。

「……成る程。お前の相棒から《主人公補正》を借りた、と言う事か」

 流石は開発者、とでも言うべきなんだろうか。

 あっさりと見抜きやがった。

「所有者が認めた奴が相手なら、一定時間《主人公補正》は譲渡出来る。そしてその力で回答を盗んだ、と言う所か」

 やっぱりバレた。

 まぁ、開発者が想定していないバグ、なんてそんなに沢山は無いか。

 思えば《主人公補正》を簡単に貸せる、って言う事事態がご都合主義の塊だよなぁ。

「……綾香から聞いたか?」

「い「いや? 私が強引に押し付けた」が?」

 口を挟んだのはあああああだった。

 この場に他に誰も居ないんだから、他の奴だったら怖すぎるんだが。

「強引に、だと?」

 疑う様な目つきで、親父はあああああを見た。


「ちょっと渡しておきたい物があるんだけど」

「え?」

 渡しておきたい物?

「はい。これ」

 あああああはそう言い、俺に腕時計を渡してきた。

 あああああが二次元から出てきた時から、ずっと右腕に巻かれていた腕時計が。

「腕時計じゃなくても良いんだけど、私の持ち物を何か渡さないといけないからさ」

 俺はその腕時計を眺めた。

 文字盤には数字では無く、ローマ数字が刻まれている。

 一をⅠ、五をⅤ、十をⅩと表すアレだ。

 何と言うか、デザインが全体的に英国っぽい。

 英国って言っても、今の英国では無くて、大昔の英国とでも言えば良いのか。

 名探偵がパイプで煙草吸ってそうな感じの。

 そんな感じの腕時計だった。

「その時計の針が動いている間は、《主人公補正》を使える筈だから」

 あああああはそう言うと、廃墟に向かって再び歩き出した。

「……」

 俺はその後を追った。

 腕時計を右腕に巻いて。


「随分と信頼されたものだな」

「この場で私が持ってても意味無いしね」

 まぁ、確かに。

 こんな親子喧嘩に、あああああが参加する意味は無いのかもしれない。

 あああああが知りたいのは、自分が作られた理由とかしか無いだろうし。

「研究を始めた時期を考えれば分かるだろう?」

「……まぁ、だろうな」

 親父の放浪(またの名を研究)の開始から約二年。

 俺のゲームへ拘りを抱く様になったのも大体二年前。

 その原因は、とある一人のクラスメイトの女子。

 なら。

「やっぱり赤沙あかさ、か」

 俺はそう呟き、親父は鼻を鳴らし、あああああは頭上に疑問符を浮かべた。

 赤沙。本名、赤沙多奈あかさ たな

 俺が中学一年生の時に同じクラスに居た女子。

 俺が中学一年生の時に同じクラスで学級委員をやっていた女子。

 そして、俺が変わる事になった理由。

「あの時のお前は少々塞ぎ込んでいたからな。元気付けようと思っただけだ」

 親父は淡々と、そう言った。

 ……本当に、それだけだとしたら。

「あああああの本名は、何で俺の母親の旧姓と同じ名前なんだ?」

 親父が、固まった。

 あああああの本名を聞いた時に一瞬感じた違和感。

 この前姉が家に来た時、聞いてもいないのに姉が語ってきた。

 俺の母親の旧姓は、愛川綾香だと。

「……まぁ、《主人公補正》持ちに嘘を貫き通すのは無理か。譲渡時間切れを狙うのも無理だろうしな」

 直接は否定されなかった。

 だが、否定したのも同然だろう。

「私が、ムムムのお母さんと、同じ名前……?」

 あああああも知らなかったのか。

夢霧村綾香むむむら あやか……、旧姓愛川綾香は、現在行方不明だ」

 親父は言い放った。

 あああああの台詞をも無視して。

「ま、連絡の一つも無いしな」

「……豪く冷静なんだな。正加」

 親父がそう呟いた。

「家に居ないんなら、何処に居ても大して変わらないしな」

 我ながら、冷めたコメントをしたとは思う。

 でも実際、俺が一番大変だった時に、母親は家に居なかった。

 その時点で、別に俺は母親に愛着なんて抱いていない。

「……で、親父は妻が居なくなったから研究を始めたのか?」

 親父の体が、一瞬、震えた。

 最初の理由は、俺が塞ぎこんだ事かもしれない。

 が、途中で理由がブレた。

 俺の母親が行方不明になったり。

 偶然か運命かは知らんが《主人公補正》なんて物を開発してしまったり。

 親父の中で『どれが最初の理由か』が既に分からなくなっている。

 多分、そんな所だろ。

「どう言う意味だ?」

 その声に、今までの様な余裕は混じっていなかった。

 入っているのは、怒。

 このまま俺が言葉を続けていたら、間違い無く攻撃されるだろう。

「『俺を励ます』と言う名目で『居なくなった妻の代用品』を造ろうとしたのか?」

 だから、続けた。

 真実がどうかは分からない。

 だけど、こう言えば、親父は感情的になる。

 だから、続けた。

「黙れ!」

 親父はそう叫び、落ちていた瓦礫を一つ、投げつけてきた。

「「!」」

 てっきり殴りに来ると思っていた。

 まさか遠距離攻撃をしてくるとは。

「くッ!」

 速い。

 自分も瓦礫を投げて相殺する、なんて華麗な真似は俺には出来ない。

 出来たとしても、既に遅すぎる。

 だから俺は横に跳んで、瓦礫を避けた。

 あああああは、俺を置いてとっくに遠くに逃げていた。俺の視界の範囲内には居る。

 背後で、瓦礫と瓦礫が衝突し、砕ける音がした。

「あっぶね……」

 って言うか、何で都合良く瓦礫が落ちていたんだ?

 丁度親父がキレた時に、丁度親父の近くに、丁度親父が投げやすいサイズの瓦礫が落ちていた。

「……まさか、親父「あぁ」」

 親父が、俺の呟きに返事をした。

 まるで、俺の言いたい事が分かっているかの様に。

 実際、分かってるんだろうけど。

「「「《主人公補正》の力」」」

 三人が全く同じタイミングで言った。

 ……あああああって、《主人公補正》を抜きにしても勘と耳が良いらしいな。

 今知った。

「譲渡では無く、オリジナルを人体にインストールするのはかなり面倒だったがな。体力の関係でオン・オフを切り替えないといけない、と言う弱点も存在するのが面倒だ」

 あああああの、『愛川綾香』の開発者は、この親父。

 なら『愛川綾香』に搭載されているシステムを自分の為に使ってもおかしくは無い。

 ……のか?

「え、じゃ、じゃあ、親父……」

 まさか、この親父は……。

「自分が主人公だ、とか言ってるのか?」

 そう考えると、痛いにも程がある。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!

 いや、どちらかと言えば『痛い』じゃなくて『イタい』だな。

 こんなのが俺の親父なの? 何それ恥ずかしい!

「……今のお前が言うのか?」

 至極冷静に言われた。

 確かに、今の俺にも《主人公補正》の力が働いている。

 なら、今の俺も主人公と言えるだろう。

 でも。

「俺はあああああに《主人公補正》を押し付けられただけだし。自分でプログラム作って自分にインストールした親父とは違うだろ」

 俺が進んで《主人公補正》を使っている訳じゃ無いんだし、俺はそこまでイタい奴じゃ無いだろう。

 ……にしても、あああああは親父が《主人公補正》を使う事も見越していたのか。

 俺の人生はバトル漫画なんかじゃないんだ。

 なのに、あああああはこう言う展開になる事まで読んでやがった。

 あれか? あれなのか?

 あああああが俺に《主人公補正》を譲渡しようとした時は、まだあああああが《主人公補正》を持っていたからか?

 って事はアレか? この《主人公補正》って、未来でも見えるのか?

 最早主人公補正って言うよりご都合主義だな。

「……父親として、息子に説教する権利位はあるよな?」

 親父がまたもや瓦礫を拾い上げながら言った。

「この国では、親が子を説教する時には瓦礫を投げるのか?」

 そんな国は是非とも遠慮したい。

「体罰、と言うのも時には必要だろう」

 体罰って今は禁止なんじゃなかったっけ?

 禁止なのは学校だけだっけ?

 まぁ良いや。

「……だったら、その体罰を耐えた暁には、もう一つある『聞きたい事』にでも答えて貰おうか、なぁ!」

 もしかしたら、俺の《主人公補正》が切れかかってるのかも知れない。

 その理由は簡単だ。

 漫画とかでよくある『誰かが喋っている最中は攻撃されない』が働かなかったからだ。

 人が喋ってる最中はちゃんと話を聞けよ。

 お陰で、台詞の最後の方を叫びながら言う羽目になってしまった。

 瓦礫で弾幕貼られた気分だ。

「……うっかり当たったら致命傷じゃね?」

 って言うか、瓦礫投げる腕力自体は《主人公補正》の能力じゃ無いんだろ?

 あれ? 俺の親父、何者だ?

「……?」

 かと思ったら、突然弾幕が途切れた。

 背後からは瓦礫同士が砕けあう轟音が響いていた。

 耳を塞ぎながら親父の方を見ると、既に親父の周りに瓦礫は無い。

 ……鉄骨が何本か落ちているが。

 繰り返そう。

 物凄く重そうな鉄骨が。

 親父の近くに何本か。

 落ちていた。

「ま、まさか、親父……?」

「言わなくても分かるよな?」

 即答された。

 ……うん。

 分かっている。

「さって、と!」

 親父はそんな掛け声と共に、地面に突き刺さった鉄骨を引き抜いた。

 触るだけで手から血の匂いが漂いそうな程、サビている鉄骨を。

 所々塗装が剥げた痕跡を残す、太い鉄骨を。

 何故この親父は『さって、と!』なんて軽い掛け声だけで持ち上げられたのだろうか。

 引越し作業中に荷物の入ったダンボールを持ち上げるサラリーマンな父親かよ。

 そんなほのぼのとした光景じゃない。

「そうだ!」

 切れかかっている、とは言え、俺にも《主人公補正》が働いている。

 って事は、俺の周りにも何か使える物が落ちているん……。

「……じゃ?」

 さっき俺を殺そうとした(元)瓦礫が大量にあった。

 後は、親父が持っている物よりも明らかにデカい鉄骨が一本。

「アレか? 俺は主人公なんて器じゃない、とか言う神からのメッセージか?」

 半ば叫びながら文句を言った。

 誰に言った文句なのかは分からない。

 強いて言うなら『世界』?

 やだ今の一文、なんかイタい。

「準備は良いか?」

 さっきの俺の心の中の文句を理解してくれたのか、俺が武器を捜索している間は攻撃しないで待っていてくれた。

 融通が利かない《主人公補正》だなぁオイ。

 待ってくれたのは良いんだが、武器になりそうな物が皆無だ。

 持てそうな物は石礫しか落ちていない。

 鉄骨の前にはゴミでしか無いだろう。

 ……あ。

 そうだ。

「あああああ! お前、確か『二次元から三次元に持ってこれた能力が幾つかある』とか言ってたよな?」

 この前の親睦会に行く途中、駅で言っていた気がする。

 あんな言い方をした以上、《主人公補正》以外にも使える能力がある筈だ。

「一応あるけど……。どれもこれも使った事無いし使い方も分からないし。……って言うか、分かるのは『システムがある』ってだけでシステムの名前すら分からないし」

 Byあああああ。

 ……畜生。駄目だったか。

「うおぉぉおおぉぉおぉぉぉぉおおおぉぉおおぉおおオオォオォォォォォォオォォッ!」

 親父が走り出した。

 恐怖、以外の何物でも無い。

 鉄骨持った人間が疾走しながら近付いてくる。

「うわぁぁああぁぁあぁぁぁぁあああぁぁああぁああアアァアァァァァァァアァァッ!」

 俺は積み重なった鉄骨やら瓦礫やら階段(だった物)を駆け上った。

 流石にあの親父でも、鉄骨を持って駆け上るのは無理だろう。

 ……なんて考えながら駆け上っていたら、気付いたら二階フロアに到達していた。

 辺りに転がっている物は一階と大体同じ。

 ここなら、俺が投げられて武器に出来そうなサイズの瓦礫が沢山ある。

 ブンッ。

「『ブンッ』?」

 俺が異音のした方を見ると、そこには。

「……え?」

 こっちに向かって、回転しながら飛んで来る鉄骨があった。

 その下には、鉄骨を投げたポーズのままの親父が居た。

 ……あああああは今、何をしているんだ?

「とか何とか考えてる場合じゃねぇぇぇええぇぇえぇぇぇぇぇええぇぇぇえええぇえ!」

 急いで三階に行こうとしている俺を無視して、鉄骨は二階の床、言い方を変えれば一階の天井に、衝突した。

 轟音が轟いた。

 さっきの瓦礫同士の衝突音なんて、比じゃない。

 耳鳴りがするレベルの轟音が、響いた。

「うわぁあああぁぁあぁあああぁぁぁぁああぁぁああぁぁあああぁぁああぁぁああっ?」

 二階の床(及び一階の天井)に衝突した鉄骨は、重力によって一階床に転落。

 二階の床(及び一階の天井)には罅が入り、罅が広がり、崩壊した。

 元々崩壊が酷かった二階が更に崩壊し、俺もそれに巻き込まれた。

 つまり、二階の床(及び一階の天井)が落下した。

 勿論、二階の床(及び一階の天井)の上に居た人物も落下する事になる。

 分かりやすく言えば、俺は二階から一階に向けて落下した。

「……俺、何回『及び一階の天井』って言ったんだ……?」

 何て、どうでも良い事を呟きながら、落下した。

 そして、もうすぐ背中から一階床に衝突する、と言う所で。

 俺が死の覚悟をしかけた所で。

 ポヨン。

 と。

 下にあったトランポリンが俺を受け止めた。

「「……は?」」

 周りからは二階の床(だった物)が一階床に衝突する音が聞こえた。

 ……だけど、何でだ?

 まぁ、俺の下にトランポリンがあったのは《主人公補正》の力なんだろうが、この廃墟にある訳が無い物を用意する事までは出来ないだろう。

 アレか? あああああがどっかから運んできたのか?

「ま、良いか」

 今ソレを考えてたら、うっかり俺が死にそうだ。

 何処までが《主人公補正》の力なのか、なんて、考えても分からない。

 さっき投げられた鉄骨は二階の床(だった物)の下敷きになってて使えない。

 が、俺はもう二階に逃げる事が出来ない。

 だってそうだろう。

 その行くべき二階は既に半壊、と言うかほぼ全壊しているんだから。

「さて、次はどれで息子を攻撃しようかな」

「父親にあるまじき発言だなオイ!」

 ついツッコんでしまった。

 そんな事をしている暇なんて無い事は、言った後に思い出した。

「よれそ、っと!」

 親父がそう叫びながら投げたのは、二本目の鉄骨。

 さっきの物より短い。

 が、さっきの物より重そう(に見える)。

「うわぁあ!」

 反射的に横に跳んだら、鉄骨は俺の横を通過して壁に激突した。

 壁に穴が出来た。

「……親父には穏便に話し合う気は無いのか?」

 俺は背中に嫌な汗を感じながら言った。

「教育的指導だ」

「さっきと言ってる事違うじゃねぇか……」

 体罰がどうとか言ってなかったっけ? 気のせい?

「貴様が弱いからこそ、指導が必要なのだよ」

 親父は聞いてもいない事を勝手に喋り。

「親父も超えられない様な貧弱者だからこそ、貴様はあの程度の攻撃に屈したのだろう」

 血が上った。

「ッ!」

 そして俺は怒りに任せ、近くに落ちていたバールを投げた。

 回転しながら親父に向かって飛んでいくバール。

「邪魔だ」

 だがそのバールも、親父が振った瓦礫とぶつかり、地面に落ちた。

「さっき天井が崩壊したからな。……投げる瓦礫が増えた」

 嗜虐的な笑みをうっすらと浮かべながら、親父は言った。

「そんな事はッ!」

 俺は近くに落ちていた瓦礫を投げた。

 フリスビーでも投げる様な要領で。

「!」

 親父が俺の投げた瓦礫を避けた。

 何で瓦礫で相殺しなかったのかは知らない。

「良いから謝りやがれ!」

 が、俺はその隙を使って駆けた。

 俺の本来の目的は『親父を一発殴る』。

 ちょっとの隙があればソレ位は出来る。

 筈だ。

 筈だった。

「何を、だ?」

 俺の拳が親父に当たる前に、親父の拳が俺に当たった。

 それだけで、俺は派手に吹っ飛び、地面に転がった。

「痛っ……」

 瓦礫の破片が刺さったりはしてない。

 相変わらず、中途半端な《主人公補正》だ。

「俺を、アイツを侮辱した事を、だ……」

 俺は立ち上がりながら言葉を続ける。

「子供が何に苦しみ、何に悲しむか!」

 全身を痛みが走る。

「それが分からねぇ親が、偉そうに教育的指導とか言ってんじゃねぇよ!」

 それが地面に叩きつけられた痛みなのか、殴られた痛みなのか。

「俺を励ます為、だ? そんな偽善臭い建前が無ければ満足に研究も出来ない奴に!」

 それとも、親父に敵わない心の痛みなのか。

「名前だろうが生き方だろうが考え方だろうが、人それぞれ違う物だ!」

 それとも、こんな弱さを親に叩きつけている心の痛みなのか。

 それは分からない。

「その違いを認めずに、自分の価値観でしか人を見れない!」

 でも。

「そんな奴に、親の資格があるのかよ!」

 その時。

 唐突に。

《D》

「へ?」

 何か聞こえた気がした。

「……あああああか?」

 辺りを見渡すが、親父以外には誰も居ない。

 つまり、あああああも居ない。

「? 先程までの剣幕は何処へ行った?」

 って言うか、近所の人達は何とも思わないのか?

 こんなに廃墟が崩壊してるって言うのに。

《e》

 また聞こえた。

「親父? さっきから何ブツブツ言ってんだ?」

「……? 私は何も言って無いが?」

 え?

「……怖い事言うなよ」

「唐突に怒鳴ったかと思えば、次は戯言か」

 確かに。

 俺が一通り怒鳴り終えたと思ったら、今の台詞が聞こえてきた。

 怒りが一週回って幻聴まで聞いてしまったのか?

「お前の言い分は分かった。至らないと所もあったのだろう」

 取り敢えず、ここは一度怒りを抑えて幻聴の原因を考えるべきなのかもしれない。

「だが、ここは」

 あああああでも親父でも無いとすると、原因は誰なのだろう。

「敗者が勝者の言い分に従う、が定番だろう!」

 とか何とか平常通りのモノローグを流し始めてすぐ。

 ぶんっ、と。

 さっきまでと比べたら比較的小さい、それでも十分大きい瓦礫を幾つか投げる親父。

「いやそんな定番要らねぇよ!」

 だが、これは余裕を持って避けられる。

 実際問題、避けられた。

「お前の話の後に言うの難だが……、子の言う事を何でもかんでも聞くのが親では無い」

 が、俺には決定打が無い。

 瓦礫を投げても、直接殴ろうとしても、攻撃が届かない。

 一応《主人公補正》もあるが、攻撃用の能力じゃ無いっぽいし。

 つまり、攻撃を避け続けても、勝ち目は無い。

《u》

 またか。

 幻聴で無いのだとしたら、さっき殴られた時に俺は頭がどうにかなったんだろうか。

 それとも、既に廃墟の外に野次馬が居るか。

 まぁ、後者は無いだろう。勘だが。

 ここで野次馬を呼ぶ程《主人公補正》も馬鹿じゃない。

 筈だ。

「……親父。やっぱり平和的に物事を解決する気は?」

「無いな」

「やっぱり即答かよ!」

《s》

 もう幻聴は無視して良い気がする。

 気にしていたらキリが無い。

 そんな気がする。

《E》

「……まぁ、そこで土下座して謝罪して三回回って『ワン』と言うのなら、攻撃を止めた上でお前からの意見を忘れてやるんだが」

「忘れるなよ!」

 親として割と最低な事を言いやがってるぞコイツ!

《x》

「忘れて欲しくないのなら、六万五千五百三十五回回ってから『ワン』と言うんだな!」

「拷問か!」

 まず、確実に目回るだろ。それ。

《M》

「嫌なら別に良いんだぞ?」

「親父は鬼畜か? それとも馬鹿なのか?」

 ……さて。

 これも《主人公補正》なのか?

 相手が気紛れで攻撃を中断させる、って類の。

 親父の方に有利な状況にならないのは、親父が《主人公補正》のオン・オフを繰り返しているからだろう。

 推測だけど。

《a》

 なら、この間を使って、作戦を練らなければなるまい。

 俺の《主人公補正》だって、いつまで続くか分からないんだし。

 とは言っても、この程度の時間で思いつく案なら、とっくの昔に思いついていておかしくない訳で。

《c》

 今更どうしろと? と言いたくなってくる。

 誰にか、なんて勿論分からない。

「六万五千五百三十五回が多いなら、二百五十五回でも良いが?」

「十分多い!」

 だが、この親父にツッコんでいるせいで、中々思考が纏まらない。

 親父の作戦なのか? 俺に作戦を練らせない作戦か?

《h》

「残念ながら違う」

「中途半端な所で《主人公補正》使うなよ!」

 いやまぁ、選んで使ってる訳じゃ無いと思うけど。

「お前の考えは昔から顔に出やすい」

 昔から、ねぇ。

 親父が数年前の俺の事を覚えているとは意外な。

《i》

 適当な事を言っている、って可能性もあるけれどさ。

「さて。そろそろ選択肢を選んで貰おうか」

「くっ……」

 さて。

 全く、と言って良い程、俺の思考は纏まっていない訳で。

 つまり、俺が負ける確率が百%な訳で。

 勝ち負けの基準は分からないが。

《n》

 ……さっきからスルーし続けているけど、この幻聴、いつまで続くんだ?

 大体、幻聴って勝手に終わる物なのか?

 そもそもこれは、本当に幻聴か?

「……あぁぁぁあああぁもおぉおぉぉぉおおう!」

 さっきからどうでも良い事しか考えてない気がする!

 俺は頭を掻き毟った。

「さぁ、どうする?」

 親父が笑いながらそう言った。

 その時。

《a》

 また幻聴(仮)が聞こえて。

《D》《e》《u》《s》《E》《x》《M》《a》《c》《h》《i》《n》《a》

 今までの幻聴(仮)が全て、もう一回ずつ聞こえた。

「いや……?」

 やっぱり、幻聴じゃ、ない?

 もしこれが幻聴だったら、もう一度同じアルファベットが聞こえる事は無いだろう。

 っつーか、何て言ってるんだこの幻聴(?)は。

「……ディユース・エクストラ・マチナ?」

 生憎、俺は英語に自信なんて無い。

 ついでに言うと日本語にも自信が無い。

 つーか、自信がある教科なんて無い。

 だからローマ字読みしてみた。

 ついでに言うと『Ex』を『エクストラ』と読むのは癖だ。

 ゲームとかやってると、こう読む事がたまにある。

 それで覚えてしまった。今更矯正も不可能だろう。

「な?」

 唐突に。

 親父が目を見開いて驚いた。

 Exをエクストラって読む事にでも驚愕したんだろうか。……無いか。

「お、お前、今、何と?」

「え?」

 確認する、って事は、親父は《主人公補正》を使った訳じゃ無いのか。

 なら、何でわざわざそんな事を?

「えっと……、『ディユース・エクストラ・マチナ』って」

 確かそう言っていた気がする。

 いや、『デュース・エクストラ・マチナ』だっけ?

 どっちでも良いか。多分あってないし。

「と言う事は、正加、お前まさか……」

 なにそれダジャレ?

 昔、結構そのネタで弄られた覚えがあるんだが。

 俺、名前弄られるのあまり好きじゃないんだが。

 嫌がらせか? この親父、この期に及んで嫌がらせか?

 まぁ『この期に及んで』の意味なんて詳しく知らないで使ったんだが。

「愛川から《機装現神デウス・エクス・マキナ》をも借りたのか……?」

 は?

「デウス・エク……何だって?」

 あぁ。

 つまり『ディユース・エクストラ・マチナ』でも『デュース・エクストラ・マチナ』でも無くて、『デウス・エク何たら』だったのか。

 ……だから『何たら』って何だよ。『何たら』って。

「つーか、あああああから借りた、ってどう言う事だよ」

「黙れ質問に答えろ!」

 速攻で怒鳴られた。

「横暴だ!」

 確かに、聞かれた事に答えないのは良くないと思う。

 とは言え、怒鳴るのは良くないと思うんだ。俺は。

「……まぁ良いや。俺が借りたのは《主人公補正》と、この腕時計だけだ」

 と、俺は腕に巻きついている腕時計を親父に見せた。

「で、デウス・エク何だよ」

 そもそもデウスって何だ? ギリシャ神話の神か? それはゼウスか。

「デウス・エクス・マキナ、だ」

 デウス・エクス・マキナねぇ。

 ……Exって、エクストラじゃなかったのか。

 因みに、デウス・エクス・マキナは《機装現神》と書くらしい。

 ソースは親父の脳内(つまり《主人公補正》使用)。

「……《機装現神》って何だ?」

 デウス・エクス・マキナって何だ?

 そう口に出して言ってみても、意味は分からない。

 何だか昔聞いた事がある気もするんだがなぁ。ゲームで。

「ば、馬鹿!」

 へ?

「何が『馬鹿』なんだ」

 最後の一文字『よ』を言おうとした時。

 辺りに転がっている瓦礫が、宙に浮いた。

「え?」

 俺の周りの瓦礫が、宙に浮いた。

「遅かったか……」

 親父がそんな事を呟いた。

「何だよその意味有り気な台詞は!」

 気のせいだろうか。

 宙に浮かんだ瓦礫が、俺の周りを回転している。

 そんな気がする。

 俺に衝突する気配が無いのはありがたいが。

「……『デウス・エクス・マキナ』と言う言葉の意味を知っているか?」

「は?」

 何を語りだしているんだこの親父は?

 さっき俺が唐突に説教を始めた事に対する仕返しか?

 それ、この瓦礫浮遊現象(仮)と関係あるのか?

「『機械仕掛けの装置から現れた神』と言う意味を持つラテン語だ」

「ラテン?」

 どの辺りの国だっけ。ラテン。

「話の収拾がつかなくなった時、神が現れて強引に話を大団円に持ち運ぶ。……そう言う言葉さ」

 ふーん。……何いきなり語り出してるのこの痛親父は?

「で、それとこれとがどう言う関係なんだ?」

 話についていけない。

 現在進行形で、瓦礫は浮遊&回転を続けている。

「そこから意味は転じ、絶対的な力で強引に物事を解決する時、この言葉が使われる様になった。……私はその言葉に相応しい能力を開発してしまった」

 さりげない自慢に聞こえる台詞の最中、瓦礫は速度を上げつつ俺の周りを回転する。

「そして、それを『愛川綾香』に与えた」

 冗談を抜きにして、訳が分からない。

「『勝負に決着が付きそうに無い時に発動し、勝負なんてしている場合じゃなくなるまで辺りを破壊する』……そう言うプログラムだ」

「何て物開発してるんだこの馬鹿親父!」

 何となくだが、理解した。

 俺はさっき、このプログラムの名前を口にした。

 そのせいで、このプログラムが発動したんだろう。

「お前が《機装現神》を口にするから……」

「最初に言え!」

 ……あれ?

 って事は、既に《機装現神》って発動してるんだよな?

 だから、俺の周りを瓦礫が浮いているのか? ……多分そうだろう。

「あれ?」

 それ、無茶苦茶ヤバくね?

「つまり、このままだと……」

 俺は震えながら言った。

「ああ。この廃墟なんて、簡単に吹っ飛ぶ」

 その時。

 浮遊していた瓦礫が、一気に上へ飛んで行った。

 上の階の床、天井を破壊しながら。

「「うわぁああぁぁああああああぁぁあああぁあぁああぁぁあぁああああああああ!」」

 当然、破壊された瓦礫は一階に向かって落下してくる。

 だが、その内の何割かは、落下をやめて上に飛んで行った。

「……下手をしたら、この街も崩壊しかねない」

 ガリガリガリガリ。

「アホなんだな! お前は正真正銘のアホなんだな!」

 とか叫んでいる場合じゃない。

 ガリガリガリガリ。

 瓦礫はさらに壁まで破壊し始めた。

「親父! これ止めるにはどうすれば良いんだよ!」

 ガリガリガリガリ。

 俺は怒鳴った。

 だって瓦礫同士の衝突音が酷いから、怒鳴らないと会話なんて出来やしない。

「簡単だ! 話の収拾がつかないから、《機装現神》は発動する! なら、話に収拾をつけてやれば良い!」

 ガリガリガリガリ。

「あ」

 そうか。そうすれば良かったのか。

 何で思いつかなかったんだろうか。

「……あ」

 ガリガリガリガリ。

 気付いたら、あああああから借りた腕時計の針が止まっていた。

 って事は、もう俺は《主人公補正》を使えない、って事だろう。

 ……なら、何で《機装現神》は使えるんだ?

 まぁ、今それを考えても仕方ないか。

 ガリガリガリガリ。

「じゃあ親父、一発殴らせろ!」

 俺は落下&上昇を続ける瓦礫の間を縫って走った。

 それでも頬やら腕やらに瓦礫は当たり、血が流れた。

「息子に殴られる位なら、この街を犠牲にする方がマシだ!」

 ……は?

「何言ってんだこんな非常時に!」

 ガリガリガリガリ。

 叫びながら、俺は後一歩で親父に拳が届くと言った所まで辿り着いた。

 そしてすぐさま、俺は拳を放った。が。

「フン」

 その拳は、親父の手を殴った。

「ほらほらどうした! 早くしないとこの街が消し飛ぶぞ!」

 ガリガリガリガリ。

 ……親父、絶対この状況を楽しんでやがる。

 自分の研究成果を試す良い機会だ、とか思ってそうだ。

 ガリガリガリガリ。

 崩壊は進む。

「くそっ!」

 もう一度親父を殴ろうとするが、再び防がれる。

 何だか辺りが明るくなってきた。……最上階まで壊れてきたのか。

 もう、この際、手段は選べないか。

「後一分も無いんじゃない、かぁ!」

 親父の台詞の最後の一文字は、素っ頓狂な声になった。

 そりゃあそうだろう。

 相手の拳を全て受け止められる、なんて油断をしている時に、腹を蹴られたのだから。

「あーあ……」

 親父を一発殴りに来たのに、親父を一発蹴る事になるとは。

 当初の約束は果たせていないけれど、これはこれでアリか。

 いやでも、なんだか釈然としないなぁ。

 初志貫徹超大事。やっぱりここは殴るべきかも。

 って事で。

「なぁ親父? 追加攻撃するのってアリか?」

「やっ……、やめろ!」

 本気で懇願された。

 ……そんなに強く蹴ったっけなぁ。

「まぁ、これで《機装現神》も停止するは……」

 ガリガリガリガリガゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ。

「ん?」

 鳴り響く轟音に違和感を感じ上を見たら。

 俺の真上に、二メートルはありそうな鉄骨があった。

 俺の、すぐ、真上に。

「え」

 鉄骨が何かを潰す音が響き。

 その鉄骨の上にまた別の鉄骨。

 そう言う風に破壊は連鎖し。

 廃墟が、完全に崩壊した。

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