週末の夜
青年は夜が嫌いだった。
箱から煙草を一本取り出し、ライターでその先を灯す。煙草を介して深く息を吸い、そして吐き出す。遠くの街灯の光に照らされた紫煙は何かに手を伸ばそうと広がり、いつの間にか霧散してしまう。
数時間ぶりのニコチンは彼の固まった精神を弛緩させた。そんな彼が次に吐き出したのは深いため息だった。夜空を見上げるとそこにはビルに囲まれた星が微かに瞬いている。
五階のベランダは風がよく通る。秋口の夜風は肌に優しい。一人暮らしのワンルーム。それなのに彼の居場所はこのベランダしかないような錯覚を抱いてしまう。
青年は夜が嫌いだった。一人でいると、何もかも思い出してしまうから。
だから今日も部屋には男がいた。二つ下の大学四年生。金曜日の夜は暇だったらしい。とあるSNSで知り合って、数通のやり取りをして仕事終わりに待ち合わせした。そして家に連れ込み会話して酒を嗜んで、頃合いを見計らって体を重ねた。
自分とは反対で、小麦色な潤った肌は青年の欲望を刺激した。その勢いで限界までいき、果てた。
二本目を吸おうかな、と思案していた時、慎んだノックが聞こえた。
「どした」
「もう遅いですし、寝ますか?」
「そうだな、もう寝るか」
夜を過ごす相手なんていくらでもいる。性欲を満たす相手も、人肌恋しいとき寄り添ってくれる人も。けれども、それも夜だけ。日中に一緒にいたいと思える相手には、まだ、出会えない。
「昨日は楽しかったです、また今度暇な時にでも誘ってください」
「おう、俺もだよ。それじゃあまたメールするよ」
朝を彩るのは小鳥のさえずり。




