再会の庭 (2)
これにて完結とさせていただきます。不定期の更新にお付き合いくださり、お気に入りにして下さり本当にありがとうございました。
「知ってるけど。それがどうかしたのか?」
重い決意を込めた告白だった。
なのに、シェイドには『なにをいまさら』と言う感じできょとんとされてしまった。そんな馬鹿な。
「…え?」
「リタは覚えていなかったみたいだけど、俺はプールビア王女に昔一度会ったことがある。路地裏にうずくまってたお前に声を掛けた時には気づいていなかったけど、顔を見てすぐに分かった。亡くなったとされたフェグリットの王女であり、国王軍の将軍だったプールビア王女だって」
「嘘…だって、そんな様子はなかったじゃない!!」
当然のようにさらっと。シェイドは出会ったその瞬間から私が誰だか知っていたと告白する。それなのに私に『リタ』と名付けて、平気でその名前を呼び続けていたのだ。
「出会った時点でお前は王女として生きるつもりが無いのがわかったからな。もしお前があの時自分が王女だと思っていれば上級官吏の制服でフェグリット語を話した俺に助けを求めたはずだ。リタはそれをしなかった。リタを部屋に連れて帰ったのだって、あんなところに女性を放っておくわけにはいかなかっただけだ。お前はこれも気付いていなかったみたいだが、それから俺はすぐにリタとして生きるお前を好きになった」
「……じゃあ私が元王女でもいいの?好きって言ってくれる?」
私がプールビア王女だと知っていて、シェイドはリタを好きなったと言ってくれた…んだよね?
80%の期待と20%の不安で胸がドキドキと苦しくて、頬が熱い。そんな私の心の中にシェイドは気付いていないんだろう。ふっと、出来の悪い子供に困ったように微笑むと私の腰に手をまわして抱きあげた。私はそんなことを受け入れる余裕なんてなくて、手で顔を覆う。
「好きだよ、リタ。お前がプールビア王女だろうがリタだろうが俺が欲しいのはお前だ。リタの言葉は朝になれば消えてしまうものでも、俺の言葉はそうじゃないんだぞ?きちんとお前が好きだと言葉にしていたつもりだったが、もっとはっきりと言葉にも態度にも出さないとリタには伝わらないんだな……覚悟しろよ、ルビア?」
「え…?きゃっ、んぅ…やっ…」
手を剥がされて、唇に噛みつくような口付けなのに頭をなでる手は優しい。
まだまだ、シェイドに隠していることは多い。どうして私が生きていて、それを公表出来なかったのか。どうして私がリズダイクにいたのか。
…いつか、それもシェイドに知られてしまうかもしれない。それでも初めて呼ばれたその名前が私の中に小さな灯りをともした。
だから、これから始めよう。
――物語の始まりは、きっとここから。
*_ Fin _*
このお話はもともと多くの番外編を加える予定で書いていますので、今後はMoon版でちょっと加筆して更新していきます。なろう版と比較しながら楽しんでいただければ幸いです。
Moon版では『雨と、猫』というタイトルです。
甘い二人&裏話など書いて行く予定です。
もしよろしければ感想など頂けると喜びます。
それでは今後もよろしくお願いします。




