1 Month Later (2)
この街はリズダイク王国の首都と言うこともあり賑やかだけど、休日の今日はいつもに増して華やいでいた。フェグリットの街も、もう何年かしたらこうあって欲しいと思う。
自分で――しかもドレスではなく可愛らしいワンピースを選ぶなんて初めてで、私はドキドキとしながらシェイドの背中についていく。今日も昨日と同じく爽やかに晴れていて、確かに今のもこもことした冬服では汗ばんできそうだ。
「迷子にならない位にきょろきょろして、気になる店があったら言え。俺も好きな店に入るから」
メイン通りに着くと、シェイドは無茶な事を言い出した。一人で歩くことをやっと身につけた私に、迷子にならないようにきょろきょろしろ、なんてかなり高度な技。
しかたなく、とっとと歩き始めたシェイドの後に続く。ショーウィンドウを見ながら歩く彼の歩調はここに来るまでに気が付いたらしく、私を気遣ってゆっくりだ。
それでも、そこそこの人のなかでシェイドを見失わないように、人にぶつからないようにしながら、お店を物色していればついつい足元がおろそかになった。
「…ぁっ!!」
ちょっと離れてしまったシェイドを追いかけようとすると、がくん、と身体が傾いた。どうやら段差があったらしい。反射的に痛さを覚悟して目を閉じると、ふわり、と体が下ではなく上へと浮いた。
「っと…わかった。ちゃんとお前が迷子にならないように見てるから、足元には気をつけろ」
ちょっと呆れた声に目を開けるとシェイドが私を身体を持ち上げていた。彼は私を何だと思っているのか、動物や子供のように持ちあげられ、ぶらん、と揺れた足が地面についた。
とりあえず頷いて、改めて辺りを見回すと、きらきらとした世界が広がっていた。どの衣装も、以前のような高級なシルクでもないし、何カラットもある宝石が付いているわけではない。それでも、私にはずっと美しく思う。
そうして、私は春から初夏にかけての服を10着も買ってもらった。一般的に男の人は女性の買い物が嫌いだっていうけど、意外にもシェイドは私に「試着してみろ」だの「こっちの色のほうが似合う」だのといろいろ口を出してきて、楽しんでいるようだった。
服のほかにも靴はわかるが、髪留めやネックレスなどを選べと言われて戸惑ったが、シェイドに「必要だろ」と言われていくつか選んだ。贅沢は怖い。いつか私も王妃であった母のようになってしまうようなきがするから。