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第6章 遅れた時間を取り戻すトレーニング期間

作者: ごやマン
掲載日:2026/11/02

――失った三か月を、もう一度取り戻すために――


⚪︎三か月の遅れ


三か月ぶりにグラウンドへ戻った僕たちを待っていたのは、想像以上に厳しい現実だった。


体が思うように動かない。


走ればすぐに息が上がり、バットを振れば体が重い。ボールを投げても、以前のような感覚が戻ってこなかった。


三か月という時間は、思っていた以上に大きかった。


僕たちが練習を休んでいる間も、ほかのチームは走り込みをし、バットを振り、試合に向けて準備を続けていた。


その差は、これからの練習で埋めていくしかなかった。


目指すのは、最後の夏。


残された時間は限られている。焦る気持ちはあったが、いきなり以前の自分たちに戻れるわけではない。


まずは体力を取り戻し、野球の感覚を呼び戻すこと。


僕たちの再出発は、そこから始まった。


2.まずは体を作り直す


最初に思い知らされたのは、体力の低下だった。


以前なら普通にこなしていた走り込みが、今は苦しい。走っている途中で足が重くなり、呼吸も乱れる。


走り終われば、膝に手をついて息を整える。汗が流れ、体の疲れを感じても、次のメニューは待ってくれなかった。


筋力トレーニングや体幹を鍛える練習にも取り組み、野球を続けるための体を作り直していった。


走る。鍛える。そして、また走る。


一つひとつの練習が、以前よりも厳しく感じられた。


三か月前まで当たり前にできていたことが、簡単にはできない。頭では分かっていても、体がついてこないことが悔しかった。


それでも、練習を休んでいた時間を嘆いているだけでは、何も変わらない。


自分たちが止まっていた間にも、時間は進んでいた。


だからこそ、今できることに取り組むしかなかった。


苦しくても、途中で投げ出さない。


一日で取り戻そうとするのではなく、毎日の練習を積み重ねる。


僕たちは、失った時間の重さを感じながら、少しずつ体を作り直していった。


3.仲間と乗り越える


トレーニングを続ける中で、何度も足が止まりそうになった。


もう少し休みたい。これ以上走るのはきつい。


そんな気持ちになることもあった。


けれど、隣には同じように苦しみながら走る仲間がいた。


自分だけがつらいわけではない。みんなも同じところからやり直している。


そう思うと、もう一度足を動かすことができた。


ある日のトレーニングで、走り込みを終えた僕たちは、グラウンドの端で息を整えていた。


みんな汗だくで、肩で大きく息をしている。


僕が息を切らしながら、


「きついな……」


と呟くと、隣にいた仲間が笑いながら言った。


「三か月サボったんだから、当たり前だろ」


「分かってるよ。でも、こんなに体力落ちるとは思わなかった」


「俺も同じだよ」


そう言って、二人で少し笑った。


少し間を置いて、仲間が言った。


「でもさ……もう、あんなことにはしたくないよな」


その言葉を聞いて、僕は三か月間のことを思い出した。


練習に行かなかった日々。仲間とグラウンドに立てなかった時間。チームがなくなるかもしれないと思ったこと。


もう一度野球をしたいと願いながら、どうすればいいのか分からなかった日々だった。


「うん」


僕は短く答えた。


「もう一回、ちゃんとやろう」


仲間は頷いた。


「今度は勝ちたいな」


「勝とう」


長い会話ではなかった。


けれど、その言葉には、もう一度みんなで勝利を目指したいという思いが込められていた。


三か月前、僕たちはばらばらになった。


今は、再び同じ目標に向かおうとしている。


「休憩終わり!」


誰かの声がグラウンドに響いた。


僕たちは立ち上がり、再び走り始めた。


体はまだ重かった。それでも、隣を走る仲間の姿が、もう一度前へ進む力になっていた。


4.技術を取り戻す


体力だけでなく、野球の技術も取り戻さなければならなかった。


キャッチボール、守備練習、バッティング。一つひとつの基本を確認しながら、体に感覚を覚え直させていった。


ボールを捕る。投げる。打つ。走る。


普段なら意識しなくてもできていた動きが、思うようにいかない。


ボールを捕るときに反応が遅れる。打球が芯に当たらない。自分ではできているつもりでも、体の動きが感覚と合わない。


「前はもっとできたのに」


そう感じることもあった。


けれど、以前の感覚を求めて焦っても、すぐに戻るわけではない。


必要なのは、目の前の練習を一つずつ積み重ねることだった。


キャッチボールでボールの感触を確かめ、守備では打球への反応を取り戻す。バッティングでは、自分のスイングを確かめながら、少しずつ感覚を磨いていく。


練習を続けるうちに、体の動きが徐々に戻ってきた。


小さな変化だったとしても、自分の成長を感じられることは嬉しかった。


三か月前の自分に戻ることは、簡単ではない。


それでも、昨日より少しでも前に進めているなら、その積み重ねには意味がある。


僕たちは、焦らずに野球の感覚を取り戻していった。


5.失った時間を力に変える


練習を再開してから、僕は野球に対する気持ちが少しずつ変わっていくのを感じていた。


以前は、練習することが当たり前だった。


放課後になればグラウンドへ向かい、仲間と練習する。苦しいことがあっても、次の日にはまた野球をする。


それが、ずっと続いていくように思っていた。


しかし、三か月間、野球ができない時間を経験した。


練習に行かなくなり、仲間と過ごす時間もなくなった。高校野球を続けられなくなるかもしれないという現実を、初めて身近に感じた。


だからこそ、再びグラウンドに立てることの意味が変わっていた。


野球ができることは、当たり前ではない。


仲間と一緒に練習できることも、限られた時間の中にある。


そう考えると、一日一日の練習を無駄にはできなかった。


もちろん、勝ちたいという気持ちも強くなっていた。


三か月前、僕たちは結果を出せず、悔しさを抱えたまま野球から離れた。


今度こそ勝ちたい。


そして、仲間と最後の夏まで野球を続けたい。


そのために、目の前の練習に取り組んだ。


失った時間は戻らない。それでも、その経験をこれからの力に変えることはできる。


僕たちは、少しずつ前へ進んでいた。


6.少しずつ戻ってきた感覚


練習を重ねるうちに、体にも変化が表れ始めた。


以前より走れるようになり、バットも振れるようになった。ボールを投げる感覚が戻り、守備でも体が反応するようになってきた。


まだ十分とはいえなかったが、確かな手応えがあった。


ただ以前の状態に戻るだけではない。


一度、野球を続けられなくなるかもしれないという経験をしたからこそ、練習に取り組む気持ちも変わっていた。


以前なら見過ごしていた小さな成長も、今は自分たちが前に進んでいる証しに思えた。


仲間と練習し、互いに刺激を受けながら、少しずつチームとしての準備を整えていった。


三か月の空白を完全に埋められたわけではない。それでも、僕たちは立ち止まっていた時間を、自分たちの手で前へ進む時間に変えようとしていた。


そして、次の大会が近づいていた。


三か月の空白を経て、再び野球に向き合い始めた僕たちは、どこまで戦えるのか。


積み重ねてきた練習の成果が試されるときが、近づいていた。

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