サフィと狐の話し合い
狐がペペロンチーノを五回お代わりし落ち着いた頃を見計らい、質問を再開する。
さっき質問できたのは、どうして狐がニンニクや油、唐辛子を食べても問題ないのか。
これは理由も聞いたし、目の前で三皿分も食べてるところを見れば、納得する。
しかし、聞きたいのはこれだけではない。
どこから来たのか、どうやって入ってきたのか、何が目的なのか、人が見当たらない理由を知っているのかなど、聞きたいことは山ほどある。
(どれから聞くべきか)
「これからする質問に答えてくれ」
巡は質問する順番を頭の中で整理しながら狐に問いかける。
目の前の狐は満腹を示す様に腹を撫でながら、窓際でくつろいでいるサフィの方をちらちら見ていた。しかし、巡が声を掛けた途端、嫌そうな顔をしながら顔を正面に戻した。
「どうして妾が答えねばならぬ」
思わず手が出そうになったが、ギリギリで我慢した。あの人の怒鳴りを五年も我慢した経験がある。けもみみ幼女がふんぞり返るくらいで怒るなんてありえない。
一つ深呼吸をしてから、目の前の幼女に道理を説く。
「お前は腹が減っていた。俺は飯を用意した。俺が用意した飯を食べたよな?それも三皿分。質問に答えるくらいしてもおかしくないよな?」
「……ひゃい」
涙目になった幼女を前に冷静さを取り戻す。
深呼吸で落ち着けたと思っていたが、早口になるし低い声が出たし、全然怒りが収まってなかった。
(前はこんなこと軽く流せてたはず)
なんて思うも、まずやることは、目の前のけもみみ幼女が本格的に泣き出す前に、なだめること。
味覚がヒトと同じなら、甘味で手を打てるはずと、飴玉を差し出す巡。
「食べてよいのか?」
「泣かせるつもりは無かった。これ食べて機嫌を直せ」
「泣いてなどおらぬが、これは貰っておいてやろう!」
飴を口に入れ、甘い!と機嫌が直るけもみみ幼女。
これなら質問に答えてくれそうだ。
「では改めて。お前はどこから来た」
「もっと北の方」
「何か目印になるようなものは?」
「岩場じゃったからの。目印にも何も。ただ、此処より暖かかった気がするの」
ここより北で暖かい岩場と聞いて、巡は温泉地かとあたりをつける。
巡は北にある温泉地で二つの候補を出すが、狐からはそれ以上の情報は出てこない。
目覚めてすぐに来たから分からないの一点張りである。
「じゃあどうやって家に入った」
「お主の後ろについて一緒に入っただけじゃ」
「飯にするまでずっと黙ってたのか?」
「それはだって……」
言葉を濁しながらサフィの方をちらちらと見る狐。
そういえばさっきもサフィの方を見ていたなと思い出す巡。
「サフィの事知ってるのか?ここに来た目的はサフィなのか?」
「そ、それは。妾の恩人じゃ。あのお方と同じ気配を感じて、咄嗟に体が動いてしまったんじゃ」
離している間常にサフィの方を見ている狐。我関せずとくつろいでいるサフィ。
狐はサフィを恩人と言っているが、知り合いなら興味くらいは示すのが普通だ。
「そんなに気になるならサフィの方行くか?」
目的がサフィに会うため、北の温泉地から普通に入ってきて、腹が空いたら人の飯を取るけもみみ幼女。
これに害は無いと判断して、もう何を聞いてもこちらを見ないことから提案した巡。
「えっ!」
巡の提案を聞いたとたん驚いろいたように振り向く幼女。
そのあともしどろもどろに何か呟いている。
(サフィに会いに来たんだろ?)
窓際でくつろいでいたサフィを呼ぶ。
刺激物が無くなったからか素直に近寄って来るサフィ。
サフィが一歩一歩近づくたびに体の震えが大きくなっていく幼女。
(本当にサフィに会いに来たのか?)
サフィが巡の前に来た時。つまり、幼女の対面に来た時、耐えきれなくなったのか煙りに包まれる幼女。煙が晴れた時、狐の姿になってガタガタ震えていた。
「サフィ。この狐がお前に会いに来たんだと」
巡の言葉を聞き狐の方を見るサフィ。
視線を送られたことで、体の震えが一段階増す狐。嬉しいのか怖いのか、狐の感情が理解できない。
「狐と何か話してみてくれ」
この状態の狐に接触させていいものか分からないが、会いに来たと言っていたし、問題ないと判断する。
ついでに、狐が黒い生物の事を知っているか、人がいない訳を知っているか聞いてもらおう。
恩人の疑問には素直に答えるだろ。
サフィが狐をソファの方に連れて行くのを横目にしながら、二匹の話し合いの中、何をするべきか考える。
この状況になった原因だが、巡の記憶の中に思い当たるものは無い。
しかし、生きてるものが巡、サフィ、狐しか見当たらないことから、三者の中に原因があると仮定する。
記憶に原因が無いなら環境。自分の起きた場所が怪しいと、寝室からリビング、風呂場やトイレまで、記憶と違う箇所、怪しいものが無いか調べ尽くす。
「何も無しか」
自分に原因が無いなら、サフィか狐か。
大きいだけの犬に見えるサフィより、幼女になれる狐の方が断然怪しいが、あの狐がこんなこと出来るか?
今もサフィを目の前にして何も喋れず、サフィが一方的に喋り掛けているように見えるあの狐が。
(目覚めた場所から調べるか)
狐は北の岩場以上の詳細が分からないから、まずはサフィだな。黒い犬に追いかけられていたとはいえ、自分が起きた場所は覚えているだろう。覚えていなくても自分の匂いを辿って行けば問題無いはず。
外での一泊の可能性も考えて、持ち物を選別していく。
夕食用に二食。寝袋。ライト。そのほかにも必要そうなものを選んでいき、そこから、しっかりと動ける重さになるまで減らしていく。物をリュックに詰め、木刀を振ったりその場で跳ねてみたり、体を動かす。時にはリュックの大きさを変えてみる。
「最悪サフィに狐を乗せるから、俺が逃げられるかが重要だな」
サフィの問いかけにようやく答え始めた狐を見ながら、考えを声に出し整理する。
(寝袋は要らないか、コンビニとかを間借りすれば。ってことは食料も要らない。スマホも通じる相手がいないし……)
外で手に入るかどうかで減らしていくと、サフィの選んだブレンドカリカリと、トイレセット。武器としての木刀と光源のライトくらいしか残らなかった。
「薄暗い時間帯の犬の散歩になった」
そう呟きながら出かける準備を終えた巡は、サフィと狐の話し合いの場に戻る。
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