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外界へ

葵による動物紹介が終わり、最後まで肉を頬張っていた灰犬も食事が終わった。

何か合図を出したわけではないが、自然と葵のそばに集まりだした。


「それじゃあそろそろ巡君を外に出す準備を始めようかな」


動物たちをぞろぞろと引き連れ上階に戻っていく葵。

食べるだけ食べて、結局片付けはやらないか。白猿だけ申し訳なさそうに振り向いたが、わざわざまとまって動き出したことで何かあるのだろうと考え、手を振って行くように示す。


「それじゃあ片付けするか」


最初は部屋の中央で纏まって食べていたはずなのに、辺り一面が散らかっている。食べているのが人じゃないから多少散らかるのはしょうがないと思うが、十匹が思い思いに食べていたからな。一匹はパニックになって走り回ってたからか、隅の方まで汚れが見える。

外の世界に出たら、この建物の汚れなんて関係なくなるんだが、使った場所は使う前よりも綺麗にしろ、そう言われて育ったからか、とりあえず掃除を始める。


「床は俺がやるから使った調理器具を纏めておいてくれ。狐もサフィを手伝ってくれよ」


「どうして妾がと言いたいところじゃが、サフィ様がやるのに妾がやらぬわけにはいかぬ。炊飯器等重いものは妾が運びます故、桶など大きいものをお願いしてもよろしいですか?」


「わうわう」


狐とサフィが中央の片付けを始めたのを確認し、部屋の端から掃除を始めた。寿司に使ったネタは好評で残しなく食べられた。酢飯も酢飯を気に入ってそれだけ食べるやつがいたから綺麗になくなっている。白猿が管理し始めたほどだからな。しかし、海苔は好みが分かれたのか、余り気味。しかも、使ってみた後に気に入らなかったのか、海苔だけ外したのか床に散乱していることしばしば。細かく千切れているため、箒で掃くしかないが軽いからかよく舞う。掃除機が欲しくなるが、この建物には箒とちり取り、それと雑巾くらいしかなかったんだよな。


(そういえば猪は鼻についた山葵をどうしたのか)


気になってしまった巡は、狐とサフィに声を掛ける。


「それ片付け終わったら少し壁とか見てくれないか。猪が山葵をどこかに擦りつけているかもしれない」


どんな感じに片付けと掃除をしながら、気になったことが出来たら指示を出す。途中怠け始めた狐の対応で少し時間を使ったが、一時間もかからず片付けを終えることが出来た。


「準備を始めるとか言ってたが、そろそろ出来ているかな」


綺麗になった部屋を後にし上階へ行く。

これでエレベーターが使えればよかったんだが、どうして使えないのか。


「やっと来た。なかなか来ないからこの世界が気に入ったのかと思ったよ」


「誰かが食うだけして片付けなかったからな。時間が掛かってしょうがなかった」


「君の為に作られた世界だって言わなかったっけ?巡君が外に出る時この世界は消える。どれだけ汚しても何も問題無かったのに、律儀だねー」


「それでも気になったんだからしょうがないだろ。それより準備とやらは終わったのか?」


綺麗にするしないはそもそもの意識の違いで決着が付かなそうなため、話を変える。

片付けは一時間は掛からなかったと思うが、それでも時間はかかった。しかし、見たところ人を世界から出すような大掛かりな仕掛けが行われたようには見えない。


「僕らは出来てるよ。後は巡君次第だね」


「俺次第?」


「そう。世界から人を出すのは案外簡単なんだよ。適当に穴をあけて落とすだけでも世界の外に出すことになってるからね。だけど、狙った世界に出すとなると難易度が上がる。それを為すためには、出たい世界を明確に思い浮かべなければいけない。それは世界の特徴でも良いし、人でもいい。とにかく行きたい世界の目標となるポイントを定めないといけない。だから巡君は会いたい人でも良い。行きたい世界の特徴を強く思い浮かべて」


葵はそう言うと、巡を囲むように葵含む十三の守護者たちで周りを囲んだ。


(行きたい世界なら元の世界だが、もうその世界は無いんだろ?何を思い浮かべればいいんだよ)


行きたい世界と言われ、咄嗟に思いつくのは元の世界だ。むかつく上司はいるが、友と呼べる聡と同僚であり、ゲーム仲間とオフ会予定があった元の世界。しかし、その世界はすでになく、知らない世界と融合した後だとほかならぬ葵が言っていた。それならもう行きたい世界など思いつきようもない。


「悩んでいるようだね。今巡が思いついているのは元の世界だよね。普通なら他の世界なんて知らないわけだし当然か。だけど大丈夫。今回は元の世界の人たちを思い浮かべてもらっていいよ。過去に戻っていても、他の世界と融合していても、巡君の近くの環境は変わらないようになっているはずだからね。だから、友達でも恋人でも家族でも追い浮かべてもらえば、融合した新しい世界に行けるはず。その人たちの事をしっかり思い浮かべてね!」


どこか神々しく感じる葵がそう言った。

元の世界の事でもいいなら、思いつける。聡でも後輩でも部長でも会社の人も居るし、【アンチクトンワールド】やアキラ、レイとゲームでも良いかもしれない。もちろん家族を思い浮かべても良いが、社会人になってから会ってないんだよな。もっと実家に帰っておけばよかったか。


誰か一人となると選ぶのが難しいため、親しかった相手を順繰りに思い出していると、神々しい葵が話し掛けてくる。


「こんな時になんだけど、巡君にと飲みがあるんだ。この世界が消えるときこの子たちも消えるんだ。出来れば巡君に新しい世界に連れて行ってほしんだけど、良いかな?」


「は?」


強く追い浮かべろと言われて、元の世界の事を思い浮かべていた時に、突然のお願い。それも、十二体の動物たちを連れて行ってほしいと?既にサフィと狐がいるのにさらに増えるのか?この世界なら人が居ないから好き勝手にご飯を調達できたが、新しい世界ではそうもいかないんだろ。


なんて連れて行った後の心配が頭の中を駆け巡ったとき、さらに葵が情報が飛んで来る。


「あ、安心して。みんな実体を無くせる精霊だから、基本的には巡君の中で休ませているだけで良いから。世話要らずの手が増えたと思って。白猿とか役に立ったでしょ?紫猫とか黒兎とか可愛かったでしょ?精霊たちを新しい世界に連れて行ってよ。ね?」


この時、聞きたいことは大量にあるし、反論の余地も全然あったはずで、引き受ける気も無かったはずなのに、巡の口から出たのは「わかった」という了承の言葉だけだった。


「ありがとう!それじゃあこの世界の精霊たちを君に預ける!外の世界でも頑張ってね!新しい友よ!」


巡の周りを囲む守護者たちが光だし、巡の視界が白く染まった。

巡に出来たのは、離れないようにサフィと狐を抱き寄せることだけだった。

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