動物紹介のコーナー3
「それじゃあ次の紹介!あそこでお肉食べてる子」
なんちゃって寿司パーティーももはや終盤になっており、ほとんどが食べ終わってまったりし始める段階だが、まだ食べ足りない子がいたのか。
巡が葵の指差す方向を見ると、そこには生と思うほど赤い肉を頬張る、灰色の犬がいた。大きさは紫猫の小さいとき、巡の頭の上に居る時ほどの大きさにもかかわらず、自身の何倍もの大きさの肉に挑戦していた。
「あの犬が十二階を守ってた犬で合ってるか?」
「うん。あってるよ。桃羊の時のように普通に通過しちゃってたし、何なじゃれてるような感じだったけど、あれでもこの子たちの中では上位に位置してたんだよ。実際に今戦ってみたら、君でも苦戦すると思うよ」
「そんな子が何で普通の犬のようになってたんだよ」
「桃羊と同じ状況だよ。それを理解する前に守護者の階層決めちゃって……。あの子たちには申し訳ないことをしたと思ってるよ」
よく話を聞くと、どうやらあの灰犬の特別なところは声らしい。あの灰犬はその鳴き方で、発生する音を操る。普通なら拡散的に広がる鳴き声を、一点に集中させることが出来るとか。それだけでも怖いのだが、自身の望む方向に音を響かせることが出来る。という事は、良く反射されるように操れば、小さな音でも何倍にも大きくできる。それは何も攻撃だけに使えるものではなく、索敵にも使える、ソナー探知のようなものだ。そして音と言うのは空間を伝うもの。それを操るという事は空間を遮断できるという事でもある。物理的なものには意味が無いかもしれないが、風や火と言った不定形のものは防げる。
「対抗するにはそれこそ速さで勝っていないと厳しいか」
「巡君は音より速く動けるのかい?」
「超集中状態ならいけないか?」
「あれでも厳しいと思うよ」
厳しいか。葵が言うのならそうなのだろう。音速を超えることは出来ていないんだな。そして、音速の攻撃を繰り出せる灰犬を友として守護者に任命できるなら、葵は避けることも音速を超えることも出来るのだろう。
意識失う前に一撃掠らせることが出来て本当に良かった。二度は同じ攻撃効かなそうだし。
「最後があの子。いつ見てもかっこいいよね!」
紹介が始まってからずっとソワソワフラフラしていた子。葵が指差すたびにその先に入ろうと試行錯誤を繰り返していた子。それでも自分じゃないと分かっているから、最後には葵が本来紹介しようとした子に譲っていた子。常に視界の端をチラチラとしていたため、ずっと気になってはいた。葵の下、十三階の守護をしていた時は、真っ黒ながらその異様さ、強大さに畏怖を覚えたが、今は構って欲しくて駆け回っていて可愛く見えてきた。
「おいでー!」
葵が呼ぶと一直線に飛んできた。自分の番を今か今かと待ちわびて、ようやくのお呼ばれで感情が爆発してしまったのか。今まで時と場所を選んで自制していた大きさが、少しずつ大きくなってきているように感じる。
この部屋で収まりきる大きさで留まるならいいが、予想だとこの建物より断然大きくなることも出来るだろう。葵が宥めてくれることを切に願う。
(葵の友は大きさ変えるものが多いな。葵と一緒に居るために努力したのか?)
葵の腕の中で大きくなりそうな子を見ながらそんなことを考えていると、どうやら葵の腕の中で落ち着いたようで大きさが小さく戻っていく。
「それじゃあ改めて紹介するね。この子が僕の友達の中で一番強く、十三階を守って貰っていた龍だよ」
葵が両手に抱え紹介してきたのは二本の角に長い髭。鱗を持った細長い体。鋭い爪のある足を持つ、橙色の細長い体に緑色の鬣が恰好良い。小さい形態だからか、鋭い爪や牙を見ても恐怖は感じない。だが、金色の眼で見られると心の奥底まで見透かされているような気持になる。
「見ての通りの寂しがり屋でね。基本的に僕の周りにいることが多いんだけど、今回は巡君との対話が主だったし、流れで食事になったから戻って来る時期を逃してしまったんだね」
「他人事のように言ってるが、それを分かっていて放置していただろう。何度も葵の指先を追ってたじゃないか」
「紹介の流れで最後になっちゃったから。それに、この子はちゃんと弁えていただろう?指先を追う事はあっても、他の子を押しのけることはしなかった」
今度は葵の感情が爆発したのか、犬猫を可愛がるように撫でまわし始めた。
撫でられる姿はまさに犬猫のよう。しかし、龍の鱗ってどんな感じなのだろうか。見た目蛇っぽいが蛇のようにすべすべしているのか。それとも龍特有の違いがあるのか。未知が目の前にあることで、触ってみたい衝動に駆られるが、我慢する。葵を邪魔すると何が来るか分からないしな。いまだに地雷がどこに埋まってるのか把握は出来てない。
「その子は大きさが変わることは分かったが他の特徴はあったりするのか?灰犬みたいな音とか、緑蛇のような透明性とか」
「ごめんごめん。この子の特徴は特にないんだ。純粋な強さで君臨している。だけど、しいて言うなら幻想性かな。この子は皆が思う龍と言えばこういうものと言う能力を授かる。と言っても、この世界には巡君しかいないから、巡君が思う龍がこの子と言う事になる。もちろん色や大きさは元があるけどね。この子が大きくなるのは巡君が龍は大きいものと思っているからだよ」
「それじゃあ俺が龍は弱いものと思ったらこの子も弱くなるのか?」
「巡君がそう思えるなら最弱とはいかないけど、それなりに弱体化してしまうね。だけど、巡君は龍が弱いものって思えるのかな?」
葵に問われ考える。龍を弱いと思えるのか。
そも龍とは、災害が起きれば悪神として、恵みの雨が降れば善神として崇め奉られてきた存在だ。つまり自然そのもと言える。自然は予測できたとしても、操作することは出来ない。人が出来ることなんて、予想から悪い方向に行かないように行動することだけである。
そんな自然の権化と言える龍を弱いものとして思えるか。
「無理だな。龍は強いものだ。絶対的強者と言っても過言ではない」
「それならこの子は強者だよ。人が考え得る最強だ。今は巡君が考えた、だけどね」
その説明を聞くと、よく十三階を突破出来たなと思う。
きっと試練として手心を加えてくれたんだろう。もしくわ、側の黒いので大幅に制限されたか。あるいわ、俺が龍と認識していなかったか。とにかく運で勝ったようなものだな。
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