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白猿と紫猫

気絶後どうなったかを聞いていたら、背後にカラフルな動物たちが並んでいた。

葵が言うには、それぞれが乗り越えてきた黒い生物を操っており、階層主として巡の実力を計る役割を負っていたという。


「それじゃあ紹介して行こうかな。まずは君の事を一番気に入っているそこの猿」


そうして葵による紹介が始まった。一番最初に紹介されたのは全体的に白い猿。戦っていた時のような大きさではなく、巡の腰ほど程の背丈で、筋骨隆々だった大猿と違いその手足は細く、とてもじゃないがあんな柱並みの建材を振り回すことは出来ないだろう。巡の背丈を超える枝は持っていたが、柱ほどの重さは無いだろう。


(あれのどこが大猿に繋がるんだ)


木の枝の先から生える一枚の木葉を眺めながら、何を引き継げばあの大猿になるのか考える。

すると、紹介された白猿が巡に近寄って来た。巡を気に入ってるという事は本当のようで、枝を持たない方の手で握手を求めてきた。


(何で握手?)


ひとまず友好的にきた相手には友好的に返そうと握手を返す。


「いい戦いだったな」


待っていた白猿に握手を返しながらそう言うと、途端に白猿の握りが強くなる。

その細さのどこにそんな力があるのかと困惑しながら白猿の顔を見ると、挑発するように笑っていた。その顔を見て巡は理解した。これがあの戦いのリベンジなのだと。


(負けたくねぇな)


普段なら何も気にせず振り解いているが、この時は何故か負けたくないと思った。


「その挑発乗ってやる」


強くなっていく白猿の手に巡も力を加えていく。しかし、すぐに音を上げることになる。

そもそも、猿と人間の握力には違いがある上に、巡は力が自慢なわけではない。白猿と同じく人間と腕の細さが変わらないチンパンジーだって平均握力は人間の平均を軽く超える。純粋な力勝負で巡が勝つことなんて最初からできないのだ。


「離せ!潰れる!手が潰れる!」


巡のその叫びに、白猿の方が驚いたようだ。慌てて手を離し、どこか申し訳なさそうに巡を見つめてくる。そんな視線を向けられてしまえば、申し訳なるのは巡も同じ。


「いや、俺もすまん。握力の違いを忘れてた。今回はお前の勝ちだ。一勝一敗だし、次に勝負するときは知恵比べにでもしよう。純粋な力比べだとお前に勝てないからな。ハンデをくれよ」


そう言いながら、今度は普通に握手をするために手を差し出すと、その手を少し見つめた後、白猿も普通に握手を返してくれる。

この白猿、知能が人と変わらない。


(知恵比べと言ったのははやまったか?)


「僕が思った通り仲良くなったようだね。いきなり手を握りつぶし始めたときはどうなるかと思ったけど、次の勝負を約束したようだし良かった良かった」


白猿とのやり取りを黙って見ていた葵も話に加わってきて、動物たちの紹介を続ける。


「白猿はそろそろいいよね。それじゃあ次。巡君たちと一緒にここまで来ちゃった紫猫の紹介に移ろうか」


葵はそう言って、いつの間にか巡の上で丸まっていた黒猫を取り上げ、自身の胸前に持ってくる。狐がやろうとしたら絶対に暴れるのに、葵が主人だからか暴れることなく四つ足をダランとさせている。

少し不満そうな顔だ。巡の頭はどれだけ居心地が良かったのか。


「紫って言ってるが、こいつは黒のままだぞ」


「おっと、はがさないとね。この子は他の子と違って外側を操るというより、中に入っちゃってね。黒猫を作ってるときに、興味が湧いたのか近寄って行っちゃって、そのまま中に組み込まれちゃったんだ。だから、倒されなくて本当に良かったんだけど、まさか巡君と戦わずに狐と戦い始めるとは思わなかった。気まぐれだよねー!」


葵が猫を揉みながらそう話していると、光も反射しないほど黒かった毛がだんだんと先の方から紫色になっていく。

足先耳先しっぽの先が鮮やかな紫色になり中心の方は黒いまま。眼が赤く光って見えるのが少し不気味だが、猫として可愛いのは変わらないか。


「あの黒猫の中に入っていたという事は、この紫猫はあの戦いを再現できるってことか?」


狐を吹っ飛ばすときにでかくなっていたが、あれも実際に出来るという事か。というより、紫猫を元にしたと言ったが、紫猫と黒猫で何が違うのか。気まぐれだって変わらないだろ?

自分の頭の上に戻って来た猫を見てそう思う。


「本当に巡君の頭の上が好きだね。どこでそんなに気に入られたのか、戦闘中は勝手にどこか行って、終わった雰囲気を感じ取れば頭の上に戻ってきて。僕より気に入られてるよね」


「それは俺にも分からん。ただ目の前に居たから撫でてみただけなんだよな。普段から撫でたりして構ってあげてるか?」


「それはもちろん!だけど僕がやると不満げなんだよね」


(あの顔は持たれたからじゃなく、葵だからなのか)


白猿に続き紫猫を紹介されて分かったことが一つ。この子たちに名前は無いようだ。色に動物名つけてそのまま呼んでいることから、愛が無いのからなのか、ネーミングセンスが無いからなのか。どのみちそのままでは関係性は変わらないだろう。


「白猿、紫猫は分かった。このペースで紹介するなら、飯にしても良いか?あと十体の紹介が待ってるなら何時間かかるか分からん。腹空かせながら紹介されても無いよう覚えられる気がしない」


長くかかりそうな雰囲気を感じ取り、先にご飯にしないか挟み込むと、葵と喋り始めてからサフィの隣で静かにしていた狐が反応した。


「馳走か!こ奴の作る馳走は美味いぞ!」


何故か葵に自慢し始める狐。自分で作るわけでもないのに他の人に自慢するのはやめて欲しい。


「そんなに美味しいのかい?何度か食べてるのを見させてもらったけど、普通のような感じがしたんだよなー。そこまで言うなら僕にも作ってくれないかな?」


ほらこうなる。

そしてその葵の言葉の後にはしゃぎだす動物たち。


「もしかしてだけど、動物たちもご飯が欲しいという事なのか?」


思わず呟いてしまうと、それに反応した白猿がドラミングを始める。ゴリラ以外で見たことない行動だと思っていると、その腕と胸が肥大していき大猿と遜色ない大きさになる。

その他の動物たちもそれぞれに喜んでいるような仕草をする。

十一匹の動物たちが統率なく騒ぐと中々にうるさいことが分かる。


「仕方ない。作るか。かなりの数になるし、言い出しっぺの狐には手伝ってもらうぞ!」


作るのは面倒だと騒ぐ狐を無理やり連れて、下に食材調達に向かう。

隣にはサフィ、頭の上には騒々しい場所から離れらることで落ち着いた紫の猫を連れていく。

ご覧いただきありがとうございます。


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