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巡の目覚め

誰かの話し声に誘われて意識が浮上する。


(葵との戦闘で、狐との連携で不意を突いたはず)


戦闘の最後の記憶がないまま辺りを見回す。すると、こちらを心配そうに覗き込むサフィがでかでかと見える。近すぎて鼻息が凄い。話声で起きたと思ったが、この鼻息だったのかと思いそうだ。


「心配してくれたのは分かったから、ちょっと周りを見させてくれな」


サフィの頭を撫でながら視界を確保するため横に退かす。そこには感情的になっている狐と冷静に返している葵少年がいた。


(この言い争いで起きたのか)


一体何で言い争いをしているのか知らないが、戦闘の結果がどうなったのか知るために、言い争いに飛び込む。


「仲良く話し合いをしているところ悪いが、どうなったか教えてもらっていいか」


「仲良くなんかわい!」


「起きたんだね巡君!」


二人の返事は違ったが、タイミングは同じだった。

これで仲良くないとは思えないだろ。


「急に動かなくなったから心配したんだよ。君の意識が残っていれば、あそこからいい勝負が出来たはずなんだけどね」


葵が戦闘前と変わらぬ微笑みでそう言ってくる。

そう言ってくるという事は、決まると思ったあの木刀も避けられていたのだろうか。


「馬鹿言え!お主はこ奴の掲げる木刀を前に諦めておったではないか!最後の呟きが聞こえてないと思っておるのか!」


「わうわう!」


「サフィ様も聞こえたと言っておるわ!」


また狐と葵の言い合いが始まった、しかも今度はサフィまで狐の味方をしている。

だが、争いの原因を考えると俺はあの戦いで勝っていたという事か。そのわりに、木刀が届いてたのなら有っても良いはずの怪我が葵に見当たらないが。


「いやいや、一撃を貰ってもそれで僕が動けなくなるわけじゃないからね?巡君の意識があれば、あそこからいい勝負になることも嘘じゃないはずだよ!攻撃が僕に届き始めた巡君と、攻撃を受けたことで意識の変わった僕でいい勝負になるはずだったんだ!やっと体も温まって来たところだったんだよ!」


「お主はこ奴の実力を調べるために戦いたかったんじゃろ!じゃったら攻撃が届いたところで終わりだし、攻撃受けたからと言ってやり返しに行っては駄目じゃろ!何やる気になっておるんじゃ!」


「僕と戦おうという人も居なくなって久しく、僕が傷を負うなんてどれくらいぶりか。対等に戦えそうな人が出てきたら楽しみになってもしょうがないだろう?」


「お主は世界の守護者。中にいるものが外に出ても問題無いのかを審判する立場じゃろうが!なに自分の楽しみを優先しようとしておるんじゃ!」


「そんなに言うなら君が守護者のままで居ればよかったじゃないか!僕は君の代わりに強制的にこの仕事をやらされているんだよ!少しくらい自分の楽しみを優先しても良いじゃないか!」


手を出さないだけの理性が残っているのなら、止めなくてもいいかと狐の横に居たサフィを手招きし、撫でながら眺めていた。

怒鳴り合いに発展した中で、最後の木刀はしっかりと届いていたことが分かった。

その上で、強力な一撃でも無かったことが分かった。

最後の力を振り絞って放った一撃が、相手にとって脅威ではなかったのか。なら、意識が無くなっていて正解だったのかもしれない。あそこからさらに戦闘継続になっていた場合、やる気になった葵の強力な一撃を喰らう事になっていた。軽い怪我で済めばいいが、治るのに長い時間が必要になる大怪我になった場合その後が大変だった。


「あそこで意識を失っていてよかったと思うなんてな」


「わぅわぅ?」


「俺はあれが最大のチャンスだと思って放った一撃だ。さらなる戦闘は出来ないし、思わぬ怪我に繋がるかもしれなかった。相手の本気を知ることも出来なかったが、悔しいと思うよりも安心してしまってな」


「わうわう」


撫でていた手に来る圧が強くなる。

慰めているのかもしれないと思うと、撫でる手に力が入る。お礼と恥ずかしさの誤魔化しも込めて、両手でサフィの頭を撫でる。耳の後ろや眉間、顎下を撫でると気持ちよさそうな顔をする。


(お礼になっているようで一安心)


気付くと怒鳴り合う声が消えていた。

正面切って争っていたはずの二人が、肩を寄せ合いひそひそと話し込んでいるのが見える。


「争いの決着が着いたのか?」


「お主を中心とした話し合いじゃ!」


「だけどいつの間にか君が話の外に居たから、馬鹿らしくなっちゃって。それに、逸って戦い始めちゃったけど、君に紹介したいのが居るんだ」


逸って戦い始めたって、こっちは葵の話を聞いていたら、突然殺気を放たれて答えたに過ぎないんだが。

それにその話の中で、葵はすでに認めてるとも言っていたはずだ。

一方的に戦いを仕掛けられ、精魂尽き果てた俺の現状を理解しているか?


そんな事を思っていても言葉にしなければ伝わることもなく、葵は何も気にすることなく紹介したいのとやらを呼び寄せる。


「遅くなったけど巡君たちに紹介するよ。緊張してないでこっちおいで。初対面ってわけでもないんだから」


葵が呼びかけるのは部屋の隅。物陰から出てきたのは真っ黒の兎。この部屋に来た時に葵の足元に逃げていた兎だ。


「その兎って、下の階で逃げてった」


「そう。この子はあの子の元になった兎。ビビりですぐに隠れちゃう。で、この黒いでしょ。だから見つけるのがとにかく大変でさ。その性質を下の階層主を作るときに付与したんだ。まさか戦うことなく遊び始めるとは思わなかったけど、それでも巡君の走力、体力、判断力を計るのに有用だったよ」


「その説明だと、その黒兎と下で鬼ごっこした兎は別だろう?初対面じゃないのか?」


黒兎を呼び寄せる時に言っていた初対面じゃないに引っかかりを覚えた巡が、葵に疑問を呈する。

元にしたという事は能力的に似ていても、同じではないんだろう。


「実は、この建物内で出てきた階層主たちは中身がないんだ」


「中身が無い?」


「そう。着ぐるみとでも言えばいいのか、外側しか作らなかったんだ」


「なぜそんなことを?」


「それは元にした子たちにも、君の事を評価してもらおうと思ってね。だけど、直接戦わせるとどちらかは死んでしまう。だから、元にした子たちが乗り込んで戦えるガワを用意したんだ。猿の子なんか、結構君のこと気に入ってたよ!」


衝撃の事実に驚いていると、葵が背後を指差す。

指の指す方を振り返ると、今まで戦ってきた猿を筆頭に動物たちが横並びになっていた。


「なんかカラフルだし、大きさ全然違うんだな」


何とか言葉に出来たのはそれだけだった。

ご覧いただきありがとうございます。


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