新たな同伴者
大狐と虎の風貌の大猫との戦いを壁際で座って見ながらサフィを撫でている巡。
最近狐とばかり話していて、サフィを構う事が出来ていなかったから、この機に有効を深めることにした。
「サフィはあの戦い見えてるか?」
「わおん」
目に意識を集中することでようやく追える戦いが目の前で行われている。これがサフィにも見えているのか確認してみると、見えてるらしい返事が来た。
その上で興味が無いと、もっと撫でろと頭を押し付けてきた。
「撫でるのは止めないけどな。あの上位者同士の戦いは得るものがあると思うんだ」
狐の何かが気に障ったのか、突如大きくなり襲い掛かった猫。
その速さは異常の一言で、大猿が力に吹っ切れているなら、この猫は速さに吹っ切れている。
「あの速さと対抗するのが俺じゃなくてよかった」
「わぅ」
「見えてもついて行けない。ついて行けないなら戦うことも出来ない。一方的にやられるくらいなら俺は逃げるよ」
情けないことを言っている自覚はあるが、生き残るためには必要なことだろう。
それに、やられない方法は思いつくが、それで確実に生き残れるかと言えばそうでもないし。
「力に技で対抗したように、速さには硬さで行くのが良いと思うが、それでもあの猫の攻撃も重そうだしな」
大猿ほどの力ではなさそうだが、あの大狐を吹き飛ばすほどの威力はあるのだ。そこそこの力でも速さが加わると威力は増大する。それに対抗できるほどの硬さを得るためには、鉄鎧程度じゃ足りない気がする。
その点、対等にやりあえている狐に矛先が向かったことは幸運だった。
「何があの猫の琴線に触れたんだろうな」
「わぅわぅ」
「狐が言った言葉?あいつ何言ってたか」
確か猫が寝転んでいて、あまりの警戒の無さに思わず手が伸びて撫でていた。そこに直前に警戒しろと助言をしていた狐が文句を言ってきた。
「大猿と同じって言われたのが嫌だったとか?」
狐が言った「下の大猿と同じなのじゃぞ!」って言葉から、敵対したように見えた。
あの子猫並みに小さく可愛い時と、怪力無双の大猿が同じって言われたら、確かに怒るかもしれないな。
それを理解したってことは、猫自身も自分の事を可愛いと思ってたってことだが。
「俺が敵対されなかったのって、可愛いって撫でてたからか?」
「なんじゃその理屈は!」
サフィを撫でながら独り言のように、状況を整理していると、巡の言葉が聞こえたのか大狐から指摘が飛んできた。
大猫と戦闘中の大狐にこっちを気にする暇があるのかと声の方を見ると、なぜかけもみみ幼女になりこちらに歩いて来ていた。
「戦いはどうなったんだ?」
「猫は気まぐれという事じゃ」
大狐の言葉の意味が分からず辺りを見回していると、胡坐をかいていた足に重みを感じた。
そこを見ると、いつの間に来たのか、大狐と戦っていたはずの猫が小さくなって丸まっていた。
「そこの畜生は逃げ足が速いが、耳も良いようでの。お主がサフィ様を撫で始めた時から気もそぞろになった」
幼女が近づき、戦闘中の猫の様子を話し始めたが、その言い方が気に食わないのか猫は毛を逆立てるように警戒している。実際には口も無ければ毛の逆立ちも無い真っ黒なんだが、本物だったらそうなっていたことだろう。
「可愛いと口にしたときには、妾との戦闘を止めお主の方に走って行っておった。こやつに下の大猿のような狂暴性も無ければ攻撃性すらない。本物の猫のように気まぐれじゃ」
猫の気に入らないことをしなければ敵対されないという事か。
それにしても、最初から撫でられた理由はなんだろうか。下の大猿は部屋に入ったから警戒はされていたし、近づいたら攻撃もされた。
そこも含めて、大猿と一緒にされたのが嫌だったのか。
「これは倒さなくても良いという事なのか?次に行っていいってことか?」
サフィを右手で撫で、猫を左手で撫でながら目の前に仁王立ちするけもみみ幼女に聞く。
「この畜生も戦う意思を感じぬし、別にいいんじゃないかの」
苛立ちを隠そうともせずに、投げやりに答えるけもみみ幼女。
その目はサフィと猫を撫でている両手を行き来している。
(撫でられたいのか?)
そう思い右手を上げると、考えを読まれたのか即座に叩き落とされた。
「妾の頭は安くないぞ!」
その言葉を聞いてサフィも猫もけもみみ幼女に向かってパンチを繰り出す。
そりゃ頭を撫でられてる二匹の目の前でそんな事言ったら、まるで二匹の頭が安いと言ってるようなものだよな。
狐と敵対している猫はもちろん、様付けして敬ってるはずのサフィにも、そんな事言ったら反撃されるだろ。
「戦わずに済むなら、それに越したことはないか」
三匹がじゃれ合いしているのを脇目に、巡は立ち上がり服を整える。
この階は猫と犬を可愛がり狐の戦いを眺めていただけだが、確かに大猿と同等かそれ以上の強敵ではあった。
目で追うのがやっとの敵のその速さ。速度を極めるという事は、相対的に威力を極めるという事。瞬間的に出せる威力は大猿と遜色ないように思えた。
(対処するためには力を殺す硬さか、速度を殺す足止めか。どちらも出来なかった俺が敵対せずに済んだことは本当に幸運だった)
いつまでもじゃれ合いを止めない三匹に声を掛け、別れを告げさせる。
戦わなくていいはずが、このまま放置しておくと戦闘に発展しそうだ。それも、猫対サフィ&狐ではなく、狐対サフィ&猫になりそうなのが不思議だ。
「それじゃ四階に行くか」
立ち上がった右側に控えるサフィ。さらにサフィの右側にいるけもみみ幼女。そしてなぜか頭の上でくつろぐ猫。
最初の子猫のときよりもさらに小さくなった猫が巡の頭でくつろいでいる。
「その畜生と別れるんじゃなかったのか」
「いつの間にか頭の上に居た。無理にはがすと敵対されそうで手が出せん」
試しにはがしてみろと幼女に頭を差し出すが、自分も敵対されたくないのか見るだけで手を出さない。
「お前も一緒に来るのか?」
頭の上の猫に問いかけると、前足で一回軽く叩かれる。
「肯定と言う意味か?」
確認するとまたしても一回軽くたたかれる。
「これから出てくる敵と共謀しないか?」
軽く一回。
「俺やサフィ、狐と敵対しないか?」
軽く一回。軽く一回。時間を置いて軽く二回叩かれる。
「俺やサフィには敵対しないが、狐は駄目だと」
「なんじゃとこの畜生!」
新たな同伴者を連れ、上への階段を上る。
喋れぬ同伴者なのに、賑やかになったな。
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