表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/44

前に逃げる

巡が集団戦の中で奮闘すること数時間。日が傾き、辺りは暗くなる一歩手前と言った時間帯。

これ以上の戦闘は黒い生物が紛れやすくなる時間帯であり、見逃しやすい鼠型や蛇型、猫型だけでなく、遠くから現れる鳥型や猪型、馬型ですら見逃して、被弾するかもしれない。


「鬼の攻撃には当たりたくねえな」


周囲の黒い生物を一掃し、間を埋めるように中遠距離が来ないうちにその場を離れる。

狐たちの方に向かって駆け出す。間にいる猿型は木刀で斬り、猫型や鼠型は逃げていくので無視。空から落ちてくる鳥型の注意だけ怠らない様に走り抜ける。


「逃げるぞ!」


いつまでも休憩すら出来ない現場から離れるように指示する。

何故か黒い生物から襲われない狐だが、サフィや巡を守りに入っても襲われないかは微妙なところ。

安全を確保するためにも、その場から離れることを狐に指示する。


「逃げるったってどこにじゃ」


「とりあえず安全な場所だ!」


大狐の上に乗り、黒い生物の少なくなる領域外に行ってもらうため指示を出したつもりが、大狐は街の中央、人影を見たという建物に向かって走り出した。

狐の真意が分からず、領域外に行ってもらうための指示を出したくとも今までで一番の速さで走る為、しがみつくので精一杯。


狐は集まりだしていた黒い生物たちを飛び越え、建物の動かない自動扉をそのままの勢いで破壊し中に飛び込んだ。


「着いたぞ」


落ち着き払った声で狐が言う。

しかし、巡の目には破壊された入口の前に集まりだしている黒い生物が見える。


「あれのどこが安全な場所だよ」


今にも飛び掛かって来そうな黒い生物に、この後に起きる激戦を予想し木刀を握る手に力が入る。


「いつまでそんなことをしておる。早う飯の用意をせよ」


入り口を警戒していた所、いつの間にか幼女に変化していた狐から声を掛けられる。

警戒している入り口から目を離す訳にはいかないと思いつつも、狐の落ち着きようから何か秘策でもあるのかと、半身になり背後を確認する。


巡が目にしたのは、エントランス内の案内係が居たであろう場所の中に入り、何やらごそごそと漁っているけもみみ幼女の姿だった。


「何やってんだ狐!」


「お主が何も用意せんからじゃろうが!妾が腹を空かせておるぞ!」


何かを見つけたのか、両手に小袋をいくつか掲げながらけもみみ幼女が叫ぶ。

その瞬間だけ入り口の事を忘れ、思わず叫び返す。


「俺にもくれ!」


長時間の戦闘で脳が疲れており、反射的に狐が持つ菓子を要求してしまった。

主に視力を酷使する戦い方をした巡は、視覚で捉えた情報を素早く脳で処理し優先順位をつけ行動に移す。これをあの集団の中で一秒にも満たない間に何度も繰り返していたため、脳が糖分を要求していた。

この後も戦闘があるかもしれないという直前までの緊張感。そのために疲労した脳を少しでも回復させようとする無意識。それらが合わさり、菓子を目にしたとたん反射的に叫んでしまった。


「嫌じゃ!これは妾が見つけたものじゃ!」


「入口を抑えるの誰だと思ってんだ!飯も作れねぇぞ!」


「何を言ってるんじゃ?入り口を抑える必要なんてないじゃろ」


心から巡の事を諭すように言う狐。

その言葉に、入口の方を振り返りながら今まさに飛び掛からんと集まってきている黒い生物を指差す。


「あの大量の黒い生物がいつ襲い掛かって来るか分からない……んだぞ?」


目を離す前から狐が破壊した入り口前に集まってきていた黒い生物。

巡が視線を戻した時、黒い生物はさらに数を増やしていた。

しかし、建物前の戦闘時なら既に襲われていたはずの時間があったはずだが、いまだに入り口前から入って来ない。そのおかしな光景に、差していた指が下がっていく巡。


「黒いのはここまで入って来られんよ。そんなことより馳走じゃ。妾が腹を空かせておるぞ」


菓子を口に入れながら、ご飯を寄こせと言葉を繰り返すけもみみ幼女。

最初の言葉に疑問を覚えるものの、実際に入って来ない入り口を見ているため、とりあえず信用する。


「本当に入って来ないんだな?」


「見ての通りじゃ」


「何で入って来ないんだ?」


「何でじゃろうな」


「ここに入って来ないことを知っていたのはなんでだ?」


「勘じゃよ」


はぐらかすばかりのけもみみ幼女に、質問を諦めた巡。

特に聞きたいのは最後の質問だったんだが、答える気が無いようだ。安全な場所にと言って、迷わずここに入ったことから、黒い生物がここに入って来ないことを知っていたはず。つまりここの事か、黒い生物の事か、何かしら知っていると思ったんだが、答えないならしょうがない。


この建物の上層階で見た人影とやらが本当に存在するのかも怪しくなってきたが、ここに誘導したのは狐だ。上に行けば、狐がここに導いた理由が分かるのだろう。サフィを敬っている狐の事だ。サフィの近くにいれば、命に係わる罠には嵌められないと思いたい。


「それじゃ飯を作るか。と言いたいところだが」


「今夜はどんな馳走かのう。天ぷらにハンバーグ。親子丼に餃子。カツカレーも捨てがたい!」


楽しそうに今まで作って来た料理を羅列していくけもみみ幼女。

それだけ飯を楽しんでくれていると思えば嬉しい事だ。そのため、残念なお知らせをしなければいけない事に胸が痛む。

嫌、嘘だ。手間のかかる上に数を作るのが面倒くさいものばかりを羅列していく狐に、どうすれば、また自分で作るように仕向けられるか考えてしまう。


「楽しそうなところ悪いが、何も無いからな」


「ん?何が無いんじゃ?」


「飯に必要なものがだ。調理器具も無ければ場所も無い。それに何より食材が無い」


リュックは最後に泊まった所に置いてきた。

集団戦の経験を積むために街の中央に来ることを決めてから、戦いの邪魔にしかならないリュックは最後に泊まったところに置いて行くことにした。休憩が出来ないほど現れるとは思わなかったが、こんなところで寝泊まりが出来るとは思えなかったので、戻るつもりだったのだ。

それが狐の勘で建物に入り、入り口を塞がれることになった。


「飯が食いたいなら調達してこなければならない。あの壁を越えてな」


外に食べに出るのか、食材を調達して戻って来るのか。

どちらの選択肢を取るにしても、壊れた扉よりも分厚くなった黒い壁を越えなければ、外に出ることは出来ないだろう。


「妾の邪魔をするものは全て排除する!!!」

ご覧いただきありがとうございます。


この作品が「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくださった方は

ブックマーク登録や下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして下さりますと私が喜びます。


よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ