集団戦
昨日分が同時にあがっています。
そちらからお読みください。
多種多様な黒い生物との集団戦の経験を積むために、大狐に乗って街の中央へ移動すること数時間。
スリングショットの早撃ちの修行の為、少しだけ遅くした移動でも、歩きでの移動より断然早く中央に着いた。
狐が人影を見たという建物の前で降ろしてもらい、既に寄ってきている多種多様の黒い生物との集団戦を始めた。
「今までにない連携だっ」
力の強い鬼型が近接戦、猿型が物を投げながら、時にその長い腕で直接殴って来る。その二種の隙を縫うように空から鳥型が、死角から猫型が襲いかかってくる。この連携の中無造作にやって来る鼠型の嫌らしさ。一息つきたいときに最大の連携で襲ってくる犬型。そして、どこから来たのか通り過ぎるように襲ってくる猪型もいれば、鬼型や猿型ごと轢いてくる馬型。
ここにきて黒い生物の種類が増える増える。
猪型は直線的に走って来るだけであり、避ければそのまま走り去るので対応は簡単。倒すためには通り過ぎる一瞬を狙うか、遠くにいるうちに飛び道具で急所を狙うしかないので大変だが、スリングショットの命中率を上げるためにはいい的である。
厄介なのは馬型の方である。
他の黒い生物も纏めて集団で轢きに来るため、避けるのも一苦労。目の前の対処に集中してしまうと意識の外から襲ってくるため、常に広い視野を持つことが要求される。
ずっと同じ場所で戦い続けてしまうと、避ける場所の確保も難しくなるため、常に動きながら戦わないといけない。体力がある内には問題ないが、休憩を取るためにはどうすればいいのかも頭の片隅で考えているため、鼠型の対処が遅れることがある。
巡が集団戦をしている間、サフィと狐も同じように襲われているのかと思えばそれは違う。
どういうわけか狐は襲われることなく、そして、大狐がサフィを守るように座っているため、全ての黒い生物が巡目指してやって来るのだ。
「新手が来たぞ」
戦闘風景を眺めている狐から巡に向かって注意が飛ぶ。
その声に従って素早く周辺に視線を向けるが、新手が見当たらない。
「どこだ!」
黒い生物の姿形から、攻撃方法の予想が出来るため、新手の姿からどんな攻撃をして来るのか予想がしたいのだが、姿が見当たらなければそれも出来ない。
そのため狐に問い返すも、自分の役目は終わったとばかりにサフィに意識を集中している狐。
これ以上のアドバイスは貰えなさそうだ。
(新手ったって、見つけられなきゃ対処できないんだぞ)
見つからない新手に注意を割きつつも、目の前の対処をしていく。
鬼型と猿型を木刀で倒し、鳥型に飛び道具で、猫型に視線で牽制をしつつ、犬型には刺激玉投げ空間を確保する。鼠型は暇になった猫型が追いかけだしたので無視し、猪型はどこかへ駆け抜け、馬型は団子じゃなければ轢きに来ないらしく、遠くで眺めている。
(新手はどこだ)
周囲から黒い生物を追いやった空間で新手が居ないか観察するも、一本の影が巡に向かって伸びていることしか分からない。
(電柱の影か)
その時巡は気づいた。
馬型の攻撃を察知するために視野を広げていたのが功を奏した。他の電柱やビルの影の伸びる方向と、巡に向かって伸びる影の方向が違っているのが分かった。
巡が違和感に気づいた時、影もまた気づかれたことに気づいたのか、巡に向かって蛇行しながら向かってきた。進行方法通り、影ではなく蛇だったようだ。
(毒があったら厄介だ!)
蛇行する姿に狙いがつけ難いが、一度大きく避けてから予測をつけ小石を放つ。動きを止め頭を上げたところを木刀で遠くに弾き飛ばした。
「切れ味無いと蛇なんて切れないだろ」
蛇の対処で思いついたのが、口の狭い容器に入れるか、頭を落とすかだったため、そのどちらも出来ないと判断し時間を稼ぐことにした。
(速く対処を考えないとな。倒せないなんて、数が来たら厄介だ)
一時的に出来た周囲の隙が埋まり、再び多種多様の黒い生物に囲まれながら、新手に対する対処を考える。一番確実なのが小石ではなく鉄球を蛇の頭に当てる事。しかし、無駄打ちしても痛みのない小石でさえ命中率が高くない早撃ちで、数に限りのある鉄球でやるには、躊躇いがある。
(それでも頭を潰すのが、今のところの最適解か)
蛇型は影に見えるほど薄いため、見つけることが困難だが、近づいてくるときに独特な動きをするため、視野を広く持っていれば気づけるか。他の対処をしていると気づけないか。
(視力の良さだけでは限界か)
「狐ー。気配察知を教えてくれ!」
「気配察知?妾が分かるのは音だけじゃぞ?音の発生の仕方から、方角、距離、重さ、数が分かる程度じゃ。じゃから外れることもある。それに比べお主の視力は、視れば方角、距離、数に加え、相手の特徴まで分かるのじゃ。妾より優れておると言えるじゃろう」
「見つけ難い敵だから、視る以外に分かる方法を手にしたいんだが」
「付け焼刃で出来るわけないじゃろ」
巡の申し出は狐に一蹴されてしまった。
言われてみればその通りなんだが、目で見つけにくい蛇型に対抗するためには、付け焼刃でも他の手段が欲しかった。
(いっそのこと、他の鬼や猿に踏みつぶされれば楽なんだが)
他と連携などしてこない鼠型や他を巻き込む馬型の前例がある為、蛇型が踏まれないとも言えないんだが、さっきの影に徹しているときに踏まれていないことから、あまり期待は出来ないだろう。
スリングショットの命中率をこの戦いの中でさらに上げるしかないか。
(蛇の頭とか、鼠と変わらないだろ)
集団戦の経験を積むためにここに来たのに、さらに課題が増えていくことに不安が募る。
しかし、生き残るにはやるしかない。
決意を新たなに包囲を狭める黒い生物たちと対峙する。
「わおん」
「あちらですか?さっきあ奴が蛇を飛ばした方向ですね」
「わぅん」
「動きは聞こえないですが、蛇は音を最小限に動くのでそもそも感知し難いものでしょう」
狐はそう返したが、サフィは狐の守りから抜け、巡が蛇型を飛ばした方に歩き出す。
「どこかへ行ったのではないですか?」
サフィの後を狐もついて行く。
「わおん」
「これは……」
サフィが示す場所には、既に空気中に溶ける様に消えかかっている、首の部分から千切れている蛇型の胴が転がっていた。
「あ奴、木刀でこれをやったのか。真剣なら切り飛ばすところを見たことあるが、あ奴でも木刀で出来るかどうか」
「わおん!」
「はい。妾の想像以上の成長を遂げているようです」
二匹は集団の中で奮闘する巡を見ながら、会話を続ける。
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