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街の中央へ

予約投稿を忘れていました。

スリングショットを手にしてから数日、黒い生物が多くなる領域の外でスリングショットの精度を高め、ようやく満足する精度を確保できた。


「投石の経験が生きたな」


スリングショットの修行中に投石で痛めた肩も治っており、弾を引く動作にも支障なし。しっかりと止めることが正確性に繋がり、歩いている狐の上からでも鳥型まで当てることが出来るようになった。

鼠型は命中率三割を上下しているが、投石よりは当たるようになっている。


「そろそろ次に進んでいいと思う」


「そうじゃな。お主の飛び道具の精度も使える程度にはなってきおったし、数が増えてもやられはせんじゃろう」


狐の許しが出たことで、領域内に入ることにした。

領域の内外を明確に分けるものは見えないが、狐が言った通り、少し進むと鬼型が三体路地から現れた。さらにその鬼型を追うように、鼠型が十体ほど現れた。

鬼型は追いかけて来る鼠型に対処することで精一杯のようで、通りを進んでいる巡たちに気づいていない。しかし、鬼型を追いかけてきた鼠型は、鬼型のさらに奥に見える大狐に気づき、数匹逃げ出した。


「黒い生物って協力関係じゃないんだな」


「黒いのは黒いので、生態系があるようじゃの」


「倒したところで出てくるのはガラス玉だが、何を糧にしてるんだろうな」


「そんなこと、あれらを作り出したものしか分からぬであろう」


大勢で襲っていたから鬼型に脅威を与えていたが、数匹が逃げたことで鬼型優位の本来の姿に戻った。

息を吹き返した鬼型が鼠型を蹂躙する姿を見ながら狐と話していたが、終わればこちらに矛先が向くことは確定。不意打ちが出来る内に数を減らそうとスリングショットを構える。


「戦いは始める前に勝敗が決まる」


放つ瞬間に狐がどや顔でそう言った。


「それだけ準備を退治にしろって事だろ。誰から聞いたんだそれ」


一番手前の鬼型の首を貫いて行った小石を眺め、二発目を準備しながら狐に返す。


「本ばかり読むやつじゃった。だから妾がたまに外に連れ出しおったものよ」


「それって狐が外で遊びたかっただけじゃないのか?」


狐との会話を続けながら、二発、三発と小石を放つ。

二発目は二体目の黒鬼の右足を貫き態勢を崩した。三発目は、三体目の胸真ん中を貫いた。


(早撃ちはまだ安定しないか)


「海以外に興味を持たぬあ奴が悪いのだ。じゃから妾が山や神社に連れて行ってやったのじゃ」


狐の何かを刺激してしまったようで、巡が話を聞き流しスリングショットで黒鬼の対処している間もなにやらブツブツ呟いている。

狐がいつから生きてるのか知らないが、現代ではないだろう。そうすると本が貴重だと思われる時代で本を読める人物。かなりの身分、金持ちだと思われる。

「博打にも興味を示さんとは……」って、そんなところ連れて行くなよ。

勝手にいろんなところ連れ出して、それがバレてあの岩場に封印されたとかか。


「鬼型の対処終わったし、進むぞー」


未だ自分の世界に浸っている狐を呼び戻し、先に進む。

しかし、すぐにまた別の黒い生物が前を塞ぐ。と言うより、路地や空から降ってわいてくる。

電柱の上から猿型が物を投げつけてちょっかいをかけてきたり、鳥型が五羽くらいの塊で突撃してきたり、犬型がどこからか追いかけて来たり、猫型がサフィや狐のしっぽに飛び掛かってきたり、鼠型が数を揃えて襲い掛かって来たと思ったら、サフィの一鳴きで散り散りに逃げていったり。

十分に一回程度のペースで足を止められるため、進行はゆっくりになっていたが、怪我を負うことなく退けていった。


「このペースだと、中央に辿り着くのはいつになるのか」


「妾の背に乗っていくか?」


狐の提案に飛びつきそうになるが、岩場に行く時を思い出し、考える。

敵の一番の密集地は目的地である街の中心地。そこは通り過ぎただけだが、ここより二倍三倍の敵が居たように思う。


「今の俺が街の中央に行って、生き残れるか?」


「生き残ることは可能じゃろう。そのための剣術であり、その飛び道具であろう」


「聞き方を変える。狐が見たという人影まで、俺は行けるか?」


目標は狐が街の中央の建物で見たという人影。そこに何かこの状況の手がかりがあると思っていくのだ。その建物の中に入れなきゃ言っても意味が無い。


「お主の独力でなら無理じゃろう。さっきも言ったが、生き残るだけなら可能じゃろうが、押し進むには経験が足りぬ」


「なら経験を積むしかないよな」


剣の修行に既に二カ月半時間が掛かっている。自分の身を守るためとはいえ、時間を掛け過ぎてしまった感が否めない。手っ取り早く経験を積むには、危険を冒してでもその状況に身を置くことだ。


(生き残ることは出来ると狐のお墨付きだしな)


大狐の背に乗り、街の中央へ行くことを告げる。

剣の修行の前は、速く行きたいと言っていた狐だが、渋るように何度か拒否したが、最後には巡の「足りない経験を積むためであり、無理を通すためではない」という言に折れ、走ってくれた。

渋った巡と急いだ狐だったが、立場が逆転したことに、巡は笑ってしまった。


「道中出てくる奴らはどうするのじゃ。無視するのか?」


「この速さでも当てられるように、スリングショットの練習にする。小石の予備は十五個だから、撃ち尽くしたら補充したい」


その時は倍以上の小石を補充しておこう。この移動で極力狐の上から降りないようにしなければ、狐に乗っている意味が無いからな。


今まで以上の高速移動に再び命中率が駄々下がりだが、多種多様の黒い生物が出てくる集団戦では、このくらいのスピードについて行けなければ、せっかくの飛び道具も使えないかもしれない。


(敵が入り乱れる中、隙を突くためには早撃ちも習得しないとな)


大狐に乗りながらスリングショットで早撃ちの修行をする。一度の補充で拾う小石の量は増やしたものの、外すのもあるが、そもそも出てくる敵の数が増えたため、補充する回数もほとんど変わらなかった。

そのため、動き足りなかったのかサフィは狐の横を並走するように走っている。小まめな休憩がある為、問題ないと判断したが、たまに倒した黒い生物の所に行っているのが気になる。

倒した後に残る物なんてガラス玉だけだから、初討伐の鬼型以降の物は小石の代わりの弾として使ったり、狐に乗ってからは、放置してきたんだが、サフィは何をしているんだろうか。


「拾ってくるわけでもないんだよな」

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