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戦うということ

命を奪う意味を理解し、体が凍り付いたように動かせない巡だが、敵であり迫ってきている黒い生物から目を離すことだけはしなかった。

そのおかげで分かったことだが、極限状態に入ったわけでも、突然の異能に目覚めたわけでもないが、敵が巡に到達する事は無かった。狐による石の投擲のおかげで、心の平静を取り戻すほどの時間があったのが幸いした。


(よく見れば、あの黒い生物が狐やサフィと同じには見えないよな)


他の黒い生物もそうだが、形はヒト型だったり、他の動物を模していたりしているが、目のある場所に目が無く、口のある場所に口も無く、すべてが黒く染まっているあの生物に、躊躇する必要があるのか。


(生物ですら無いのかもしれない)


そんな事を思えば、命を奪うという感覚にも違和感を覚え、動く無生物を相手にするような感覚になる。

生物の形を模倣しただけの無生物。精巧に作られた機械のようなものだと思えば、躊躇することなく斬れるかもしれない。


(見た目が真っ黒じゃなければ、違ったかもしれないが)


心の整理がつき、敵を斬る覚悟が出来た時、敵が細部までしっかりと確認できるところまで迫ってきていた。

ヒト型の黒い生物には武器は無く、危険なのは鋭く伸びて見える爪のみ。その歩みはよろよろで、しっかりと腕の振りを見れば避けられそうだ。頭部に角みたいなのが見えるため、鬼のようだ。


(ヒト型で良かった。動き方が予想できる)


警戒は怠らずに、しかし、緊張しすぎないように軽く木刀を握る。

無生物相手だとしても、怪我をするかもしれないと思えば、ふらふらの敵でも楽観視は出来ない。


ふらふらと近づいてくる黒い鬼。

安全策を取り背後、もしくは横から攻撃するためにじりじりと移動する。

黒鬼の標的は木刀を持つ巡ではなく、攻撃を仕掛けてきた狐の方に重きを置いているらしく、動く巡を気にしつつも、狐を目指して迫っていく。


(不意打ちは確定。なら、確実にやる!)


完全に狐の方を向いた瞬間を狙い、黒鬼のふらふらの足を払う。歩こうとする足の間に木刀を挟むだけで簡単に転ばせることが出来、転んだ黒鬼の攻撃は届いてもひざ下まで。より安全を確保できた。

横に回り、立ち上がろうと地面に着いた手を狙い叩く。正確に狙いすぎて力はそこまで入れられなかったが、重力を使った振り下ろしだけでも、そこそこの攻撃にはなったようで、手が地面を滑る。

最後に頭に木刀を振り下ろす。手より的が大きいため、正確性よりも威力を重視。狙った脳天は外れたが、頭にはしっかりと当たり、ビクビクと体を振るわせた後、完全に動きを止めた。

そして溶ける様に消えていく。


「これは……」


目の前の光景に言葉を詰まらせる巡。

自身の精神の安定のために、生き物とは違ったものと認識を誤魔化していたら本当に別のナニカだったとは思わなかった。


(まるでゲームみたいだ)


あるわけないと思いながらドロップ品があるかと、黒鬼が消えた辺りを探してみると、何か光るものがあった。


「倒せたようじゃが、まっすぐ振ることも出来んとは。狙ったところに当てられないなど、せっかく見つけた隙を見逃すようなもの。少々訓練が必要そうじゃな。最低限真っ直ぐ振れて、狙った場所にしっかりと当てられるようにならんとな。……それはなんじゃ?」


巡の戦いを振り返りながら狐が近づいて来た。

内容から、巡が主張していたゆっくり進行にしてくれたようだが、訓練は誰が請け負うのか。戦闘始めの的確な助言から、狐が剣の師になるのか。


「なんだろうな。黒鬼が消えた後にあったんだが」


「なんじゃろうなー。きらきら光って綺麗じゃが、何の役に立つかもわからんしの。とりあえず、お主が倒した初の戦利品じゃ。取っておけ」


狐の言葉を受け取り、巡が貰い受けることにした。

念のため、サフィにもこれが何か知らないか見せてみるも、興味が無い様子。

そういえば、サフィは岩場警戒中に黒い生物を倒していたように見えたが、追い払っていただけか?

倒していたら、見たことあるはずだしな。見慣れて興味が無いのか?


戦利品をリュックの小さいポケットに入れ、大切に保管。

降ろしていた荷物を背負い、移動を開始する。


「さっきの事だが、剣をまっすぐ、狙ったところに振れるようにって、何か案はあるのか?俺一人で反復練習しても、修正してくれる奴がいないとミスったときに気づけない」


巡が木刀に触れながら狐に問う。

正しい振りを知らないと、反復練習も意味のないものになってしまう。動画で正しいものを見ることも出来るが、見るとやるは違うもの。やはり、見本を知りたいところだ。


「それは妾に剣を教わろうとしているのか?残念ながらそれは出来んぞ。妾は剣を握ったことすらないからの」


狐の返答に、剣を習得するために何が必要なのか考え始めるが、武術を習ったことの無い巡には、何が必要なのかすら分からない。


(最初にやるべきことはなんだ?自分に合った流派を知ることか?それとも剣を振ってみることか?すべてに通ずる基本の型とかあったりするのか?)


「じゃが、最高の剣を見たことはある。実践ではないが、見本としては最高の物であろう。それとお主の剣を見比べて、修正してやることは出来るぞ」


狐のその言葉に、考えを放棄する。進む道が見えたことで、戦いだけに集中していた思考に周りを見る余裕が生まれた。


「夕飯どうするか」


茜色に染まる空を見ながら巡は呟く。

その言葉に耳ざとく気付いた狐が騒ぎ出す。


「馳走は豪華に!食後の甘味を忘れるでない!冷たい奴だぞ!」


「そうだったな」


クーラーボックスを持って来た意味を忘れるところだった。

狐の手加減のおかげで、楽な戦いで初勝利を飾れたと思っていたが、自分で思っていた以上に疲弊していたようだ。


戦いの前の目的を思い出し、料理の出来る施設を探す巡たち。

ホテルや旅館ならいざ知らず、他人の家に勝手に入るのは憚れる。


(家主が居ないことは同じなのにな)


温泉街手前の街だからなのか、ホテルが散見されたので、適当なところに入り、厨房を拝見。

丁度良いサイズのフライパンがあることを確認し、今日の宿泊場所を決定する。


「やっぱり疲れてたんだな」


親子丼を作った夕飯は、少々卵が固くなってしまったが、焦がさなかっただけマシだろう。

狐は親子丼以上に食後のアイスを気に入ったようだ。食べすぎると腹を冷やすと忠告したのにもかかわらず食べ過ぎて、腹痛で床を転げまわった。


(これに剣を教わるのか……)

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