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うどんと海鮮丼

温泉に入ったあと、腹が減ったと騒ぐ狐の為に何か作ることにした巡。

厨房を借り、人が居ないことを良いことに、食材を漁る。


(温泉宿だからか、種類が豊富だな。大量に作れて、腹を満たせるもの)


大食らいの狐の胃袋を考え、簡単に、早く、大量に作れるものを考える。


(家じゃ出来ない大量の油を使える。海鮮も山菜もある。味変するのも簡単だし、あれにするか)


まずは大量のお湯を沸かすため、鍋に水を入れ火にかける。

お湯が沸けば、うどんを入れ茹でる。

茹でてる間に、麺つゆも作っておく。おかずを作っている間に冷めるだろう。


次に食材の下ごしらえ。

さつまいもやかぼちゃ薄切りに。ししとうは洗った後水気を切って。茄子を半分に。海老は殻を剥き、かにかまはそのまま。玉ねぎは薄切り、にんじんを千切りし三つ葉を3㎝ほどに切っておく。

薄力粉と全卵、水を少しダマが残るくらいに混ぜる。

下処理を施した食材に小麦を薄くまぶした後、上で作った液体に潜らせる。

170°に熱した油に具材を落とす。全体がきつね色になれば出来上がり。

玉ねぎ、にんじん、三つ葉はまとめて衣につけ、お玉で静かに油に落とす。

家でばらけない様に作るのは大変なんだが、綺麗に出来た。やはり、油の量、火力の問題なのか。


大量のうどんと、満足するだけの天ぷらを作ったが、安心できない巡。

そこで、白米を炊き、刺身を切っておくことにする。


(刺身で食っても良いし、海鮮丼にも出来るな)


ネギや天かす、ミョウガなどの薬味を作り、狐が待つ部屋に向かう。

休憩室に向かうと、狐の姿は無く、サフィだけが居た。

狐の居場所を聞こうとした巡だが、サフィがおもむろに歩き出したため後を追う。

着いた場所は川の見える景色の良い部屋だった。

中に入ると、くつろぐけもみみ幼女。人に飯を作らせている間に、宿を満喫している狐に思うところが無いわけではないが、静かに薬味を置く。


「自分で食べる分は自分で持つように」


食堂と隣接している休憩室ならまだしも、この部屋まで運ぶのは流石に遠い。

それにこの狐の大食いだと、何往復もしなければいけない。

せっかく温泉に入って汗を流したのに、また汗をかく破目にはなりたくない。


不貞腐れているけもみみ幼女を伴い、厨房へ行く。

幼女には天ぷらを持って行ってもらう。ボウルに移した大量のうどんは巡が持って行き、二往復目で狐には刺身を、巡が釜ごとご飯を持って行く。


「家じゃなかなかできない天ぷらうどんと、海鮮丼だ。まずはうどんから食べろ」


幼女にそう言いつけ、サフィのご飯を用意する。

今回はブレンドカリカリに加え、うどん茹でるついでに鶏肉を拝借して一緒に茹でた、ほぐした鶏肉も入れる。


「大活躍だったからな。ご褒美だ」


「わおん!」


サフィの頭を撫で席に着く。

さっきのやり取りを見ていたのか、巡が席に着くなり狐が抗議してくる。


「妾も頑張ったぞ!」


「だから、いつもより手間を掛けた料理にしただろ」


器にうどんをよそいつゆを注ぐ。薬味を乗せ、てんぷらは別に盛る。


「まずは普通に食べてみな」


幼女に差し出し、自分の分を作り始める。


(狐程食えないからな)


一杯目から好みのうどんを作り出す。

うどんをよそい、つゆを注ぐのは変わらない。しかし、注ぐつゆは少なめに、明太子を乗せ、卵も落とす。それを混ぜる。明太窯玉うどんの完成。


(刻みのりも用意すればよかったか)


次回の改善点を出しながら、食べ始める。


(美味いな。さすが店にあるうどんだ。素人が茹でたのに、しっかりとし弾力がある)


天ぷらを楽しみながら食べ進めていると、対面から視線を感じる巡。

正面を見ると、手を止めて巡を見つめているけもみみ幼女。


「なんだ?」


「それ、美味そうじゃの」


「今のを食べ終えたら作ってやるよ」


「約束じゃぞ!」


吸引力の変わらない掃除機並みに、啜りだすけもみみ幼女。巡より多く、大盛り以上によそったのに、どんどん減っていくうどん。狐の食欲には驚くばかり。


「食べたぞ!お主と同じものを作れ!」


要望通り同じものを作る巡。しかし、その量は倍以上にする。

それでもペロッと平らげる狐。

その後、少しのアレンジを加えながらおかわりすること二回。

大量に茹でたうどんがすっかり空になった。


「もううどんが無くなったか」


けもみみ幼女はうどんで満足したようだが、巡は給仕をしている間に少しお腹に余裕が出来た。

そのため、小さな海鮮丼を作ることにした。


(いかにまぐろにサーモン。イクラがダメになってないのは嬉しかった)


スーパーで買う安い海鮮と違って、新鮮さを感じることが出来る。

ミニ海鮮丼を堪能していると、これまた対面から視線を感じる。


「食べたいんだな?」


「うむ」


腹いっぱいになったんじゃないのかと思うものの、余らせるよりはいいかと、海鮮丼を作る。

大食らいの狐だしミニじゃなくても食えるだろ。


狐は刺身はもちろん、釜も空にした。

食休みご、これからの事を話し合う。


「お前の思い当たる場所を教えてくれよ」


「ここに来るまでに街の中央を通ったのを覚えておるじゃろう?」


「数時間前の事だからな」


「特に黒い生物の集まっていた場所があったじゃろ。そこの建物の最上階に人が居たように見えての。妾も走っておったし、黒い生物が邪魔をしておったから駆け抜けたが、行く当てが無いというのなら行ってみるのも手じゃないかと思ったのじゃ」


狐の話を聞き思い出すも、街の中央の建物までは思い出せても、最上階の風景までは思い出せない。

地表から距離があったこともあるし、黒い生物に集中していたこともあり、意識を他に向けることが出来なかったが、狐は気づけたのか。あの時の狐の反応は、その何かに気づいたこと反応だったのか。


「俺以外の人か。黒い生物の集まる場所ってのも含めて、手がかりがありそうだな」


他に手がかりが無くなった以上、そこに行くのが道理か。

新たなに食料を確保し、街の中央に向かうとするか。


「ただ、行くのなら覚悟せよ。通っただけであの量の黒いのが居たのじゃ。その中心地に向かうとなると、どれだけの黒いのが襲い掛かって来るか分からない。お主も戦わなければいけない状況になるかもしれん。その時、躊躇なくその剣を振れるか?」


動揺を悟られない様に、木刀を握り、震えを誤魔化す。


(護身用に持って来ただけで、剣術なんて習ってないぞ)


木刀を試し振りしながら、どれが正しい振り方なのか悩む巡だった。

ご覧いただきありがとうございます。


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