夕焼け小焼け
サフィに案内された、小さなお社のある神社だったが、この状況になった原因のようなものは見当たらなかった。
「達筆過ぎてこの木札に書かれている文字も読めないし、此処も何も無しか」
読めない木札をお社の中に戻そうとした時、横からケモミミ幼女にひったくられる。
「さすがに全文は読めぬが、此処を見よ。大神と書かれておらんか?」
狐がその個所を指で差し示しながら、巡に見せてくる。その個所を見ると、確かに大神と読めそうだと思う。
(大神。おおかみ?だいじん?前後が読めれば大神の読みも分かりそうだが、無理か)
前後を読もうと見てみるも、ひらがななのか崩した漢字なのかも分からない。
「最後にお社の中に置いてあったはずのものを探すか」
お社の中には長年何かが置いてあったような跡があった。それが無くなったのがこんな状況になる前なのか後なのか分からないが、それが原因かもしれないなら、探さないという判断にはならない。
サフィの鼻を借りようとするも、なぜか非協力的。ここに着いてから、お社の前でくつろぎ動こうとしなかった。鋭い嗅覚で何か見つけられるかもと期待したが、しょうがないか。
綺麗に管理されている境内を巡とけもみみ幼女の二人で探すも、それらしいものは見当たらない。
誰かに壊されたのかもしれないと、砂利道も探してみたが、角が丸まっている砂利しかなく、破片が転がっていることは無かった。
「見当たらないのじゃ」
「手のひらサイズみたいだからな。盗まれたか」
サフィの嗅覚なら犯人を見つけられないかと期待するも、動きは無いようだ。
サフィが動かないという事は、この状況になる前に既に無かったと考えるべきなのかもな。
「他に気になる物も見当たらないし、次に行くか」
サフィを起こし、お社に探索の礼を皆でした後、鳥居を通り外に出る。
一歩外に出ただけで薄暗く感じるこの路地裏。
神社だけ光が当たっているのは、神がいないとは思えない神秘さを感じる。
「それでどこに行くのじゃ?」
「俺の自宅、サフィの神社に手がかり無し。後は狐の岩場だろ」
生きているものが巡、サフィ、狐しか分かってない以上、それらに関係する場所に行くしかない。
まさか黒い生物の発生地点を探しに行くわけにもいくまい。
倒してみるって手はあるが、安全な方から先にやるべきだろう。
「でだ。北の岩場で暖かいと言っていたが、どれくらい北か分かるか?大きさからして、そこまで離れた場所ではないと思うんだが、近くで岩場に思い当たる場所がない」
温泉地だと予想はしたが、巡が知る温泉地は結構距離があり、歩いて行ける場所ではない。しかし、狐の大きさからして、そこまでの移動は出来ないだろう。さらに、巡が目覚めてからお昼前までに巡の自宅に来れる距離なら、巡の知らない、言ったことの無い穴場のような場所だと予想する。
「妾が目覚めた場所の。かなり移動はしたと思うぞ?妾は、これ以外にも変化出来るからの!」
そう言うとけもみみ幼女が煙に包まれる。
これまでの変化時と同じようにどこからか煙が溢れ出し狐を包み込むが、煙が止まることなくさらに大きくなっていく。煙が揺らぐため、おおよその大きさでしか計れないが、犬にしては大きめなサフィの三倍。巡の身長を優に超える高さの煙の塊になった。
「これで移動して来たからの。近くまで行けば分かりそうじゃが」
煙が晴れると、サフィの三倍、耳の先が二階に届きそうなほど大きくなった狐が居た。
(体積どうなってんだ……)
さっきまでの幼女はもちろん、小さいほうの狐でも移動距離は狭いと予想できたが、この大きさになれるなら一気に広がった。もはや、巡の予想は意味のないものになり、どこまで移動できるかの予想も出来なくなった。
この大きさの狐がどれくらいの速さで移動できるのか分からないからだ。
「ん?黙ってしまってどうしたのじゃ。妾の目覚めた場所に行くのではないのか?」
「その予定だったんだけどな」
(大きくなりすぎてどこまで出かけることになるのか。近いと思ったからこのまま行けると思っていたが、遠くなら交通手段を考えないといけなくなった)
大きくなった狐を見上げながら、頭の中で急速に思考する巡。
サフィも自分より大きくなった狐を見て驚いている。
しっぽが地面に着くことこそ無かったが、下がってしまっている。自分より三倍も大きい相手だからな、逃げないだけで勇気ある。
(目覚めた時間が同じなら、狐がこの大きさで家に来るまで掛かった時間は、昼前までだから四時間程か?速度にもよるが、かなり遠くから来たことにならないか?)
「どうやって狐の目覚めた場所まで行くか。その背に乗せて行ってくれたりは」
「お?最初からそのつもりでおったが、乗らんのか?ならサフィ様だけ乗せていくからお主は勝手について参れ」
そう言って狐が伏せをするが、それでも高さがある。それに、たとえサフィが乗ったとして、移動中に落ちる可能性の方が高い。
巡がサフィを狐の背に乗せた後、サフィの後ろに乗り、手を回してサフィを支える。
(俺ごと落ちる可能性の方が高いか)
「お主が乗ることに許可を出した覚えはないが?」
「狐は最初から俺が乗ることを予定していたんだろ。その好意に甘えさせてもらうよ」
狐は嫌そうな顔をするかと思ったが、口角を上げたように見えた。
(そういえば、幼女じゃなくなったのに会話できてるな。狐なのに)
でかくなった狐の上に巡とサフィが乗り、狐の目覚めた場所に向かうため、動き出すを待っていたが、しばらく経っても動き出さない。
「どうしたんだ?」
「すまんが、ここってどこなんじゃ?あの家にまっすぐ来たから、あの家に戻らんと道が分からんのじゃ」
狐のその一言で、一旦家に戻ることにした。
路地裏を通ってきたため巡も道が分からず、サフィに案内してもらった。
「狐が大きくなれるのは分かったが、それでどれくらいの時間が掛かるんだ?」
「一刻は掛からんと思うぞ?」
(一刻って確か二時間だろ?予想より短いが)
「お前起きたの何時だ?」
「岩場で正確な時間が分かるわけないじゃろ。まあ、日はだいぶ昇っておったと思うがの」
他愛もない会話をしながら、サフィの後ろに着いて行き路地裏を出るころには、夕焼けが綺麗な時間になっていた。
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