空のお社
「外に出たら、いつ襲われるか分からない。各自警戒は怠らないように」
巡が家を出る前に最後の注意を促す。
それに静かにうなずく二匹。
巡が外に出る準備を整え、サフィのお散歩セットを手に二匹の話し合いの場に行くと、サフィが話せと言う仕草をし、狐が震えながら答えるという構図が出来ていた。
当社はけもみみ幼女にサフィが圧を掛け、質問に答えてもらおうと思っていたが、狐に戻ってしまい、人語を通さない話し合いになってしまった為、改めて狐には質問をしなければならない。一度答えたことを、素直に答えてくれるか不安になる巡だった。
「これから外に出る。準備してくれ」
話し合いをしている二匹の元に行き声を掛ける巡。
巡が来てしっぽを振り始めるサフィ。対して狐は助けが来たとホッとしたような、二人の時間が終わって悲しそうな表情をした。巡が来たからか、狐の震えは止まったようだ。
「この状況になった原因を探しに行くぞ」
狐が何かを言いたそうにしているが、けもみみ幼女で人語を話してくれないと分からないからな。
「言いたいことがあるなら人語を話せ」
巡がそう言うと、狐は煙に包まれ幼女になる。
「この状況って何のことじゃ。原因って何が起こったというんじゃ」
いかにも不満があるという顔で聞いてくる狐。
「サフィに聞かれていると思ったが。さては話し通じてないな」
巡が言うと、慌てだす狐。その態度で、答えを表しているようなものだ。
「そ、そんな訳ないであろう!何を馬鹿なことを言うか!」
「それなら改めて言うが、この街に人が居ない」
巡はこの街に自身以外の人が居ないこと。朝起きたらこうなっていて、記憶の中に原因が無い事。そして、この家の中にも原因になる物が見当たらないこと。人ではないが、生きているのがサフィと狐の為、それぞれの目覚めた場所に原因になる物が無いか探しに行きたいことを話した。
「原因になるようなもののー。妾の起きた場所に何かあったのかの?周りは岩場ばかりであったから、何かあれば気づきそうなものじゃ」
「岩ばかりなのはさっきも聞いた。それに狐の方は少し遠そうだ。だから先にサフィの所に行きたい」
案内してくれるか?と問いかけたところ、大きく頷くサフィ。心配していた、黒い犬に追われて目覚めた場所が分からない、なんてことは無さそうだ。
「それじゃあ案内よろしく」
サフィが先頭で道案内。その後ろに巡。サフィの上に狐が乗る布陣で、サフィが黒い犬に追われて出てきた路地裏に入って行く。
この布陣になるまでに、狐をどう一緒に連れていくかで悩んだ。狐でも幼女でも歩幅が違い過ぎて、着いて来られないことが判明。狐を巡が運ぶにしては重く、サフィの背中に乗せようとすれば狐が嫌がる。恐れ多くて乗ることは出来ませんと拒否していたが、最終的にサフィが狐の首根っこを咥えて背中に無理やり乗せた。あまりの驚きで、けもみみ幼女は狐に戻り、しばし気を失っていた。
話し合い前よりは復活が早かった。耐性を得ているのかもしれない。
「一本入るだけで暗さが凄いな」
路地裏は道が狭く、建物と建物の距離が近いため、日差しが届きにくい。
初めて入るはずの路地裏に、どことなく既視感を覚えながらサフィの後ろをついて行く。
(実家近くのこういう路地裏に、昔スーパーがあったんだよな。その近くに、こんな感じの小さなカードショップもあって。店員がやけに横柄で二回目は無かったけど)
(こんなところに駄菓子屋か。経営者がじいちゃんばあちゃんだから、実家近くの駄菓子屋は俺が中学の時に閉店したんだよな。ここは今でもやってるのか?今度、休日に来てみるか)
既視感から思い出を振り返りながらサフィの後ろをついて行くこと三十分程。
日差しが届きにくく既に薄暗かった路地裏が、さらに暗くなる。
「さらに暗くなるが、本当にこっちか?」
暗さのせいで黒い生物が発生しても気づきにくくなることを恐れ、暗闇に入る前にサフィに確認するも、「わおん!」と一鳴き。躊躇なく奥に進んでいく。
感覚が鋭いサフィを信用していないわけではないが、怖いものは怖い。恐る恐るついて行く巡。
暫く進んでいくと、唐突に当たりが明るくなる。まるでそこだけ別世界になったかのように、頭上から光が差し込んでいる。入口に当たる境界線には綺麗な赤色の鳥居。参道の奥には小さなお社が見える。境内は綺麗に整備されており、大切にされていることがよくわかる神社だった。
「綺麗だな」
鳥居を通る前に一礼し、参道の端を通りお社の前に行く。祀らているものに挨拶をし、少し探索することを報告する。
「サフィがここで目覚めたのか?」
「わおん!」
「そうか。ここは何を祀っているんだろうな」
巡が境内を見回し、何を祀っているのか、どんなご利益があるのか調べていると、サフィの上から狐が飛び降り、鳥居の方へ走って行く。
一度外に出て鳥居を振り返り、戻って来る。煙に包まれケモミミ幼女になる狐。
「鳥居にも何も書いておらんかった。名を示す石碑なども無いようじゃ」
「それを見てきたのか。こっちも分かる物は無し。小さいながらも授与所があったが、お守りも無かった。何を祀っているのか、どんなご利益があるのか分からないな」
小さい神社の為、境内の中にあるものはお社と授与所、おみくじを結ぶところくらいしかなく、探索するものが無くなってしまった。狭くも綺麗な境内の探索にそれほど時間はかからなかった。
「あと一か所、調べて無い所があるじゃろ」
何もないと判断し、探索のお礼をしてから去ろうとした時、けもみみ幼女がそう言いながら、お社の方を指差した。
「お社の中を調べると?」
「後はこの中しか調べるところないじゃろ」
「神を信じてるわけじゃないが、神の住まう場所を荒らすのはな」
「信じてないならいいじゃろ。それに名も無い神社。既に神もいないじゃろ」
(これで綺麗に管理されていて、神がいないなんてあるのか?)
そう思うも、名が無いのも事実。それにお社以外調べるものが無い。
覚悟を決め、巡がお社の扉に手を掛ける。
「何かあった跡があるな」
「奥のあれはなんじゃろうな」
お社の中心には手のひら大の何かが置かれていたであろう跡があり、その奥には壁に立て掛けるように木札があった。手に取り見てみると、木札には文字が書かれていたが。
「達筆過ぎて読めん」
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