十四話 いあ! いあ!
「いあ! いあ!」
「それが合言葉?」
「ほうじゃ。これが神威同士に通じる合言葉」
宇宙人を見極める方法は今の所ほとんど存在しない。それこそ精密機械で身体検査をしなければ分からない。だから、仲間である事を確かめるために合言葉が存在する。ランダムな周期で変わるそれを挨拶として宇宙人でない事をお互いに証明するのだ。
「シルヴィー! ホッシーに合言葉教え忘れとる」
「私としたことが……すまない。最近疲労がたまっているようだ」
──そういう割にはクマ一つない綺麗な顔だ。いつ見ても女優のような整った顔とスタイル。これで医者と社長と秘密結社なのだから、神は二物を与えすぎたと思う。
「今日から任務とか? 何するの?」
──神威に入ったもののどういう活動をしているのか未だ不透明なんだよな。
「合言葉の話と言ってもさっきの通りだ。けれど、これは不定期に変わるから後で教えるよ。そんなことよりもだ! 今日の本題はそれじゃない」
そこでシルヴィアは言葉を区切る。
「序列だっ!」
そしてシルヴィアはもう一度大きく息を吸うと続けて。
「初めに神威の主な活動は一つ! 人の生活を守る事。そのほとんどは怪物の討伐。あとは、行方不明者の捜索などモノリス教団に繋がりそうな事は全てやる」
「依頼とかはどこから来るの? 秘密結社だし……公にはできない」
「国からあるいは組織の情報網だな。神威には情報専門の奴らがいる」
桃里は頭の中で情報を整理しながら話を聞いていく。
「そして序列。すなわち──等級だな。これは神威の中で個人の強さを表す単位だ。星になぞらえて六等星から一等星まで。星が小さくなるにつれて強さは上がっていく」
「俺は六等星?」
「星南はまだ未確定だ。一週間後に認定バトルをする。その時に正式な等級が決まるわけだけれど、目的が復讐である以上、星南には五……いや、四等星を目指してほしい。六等星だった場合、現場での任務は与えられない。五等星以上ではじめてチームでの現場任務が認められる」
──ようやくスタートラインにきた。ここで四等星に認定されれば復讐は始まる。偲を殺した宇宙人もモノリス教団も必ず潰す。
「等級が上がるにつれて強さの定義は曖昧になる。色々な強さがあるからね。けれど、六と五の違いは明確! ……星詠が使えるか。さらに四等星だと怪物を単独撃破できるかになってくる」
「じゃあ、星詠っていうのを使えて、怪物を一人で倒せば四等星ってことか……」
「ちなみにアタシは三等星! 怪物が出たら戦う。それ以外は暇じゃけぇ、昼間は学校に行けるんよ」
天音はどこか誇らしげに胸を張る。
「神威のほとんどは五か六。星ノ人の天音はかなり上澄みだ」
「星んちゅ……」
「海人みたいに言わないでね。それじゃあ早速始めようか! 星詠修行!」
シルヴィアはそう言うと首を鳴らしながら体をほぐす。桃里と天音がやたらと広い訓練場に集められたのはこの星詠の修行をするためであった。
「唱気はもう見えているよね?」
桃里が青い錠剤を飲んでから二時間後くらいだっただ。傷の治りが急激に早くなったのは。そこから徐々に活力が漲り何かに目覚めた感覚があった。全身を迸るエネルギーが可視化され雲のような白いオーラが彼の体を覆った。
そして、筋力・気分の向上など様々な恩恵を唱気はもたらす。
「感じる。借り物のようで、自分の体じゃないみたい」
──天音の唱気は赤色。シルヴィアの唱気は青色。体を覆う唱気にも色の違いがあって、個人差みたいなのを感じる。けれど、今の自分の唱気は白。これがどういう事かわからないけれど、体に馴染み切れていないようだ。
「二日前。飲んだ丸薬は唱気器官を目覚めさせた。これは、人であるならば誰しも持っている器官で、目覚めると唱気を練る事が出来る! そして、唱気とは質量を持った生命エネルギーだ」
「確かにこの力があれば怪物たちに立ち向かえそうな気がする」
「怪物は現代兵器では太刀打ちできず、唱気による攻撃が最も効率よくダメージを与えられる。そこで、我々の術となるのが星詠」
「天音が使ったバットは星詠?」
「あれは戒堰。月とスッポンくらい違う。まあ、具体的には星海の有無だがな。戒堰は本人しか扱えないオリジナルの超能力だけど、星海の超人化に付いてくるオマケみたいなものだ。方や星詠は誰もが扱える力。私たちはスーパーヒーローじゃない」
「……誰もが力を持っているけど、その力には相応しくない。何となく言いたい事はわかります」
シルヴィアは驚いたように目を見張り顎に右手をあてる。そう驚嘆するのも無理はない。彼女に対する桃里の行動は聞き分けの悪い子供そのものだったからだ。けれど、誰もが力を扱える社会とそうでない社会。どちらが幸福なのか桃里には分からない。
少なくとも彼女たちが力をひた隠しにするのには理由があって、それがちょっとだけ桃里には理解できた。
「…………無貌の坩堝?」
「失礼でしょ! 人間! ……星詠? について教えてください」
「星詠というのは開かれた力だ。体内を巡る唱気に決められた役割を持たせる事。……例えば、白血球は病原菌の退治。ヘモグロビンは酸素を運ぶ。それは、身体の中で役割が決まっているからそういう働きをする。けれど、唱気というのはまだ役割の決まっていないエネルギーと思ってくれ。だから、星詠で唱気に役割を課す。それは燃え盛る炎だったり、インクのような役割だったり、そういう役割が全部で十二個。私たちはそれを十二の星詠と呼ぶ」
部屋の天井に備え付けられた無数の電球。頼りない光が束になって伽藍の広間を明るく照らす。
「そして今日教えるのは……ずばり、白昼夢の星詠!」
シルヴィアは一指し指をピンと立て高らかに述べる。
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