最低最悪の無能力者
かつて、世界中で戦争が起きた。
それは世界戦争と呼ばれ、毎日、毎分、毎秒…
数千数百の人間が簡単に命を落とし。
その被害は、市民にも及んだ。
あまりに決着がつかないから、誰も彼もどの国も、疲弊し、申告な資源不足に陥る可能性があった。
それを回避するためには、この戦争をできるだけ早く迅速に終わらせるために…
どんな国よりも秀でた力が必要だった。
その打開策の一つとして選ばれたのが、”異能力者”の開発…
”人体実験”である。
その実験を成功させたある国は、今まで銃火器や兵器、ロボットで行って何十年とかかっていたのが嘘のように、一瞬で…
戦争が”終結”した。
それから幾年の時が経ち、現在。
戦争で活躍した異能力者達が世界の国の中心となり、今まで上に立ってきた”非能力者”の上官を殺害し、その立場を優位にしたこの国には…
戦時で活躍した数々の異能力者の”因子”を受け継いだ、子供達の通う”学院”があった。
「ここが…”名門・異能学院”。」
世界を揺るがす異能力者の若人が、今日もこの地で、切磋琢磨し、その力を磨く…
はずなのだが…
「おい!新入生ぇ!」
「はい!」
この学院は、”絶対実力至上主義”。
その実力とは当然、勉学の方ではない…
「お前、異能力は?」
「えっと…”剣を生み出す”能力です…」
「へぇー、”雑魚”じゃん。」
能力が、この学院の全て…
「お前、今日から俺の”パシリ”な…」
「は…はい…」
強い人には…逆らえない…
(パン)
その時だった、僕が先輩に絡まれている時、背後から現れた恐らく僕と同じ新入生の青年が、先輩の肩にぶつかった。
「おっと…すまない…」
無口そうな人だった、根暗と言うか、クール…
「おい!テメェなめてんのか?すまないじゃねぇーよ、土下座だろうが!」
「…そうか…」
彼は以外にも、あっさりとそれを承諾し、学校の校門前で土下座をした。
「あいつ!マジでやったぜ…」
「ありえねぇープライドとかねぇーのかよ。」
リーダ各の先輩の、友達と思われる二人が彼のその姿を見て笑っている。
「おうおう、物分かりがいいじゃねーか、”木偶の棒”くん!」
踏みつけた、土下座をする彼の頭を、先輩は踏みつけた、靴の裏にはガム、噛んでいたガムをわざと付けて彼の頭を踏みつけたのだ。
「この学園最強たる俺様に、なめた態度取ったんだ、さぞ強い能力者なんだろうなぁ~」
「…いえ…」
その後、彼が言った言葉は衝撃的なものだった。
「俺に、能力はありません。」
彼はそう言った、しかしそんなはずはない、異能力者のみが通うことを許されたこの学院に…
「そりゃつまり…”無能力者”つーことか?」
彼のような存在がいていーはずが…
「てめぇーなめてなぁー…」
先輩も流石に信じてはいない、だってそんなの、どう考えてもおかしいからだ。
「能力を隠すことで”何らかの”アドバンテージを生み出す。だがそりゃー上級生にやることじゃーねぇーわなぁ~…」
先輩の能力は、シンプルな炎を生み出し、操る能力だった。
「消炭になりなぁーぁぁぁ!!!」
生み出したのは、炎の刃、それに切り裂かれ、炎上し、爆風の中に彼は消える。
「おい”キラ”、少し本気だしすぎっしょ。」
「そうだぜ、死んじまったらどうすんだよ。」
「問題ねぇー加減はした、あの程度で死ぬならどのみちこの学校じゃ生き残れやしないさ…」
そうだ、この学院を卒業すれば、僕らにもチャンスがある。
国を守る、異能力者の頂点…”超能力者”になるチャンスが…
だからこそ、この学院では、学生の失踪事件がよく起きる、国はそれらの事件を隠蔽するが、それはすなわち、この学校での殺し合いは実質”容認”されていると言うこと…
それでも毎年学院に入る者が後を絶たないのは、この国にいる異能力者と非異能力者の明らか待遇の差と、その影響によりいわゆる”天狗”になる人物が多いからだ。
自分ならできる、産まれながらの天才、最強である自分なら…
その自信が、死のリスクの認識を狂わせる。
「これで…いいですか…」
その青年は立っていた、しかも無傷、全くの無傷で、青年は爆風の中から再びその体格のいい大柄な姿を見せ、先輩を威圧するように睨んでいる。
「そこの君…」
「は、はい!」
「睨んではいないよ、この目は産まれつきなんだ…」
目つきが悪いと言うことか、と言うか、何で僕の言葉を?
声には決して出していないはずなのに、そう言う能力なのか?
「読唇術、だね、だから次の先輩の動きも分かります…」
先輩はけしかけた、次の手を繰り出した、でもそれを彼は立った一本の剣で防ぐ。
鞘は付いている、そう言えば、確かに彼は腰に剣をたずさえていたような気がする。
「お前、その剣は?」
「爺さんからの贈り物ですよ、この前”務所”から届いた。」
「なんだ?大罪人だったのか…その爺さん。」
「そこまでではないと思います、少なくとも、俺からしたら…」
刑務所から剣?どうしてそんなものが…
そもそも刑務所にいるような人の孫が、国の中枢を担うこの学園に…
”いていいのか?”
「お前、名は?」
「”ゼスティエル・ベンジャミン・デェス・グラット”。呼び名は、ゼスでいいです…」
その瞬間、先輩、そして僕、そして周囲にいた学生全員に衝撃が走る。
「お前…”魔王”の孫か…」
”魔王”、それはかつて戦時中に異能力者が圧倒的だった時代に、突如として現れた黒装束の剣士。
銃火器にロボットにパワードスーツが当たり前のこの地で、ただ一人剣携え現れた男は一瞬のうちに異能力軍の一師団を壊滅させたと言う。
その強さの理由は彼の振るう剣術もあるが、それ以上に…
「それじゃー何か、お前の持ってるその剣は…”魔剣・デェス・キエル”だとでも言うのか…」
「そうですね、先輩。」
その魔剣の威力、封じられた力は上記を逸していたと言われている。
そんなものがなぜこの世に存在するのか、それは僕らの住むこの国とは別の国。
その国では、戦争に勝つため異能力者を開発するのではなく”最低最悪の小型兵器”の開発が行われていた。
それこそが”魔剣・デェス・キエル”である。
「お前が魔王の息子だってんなら、その剣が魔剣だってんなら、容赦はいらねぇーなぁ…スパイやろう…」
「これは俺の意志じゃない、ただ亡命の結果、国の信用を得られるか試すためにここにいる…」
「亡命…おい!新入生、よく聞けよ、俺の辞書にはこうあるぜ…」
先輩は、再び炎の刃を彼に向け…
「”一度裏切った奴は、何度でも裏切る”、だから信用…できねぇーなぁぁぁ!!!」
先輩は飛び上がり、炎の剣で、その牙で彼を切り裂き、焼き尽くし、灰燼に帰そうと襲い掛かる。
この学校で、殺し合いは容認されている。
誰も止めはしない、先生達も誰もかも…
「裏切り?それは少し違いますね…」
「あ”じぁーなんだよ…」
彼は止めた、先輩の剣を再び、その後の連撃もすかさず、受け流し、あろうことか先輩の頬にその鞘をかすらせた。
「これは”和平”です。」
彼がここに来た理由、それは裏切りではなく和平、彼はそのためにここにいる。
そうか!やっと理解できた、彼の両親が彼をここに送った理由を…
そしてこれの祖父が、彼にこの剣を預けた理由を…
「舐めてんじゃねぇぇぇ!!!」
先輩切れる、その顔は確実にぶち切れている。
それは自分に言い返してきたことがむかついたのか、はたまた、悠々と攻撃をかわし続けることにむかついたのか…
いや、そうじゃない。
「テメェ―今…俺を”殺せた”だろ。」
「…」
「その剣をぬきゃーーーよぉぉぉ!!!」
そう、彼はまだ剣を抜いていない、頬にかすったあれもわざと…
彼には、鞘が付いた状態でも、先輩に確かな一撃を入れる余裕があった。
にもかかわらず、頬の傷一つで彼は先輩を後ろに引かせた。
これは、明らかに”格下”にやる情けに他ならない。
「そんな事無いですよ、ただ…」
「ただ?」
「あなたに”興味”が…ないだけです。」
その瞬間、彼は完全完璧に言い逃れのできないほどに先輩を煽った。
戦闘が始まって十分、時間の流れは速いものだ。
しかし、今だ…先輩も彼も…
”本気”じゃない。
だが、この瞬間、先輩の周囲の温度が急激に上昇し、周囲で見物していた学生達は急いで校舎へ逃げ込む、しかしその校舎すら溶かしてしまいそうな勢いで温度は上がりつつけ、そして…
「これが俺の…最大最強の一撃だ…」
それは太陽、先輩が天に向けたその一本の指が、太陽を生み出し、地面にそれを叩き落そうと構えている。
「俺は今、テメェ―を見下している、だから俺よりでっけーテメェ―を下から見下ろすように、顎を上げてこの体勢になっている。わかるか…お前は俺より下だ…それをただ自覚しろぉぉぉ!!!」
「嫌だね、もうあんたに敬語は使わない…」
「そうか…なら死にさらせ、新入生…」
それは落とされた、僕は見ていた、鉄は熱に弱いのに、僕は剣を生み出すだけの力しか持たないのに、彼らの姿を確かに捉え、こうやって”君達”に語っている。
多分、これが最後になる。
だって僕は、この太陽に焼かれて死ぬのだから…
”彼”と共に…
「”抜刀”…”村正”…」
それは、名を呼ばれると共に、天を割り、世界を揺るがしそして…
その”黒い斬撃”は、”太陽を切り裂いた”。
「バカ…な…」
「”村正”、この”刀”の名だ、デェスキエルなんて名は知らない。」
それに封じられた力、何よりも禍々しく、獣の匂いがした。
その後の話になるが、彼曰く、その剣には…
「魑魅魍魎が封じられている…らしい…」
これが世界に伝わる、最低最悪兵器が、この学院で振るわれた…
”初の瞬間”である。
「やばい…完全に目立ち過ぎた、これは…マスク必須だな。」
「そんなんじゃ、隠せないよ!」
彼は目立つのが嫌いらしい…
完全に思い付き書きました、なーんにも展開とかキャラとか決まってません。