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21話 エピローグ

主人公アニード視点です。

 俺が巡回の兵士に案内され、その家にやっとたどり着いた時、辺りには小隊程度の人数の兵士が集まっていた。

 人が立ち入らないよう見張りをしている兵士に身分と名前を言い、その結果、敬礼され、握手を求められ、やっと中に入った。


 ダイニングには嬢ちゃんが二人、年配の女性が一人座っていて、周りを数人の兵士が囲んでいた。そこの兵士にも身分と名前を言う。先程と同じ儀式を繰り返す。正直手間だ。

 その間も家の奥から人の声がする。奥でも何か調べているらしい。


 嬢ちゃんのうち一人は俺がレナードと一緒に見張りをしていた家の住人の一人、セシリアだ。もう一人は知らない娘だが、可哀想なことに片方の頬が赤く腫れている。もしかしたら歯が折れているかもしれない。後で医療スキル持ちの兵士を手配しよう。


 嬢ちゃん二人は兵士達の事情聴取に淡々と答えている。後で聞き込みをした兵士から話を聞かなければなるまい。

 言葉の端々からするとこの二人がレナードをこの家で捕らえたようだ。無茶をする。通信兵とはいえ訓練を積んだ兵士と嬢ちゃん二人では恐怖だったろう。


 レナードは奥の別室で大人しく捕縛されていた。口八丁で逃げ出していそうなものだと思ったが、嬢ちゃんへの暴力の疑いがあり逃げられなかったらしい。俺がその部屋を覗き込むと、レナードは項垂れ、俺と対峙したときの勢いはなかった。何かあったのだろうか。事情を知る俺が聴取しなければなるまい。傍らの兵士に捕縛したまま牢屋にぶち込むように伝える。レナードはそのまま連行されていった。


 最後の一人、年配の女性はこの家の主だろう。恐らくはレナードとヘンリーのもう一人の幼馴染……名前は確認できていない。この女性への聴取は困難を極めているようだ。話の要領が掴めず、言動がおかしいため後回しにしていると傍らの兵士が言ってきた。何とかできないかと俺に言われても困る。


 家の奥から兵士が出てきた。首を振っている。納屋に死体があると聞き調べていたが、スキルで隠されていて迂闊に触るのをやめたようだ。いい判断だ。俺はどこかに軍用魔石が隠されていることを告げる。安全性のマージンはあるが、迂闊なことをしてドカンとなったら大惨事だ。

 奥から出てきた兵士は俺の存在に疑問を呈してきた。身分と名前を告げると彼らは慌てて敬礼した。こういうときは名声が便利だが、俺は別に偉くなりたかったわけではない。


 さて、まずは最優先でヘンリーの行方を捜さねばなるまい。この状況に自暴自棄になり、一般人に危害を加えるのが怖い。……死体があると言っていたな。まさか。


 嬢ちゃん達に事情を聞いていた兵士が俺のつぶやきに顔を上げた。嬢ちゃんの一人がヘンリーという名前の人の死体だと証言しているらしい。

 まさかレナードが殺したのか。しかし奴は『俺達は組織の幹部になる』と言っていた。あれはヘンリーのことだと思われる。矛盾する。


 嬢ちゃん達の話を聞いていた兵士の話では、この家にかかっている隠蔽スキルを解除するには、先程から要領の得ない話をしている年配女性、フロランスという名前らしいが、それがスキルを解除する必要があるようだ。あの雰囲気では自力での解除を期待するよりも効果範囲から出したほうが早いだろう。


 俺が兵士に命令するとフロランスは連行されていった。スキルを解除するために街の外周を大回りしてきてもらう。あの女性にも話を聞かねばいけないだろう。まともに話しができるだろうか。


 フロランスが連行されてしばらくしたらスキルが解除された。なぜわかったかと言うと、整然としていた部屋のあちこちにゴミが現れたからだ。どうやらかなりガサツな性格らしい。


 兵士達が納屋から死体を発見したと報告をしに来た。その奥に多量の小箱に詰められた軍用魔石が見つかったらしい。死体を確認すると、酷く腐敗が進んでいたが、追っていたヘンリーと判断できた。酷い臭いだ。フロランスは臭いまで隠蔽できるレアスキル持ちのようだ。


 ところでここで俺は気づいたのだが、俺が追っていた事件は、あの嬢ちゃん二人が解決してさらに犯人まで捕縛したことになる。

 俺がしたことは路地を少し綺麗に掃除したこと、レナードを刺激して逃がしたことで嬢ちゃん二人を窮地に陥れたことくらいか。


 ダメダメじゃないか俺?


 二人の事情聴取が終わったようだ。セシリアの方には家が賊に襲われ、兵士が警備に留まっていることを伝える。彼女は早く家に帰りたいと訴えた。当然だろう。この二人には後で事情を聞きにいく約束をする。何も成していないのだから面倒なことくらいは頑張らなくては。


あぁ、あのことを忘れそうだった。


 俺は彼女の家で隠し棚から見つけた手紙を手渡した。彼女に手渡すべきものかわからないが、私が持っているわけにもいかないだろう。彼女は後で見てみますと、ポシェットに手紙を入れた。


 俺は二人を戸口まで送り、兵士に護衛を頼む。頬が腫れた娘には、家に医療班の兵士が行き、治療を施させてもらうことを伝える。その娘から医療班が行くときには俺に同道してほしいと求められた。それくらいなら容易いが、何故だろう。


 ともかく二人は兵士に付き添われ、並んで歩いていった。俺はそれを見送ると、家の中に戻った。ここからが忙しい。


「ねぇセシリア」

「何?」

「さっきの一番偉そうな兵士の人、格好良くなかった?」

「そうかなー。ローリーって、ああいうのが好みなの?」

「そうだよ。家に来てもらう約束しちゃった。セシリアは好みじゃない?」

「うーん。悪くないけど、ちょっとおじんじゃない?」

作者ミナミです。最後まで読んでいただきありがとうございます。タイトル詐欺ですね。出会っただけで終わってしまいました……こんなはずじゃなかったと作者が思っております。次は「 出会った二人が恋に気付くまで物語は進むのか」を構想したいと思います。がんばっときます。

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