序章 始まらないから終わりもない
この世には、勇者はおらず神も無く
魔法もなく奇跡も起きない、だが
龍と悪魔はそこにいた
「この世に救世主なんているものか!」酒場で男がのたまう。
「救世主は、必ずきます!」
若者が反論する。若者は、続けて
「80年前この地に魔王が現れたときも、200年前の大厄災でも必ず必ず救世主……英雄が現れて
私達人類は、平和を平穏を手に入れてきたんです。
今は英雄が救ってくれるのを祈り耐えるしかないのです。」
その言葉に男が憤慨する
「今 俺達がこの国が一番苦しんでいる時に助けに来ないで英雄だ?救世主だ?笑わせるなあまり甘い事ばかり考えていると痛い目見るぜ 坊や」
若者は真っ直ぐな目をして答える
「だとしても、諦めてこんな所で飲んだくれているよりましです」
男の拳が若者の頬に直撃する
「やれ!やれ!」周りが囃し立てる
若者は男を睨み 若者も男に飛びかかる「事実を言われて暴力を振ることしかできないのですか!」
男は、若者を振り払い
「何も知らない若造が知ったような口を聞くな 今日だけでいったい何人の仲間が死んだと思っている……
英雄王も救世主ももう現れないんだよ」男は膝から崩れ落ちる落胆する
若者は、体を起こし男に話しかける
「僕は生まれつき体が弱く兵士に志願することもできず。ただ祈る事しかできません。だからこの国の英雄である貴方がたが 英雄は、いないなんて言うから……僕は……僕は……」若者は、涙を浮かべる
近くに居た別の男が若者に話しかける
「男が泣くもんじゃない 男の涙は大切な女にとっておくものだ 君の様な子が、こんな俺達を英雄と呼んでくれると言うことが知れただけで俺達はまた明日も命をかける意味がある 顔を殴ってすまなかった。あいつに変わって謝るよ」男は続けて
「さぁ飲みなおすぞ!今日は俺の奢りだ!」
歓声が上がる
ここは、かつての英雄王が作った王国その王都の酒場
現:人類史における最後の英雄とされた漢が作った滅びかけた王国 アレマルス
人族の最後の領土。
英雄王が、病床に伏してからもう5年になる
「死んだ」なんて噂すらでてきてからというもの、魔物や悪魔の活動が活発になり この最後の国も何度も侵略され その度に多くの犠牲を払って守っているそんな惨状である。
人々は絶望し、ただ再び救世の英雄が生まれる事を願うばかりである。
「神様って居ると思う?」少女が聞く
「居たらどうなんだ?」男はそっけなく答える
「神様に毎日お祈りをして、いい子にしていればいつか必ず悪魔をやっつけて救ってくださるんだって ママが言ってたの」少女が無邪気に続ける
「そうか、それならいつ救ってくださるんだ?」男は遠い目をして問う
「そんなのわからないよ」少女は、困った顔で答える
「神様ってのがいるとして、これだけ苦しんでる俺達を救わないんだったら 俺達にとっては悪魔と同義なんだぜ」
男は立ち上がり遠くをみながら話す