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番仙奇譚  作者: 秋尾 萩
狸の話?
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 待機してもらっていた車で学校に戻りながら、桜に捕獲の連絡を入れた所、準備をして待っているとの事だった。


「で、これが噂の化け狸かい?」

 そう言って大きな檻の前で死天王たちが珍しそうに中の動物を見ている。


 なぜこんな大きな檻が学校にあるのか桜に聞いてみると、

「いやね、何年も前らしいんだけど、この辺りに猪が頻繁に出たことがあったらしいんだよ。で、警察とかハンターが間に合わない時はうちの学校の先生たちが捕まえてたんだって。ほら、うちの先生たちってすごい人ばっかりだろ?警察とか下手な軍隊よりも強いからね。地域からも頼りにされてるらしい」

 ということらしい。

 その後、学食でジビエが出たとか出ないとか。



「はあ、それにしても君はいつも仕事が速いね。まさか今日言って今日終わるなんて思わなかったよ。それもまさか捕まえてくるなんて。急に言われて檻の準備に手間取ったよ」

 なんとなく愚痴っているような桜。仕事を早く終わらせたのに褒められている様には聞こえない。なぜだ。


「化け狸じゃなくて化けアライグマですね」

 なんとなく納得いかないながらも説明する。


「アライグマ?狸じゃなくて?アライグマって人を化かすの?っていうか、ホントにこれが化けるの?」

 桜だけでなく、死天王全員が信じられないように檻の中のアライグマを見ている。まあ当然の反応と言える。これを見て、これが人に化けると簡単に信じる方がおかしいだろう。


「はい、私も確かに見ました。小さい女の子だったんですが、しっぽが出てそれからこの姿になったんです」

 自分の目で見たはずの紫苑ですらまだ信じられないようだ。


「そうか、1年前のオレなら信じなかったやろうけど、今ならなぁ」

「せやな」

「うん、確かに」

 死天王もあの蛇を見ていなければ信じていなかっただろうが、今となってはもう疑ってはいなかった。


「う~ん、そうかあ。で、これどうするの?」

 檻のすみっこで縮まって震えているアライグマを見ながら桜が紅に尋ねる。


「ええ?僕が決めるんですか?」

「そりゃ専門家だし」

 当然のように言う桜に死天王たちがうんうんと頷く。


(こ、この人たち!)

「はぁ、まあ確かアライグマって、特定外来生物だったと思うんで駆除しないといけないと思うんですが……」

 そう言って檻の中を見る。

 その言葉が分かったのかビクっと震えるアライグマ。


「う~ん、仕方ないか」

 桜たちも別に殺したい訳ではないが、野に放つ訳にもいかない。


「え!?ちょ、ちょっと待ってください。こ、殺しちゃうんですか?」

 それを聞いて驚く紫苑。桜たちはこのアライグマの姿しか見ていないが、紫苑は女の子になった姿を見ている。あの姿を見てはさすがに殺すのは忍びなかった。

「こ、紅」

 今にも泣きだしそうな顔で紅を見る。

 そんな顔で見られて、仕方ないとばかりに檻に向かう。


((((チョロ))))

 声には出さないが死天王たちの心の声がハモる。

 何も言われてないが、ギロリと死天王たちを睨む紅。目を逸らす死天王。


「おい、聞いてただろ?そのままの姿だと殺されるぞ。さっきみたいに化けてごらん」

 檻の中で震えるアライグマに優しく声を掛ける。

 暫く経っても震え続けているが何も変わらない。誰も何も言わずに見守っている。

 やがて死天王たちがただのアライグマではないかと疑い始めた時、少しずつアライグマの姿が変わり始めた。


「!!」

 死天王たちが驚きに目を見張る。


 そしてほんの数秒でアライグマは小さな女の子に姿を変えた。

「……ホントに……化けた?」

「はは……」

「……」

 あんぐりと口を開ける。


 そんな死天王たちを尻目に、紅はアライグマに話しかける。

「どうして人を化かしてたんだ?」

 アライグマは怯えながらも答える。

「……化かしてないよ。遊んでただけだもん」

 

「ふうん、そもそもなんで化けられるんだ?他のアライグマも化けるのか?」

「他の子は化けないよ。わたしだけ。おばちゃんが化け方教えてくれたの」

「おばちゃん?」

「うん。キツネのおばちゃん」

「キツネ……」


 紅は振り向き説明する。

「だそうです。少なくともこの辺りに化け狐もいるみたいです」


「「「「いやいやいやいや」」」」

 4人そろって手を振る同じ動き。

(息が合ってるなあ)


「なんなの!?タヌキじゃなくてアライグマで、キツネまでいるの!?」

 混乱で取り乱す桜。ほかの3人も似たような感じだ。


「まあ、この子も遊んでただけで悪気があった訳じゃなさそうですし、このまま放っておくのがいいと思いますよ」

 落ち着いて提案する。


「放って置く?なにもしないって事かい?大丈夫なの?」

「ただのアライグマを化けられるようにする狐なんて大物に決まってます。下手に手を出したら大変な事になると思いますよ。まあ僕の私見ですが」

 今までよりも真剣な顔で答える。


 その紅の顔を見て桜たちも理解した様だ。そして4人で目配せして頷く。

「分かった。君の意見に従おう。その子はどうしたらいい?」


 紫苑も心配そうに紅を見る。

「そうですね……、駆除もできないし、アライグマだから逃がす訳にもいかないし。」

 うんうんと首を振る紫苑。


 そう言って紫苑を見てからアライグマを見る。




 

「ありがとうございます。姫様」

「よい。近頃は夜が明るくなって化ける者も減った。化ける者たちも住みにくくなったがここならば問題なかろう」

 紅の持って来たケーキを吟味しながら答える。紅の方は見ていない。

 アライグマの少女は3人の童女たちと遊んでいる。



 結局駆除も野に放つ事も出来ず、困った紅は姫様に頼る事にした。特定外来生物というだけでなく、さらに人を化かすというおまけつき。一般のクラスメイトにまで噂になっていたほどなので、遅かれ早かれ捕獲されていただろう。いくら素早い獣とはいえ、番長たちが本気になれば逃げる事は出来ないだろう。あんなのが捕まっていたらどうなるかは想像に難くない。


(はぁ、結局自分では何もできず人に頼って。早く大人になりたいな)

 大人になっても化けアライグマは飼えないと思うのだが。



「では姫様、後はよろしくお願いします」

「うむ、久しぶりに遊び相手も増えてよかろう」

 ケーキを選び、遊ぶ子供たちを見ながら微笑む。

 


 その後は時々紫苑の所に外国人の女の子が遊びに来て、一緒におやつを食べているらしい。



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