表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番仙奇譚  作者: 秋尾 萩
狸の話?
45/51


 校庭に出ると番長たちだけでなく、多くの運動部員が活動を止めて人垣を作っていた。そしてその中心には二人の男子生徒。二人とも有海のクラスメイト。紅と剛毅だった。少し離れた所に大柄な男子生徒。有海は知らないが石山だ。

 声は聞こえないが、大柄な生徒が紅と話をしている。すると紅が学ランを脱ぎ、誰かに声を掛ける。人垣から学ランの男子が近づく。いや、学ランを着ているがそのシルエットは女性のものだ。有海もその姿は知っている。紫苑だった。

 紫苑が近づき紅から学ランを受け取る。受け取った学ランを抱きしめた紫苑が人垣に戻っていく姿は、遠目に見ても嬉しそうだった。


「紫苑ちゃん……」

 自分がそこにいない事に胸が痛む。



「では始め!」

 大柄な生徒の声は離れた有海の所まで聞こえた。そして二人の闘いが始まる。



「どうして喧嘩してるの?止めなきゃ」

 有海が不安そうに静香に問いかける。しかし静香は落ち着いた声で答えた。

「喧嘩じゃないさ。模擬戦、まあ試合かな。お互いの強さを確かめるんだよ。番長連合ではいつもの事だよ」


 そうは言われても納得できない。

「でも黒森くん番長連合には入らないって言ってた。それに巌流院くんあんなに大きいし強そう。黒森くん怪我しちゃう」


「まああそこに立っているという事は、彼にも何か考えがあるんだろう。それに闘いは体の大きさだけじゃ決まらないさ。さあ始まるぞ」

(この子には桜の通達の事は教えない方が良さそうだな。おそらくあれでクラブに入れなかったんだろうから。桜ももう少しうまくやればいいのに。あれがバレたら可愛い妹に嫌われるって事くらい分かるだろうに)

 桜名義の各クラブへの通達の事を思い出し、ため息を吐く静香。



 そんな事を話しているうちに校庭では二人が動き出す。恐ろしい速さで飛び掛かる剛毅。離れた所から見てもその速さは異常だ。

「ほう、あの体で速いな」

 楽しそうな静香。


 躱されても再度突進する剛毅が紅に殴りかかる。すると何が起こったのか剛毅が地面に叩きつけられる。だがそれを意に介さず蹴りを出す剛毅。一つ一つが異常すぎて有海には理解が追い付かない。

 そしてすぐにボクシングのような距離で殴り合いになる。

「危ない!!」

 これは有海のような素人でもどんなに危険か分かった。あんな大男に乱打されれば怪我どころではない。

「あれ?」

 しかし紅は剛毅の恐ろしいほどの乱打を全てさばいている。


「ほう、すごいな。あの対格差でバランスを崩さず一発も有効打も貰わないとは。お前たちもよく見ておけよ」

 感心しながら部員たちに声を掛ける静香。

「う~ん、確かに」

「ま、まあ僕たちは忍者だからあんな正面から闘わないし……」

「そ、そう!私たちは背後からこっそり襲うから!」

 あんな化け物と正面から闘わされてはたまらないと言い訳する部員たち。当然である。


 さらには蹴りをかわし攻撃を当て剛毅を吹き飛ばす。

「すごい!」

 今までの心配も忘れ、ぽーっと見つめる有海。


 するとなぜか戦闘を中断し、何か話したかと思うと剛毅が服を脱ぎ紅はゆっくり距離を取る。


「どうしたんだろ?もう終わったのかな?」

 遠くから見ている有海には二人の会話は聞こえず、距離を取った事を不思議そうに見る。


「いいや、面白いものが見られるぞ」

 どうやら静香には二人の会話が聞こえているようだ。

「面白いもの?」

「来るぞ」


 静香がそう言った瞬間、紅の姿が掻き消える。

 消えた次の瞬間には剛毅に触れている。そしてほぼ同時に剛毅に蹴り飛ばされる。

「黒森くん!!」

 何が起こったのかは分からないが、紅が蹴り飛ばされた事だけは分かり焦る有海。それに対し喜びの表情で興奮する静香。

「すごい!これだけ離れている私でも見えなかった!縮地か?いやただの縮地じゃないな……、ははは、これはいい!!」


「黒森くん!」

 駆け寄ろうとする有海の腕を取り止める静香。

「離して!」

「駄目だ。あそこは番長たちの場所だ」

「でも!」

「殺し合いじゃない。あそこには桜もいる。心配ない」


 倒れた紅に駆け寄る紫苑が見えた。そして桜ともう一人男子生徒が近づくと、紅の体が浮き上がりどこかに運ばれていく。紅について行く紫苑。


「紫苑ちゃん……」

「保健室だろう。うちの養護の先生は治癒魔法も使える優秀な人だ。心配ないよ」


 そんな静香の声も聞こえていないのか、有海はただ運ばれる紅をみていた。

 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ