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番仙奇譚  作者: 秋尾 萩
猫の話
33/51

1

短編です。6話で終わる予定です。


「あれ、桃香。今帰りか?」

「あ、さーくん。えっと、うん。今から帰るとこ」

 放課後の下駄箱で偶然会った桃香に覚が声をかける。


「……」

「……」

「……一緒に帰るか?」

「……うん」


 一緒に自転車で走り途中の大きな公園に着く。

「中通って行こうか?」

「おう」

 二人で自転車を押して、公園の中に入って行く。少し話をしようという事だった。


「……あ、えっと、久しぶりだね。二人で帰るの」

「あー、そうだな。だいたい有海か輪が一緒だからな」

「そうだね」

「おう」

「……」

「……」


 しばらく無言が続くが特に気まずい訳ではない。昔からこの二人でいる時にはそんなにぺちゃくちゃと話続けている訳ではないからだ。


「さーくん、今日は遅かったんだね。クラブどこか決めたの?」

「おう、だいたいな。色々見て回っていくつか面白そうなとこがあったんだけど、名探偵部にしようかと思ってるんだ」

「め、名探偵部?」

「そ。頭悪そうな名前だろ?なんか校内の事件とか調べるらしいぜ」

「え?事件とか調べるの?それって番長さんたちの仕事じゃ……。探偵小説とか読むんじゃないの?」

「それはミステリ研だろ。物がなくなったとか、よく分かんないこととか調べるらしい。番長たちもそんなに暇じゃないらしいからな。それにほら、推理して犯人探すとか俺の能力にぴったりだろ?」

「いや、それ推理じゃないよ……。ズルじゃない。ダメだよそんな使い方しちゃ。ばれたら大変な事になっちゃうよ」

 覚の読心能力を使って犯人を探すというのは、推理でもなんでもない。


「え~、楽でいいじゃん」

「とにかく絶対ダメ!もうっ」


「そういう桃香はどこに入るんだ?」

「えっ!えっと、わ、私は……」


「ん~?」

「読んじゃダメ!!」

「!?」

 訝し気に自分を見た覚に強く声をかける。


「……なんで分かった?」

 自分が桃香の心を読もうとした事がなぜ分かったのか。


「もう……。やっぱり。そりゃ分かるよ。さーくんの事だもん」

「……そうか」

「……そうだよ。もう絶対使っちゃダメだよ。さーくんの本当の力が知られたら、また一人になっちゃうよ?」


 幼い頃から一緒にいる桃香は覚の本当の力を知っていた。以前紅に話した、調子がいい時に集中して少しだけ心が読める、と言うのが嘘であるという事を。体調に左右されたり集中しなければいけないというのは本当だが、皆に話しているよりは簡単に心が読める。しかし誰でも読めるという訳でもない。魔力の高い者はほとんど読めない。強く拒まれても読めない。そのほか何かしらの能力がある者は読みにくい傾向がある。

 そのために小中学高では多くの生徒に疎まれ、距離を取られ化け物扱いされた。

 それが知られれば高校でも同じような扱いになるだろう。いや、もっとひどい事になるのは明白だった。同じ中学の者は結構入学しているので、桃香はそれも心配していた。


「……別に他の奴にどう思われてもいいよ」

「え~、また寂しいって泣いちゃうんじゃないの?」

「泣いてない!」

「そうだったかなぁ」

「そうだ!」

「えへへ、そういう事にしといてあげる」


それからしばらくは無言で歩いて、ぽつりとつぶやく。

「……お前はいてくれるだろ……」

 それを聞いて少し驚いた顔をしてから、

「どうかな~、もう高校生だしな~。わたしもカッコいい男の子に出会ったら好きになっちゃうかも」

 いたずらっぽく笑いながら答える。

「!?おい待てよ、お前、男は怖いって言ってたじゃないか。誰かいるのか?ん?わたしもって……」

「あ」

「有海か?」

「……うん。」

「やっぱそうなの?」

「もう、どう見てもそうじゃない。あ~あ、ほんとさーくんは女心が分かってないなあ」

「いや、そんな事言ったって……」

「あんな有海ちゃんわたしだって初めて見たよ。でもとっても楽しそうでわたしも嬉しいよ。でも……」

「クロかぁ。まだ会ったばっかだけど、なんだか不思議な奴だな」

「うん……」


 そんな時ふと桃香が声をあげた。

「あ、あれ……」

 そう言って少し先の地面を指差す。そこには一匹の白い猫らしきものが横たわっていた。

 そのまま近づき自転車を止めて猫を見る。口から血を流し倒れた猫はもう生きてはいないようだった。道路からは少し離れているため、撥ねられてここに飛ばされた訳ではないだろうが、なんとかここまで歩いて力尽きたような感じだった。


「このままだとどうなるかな……」

「公園の管理の人たちが見つけて片付けるだろうな。たぶん生ごみ扱いじゃねえかな……」

「……そうだね」

 そう言うと桃香は手が汚れるのもかまわず、その猫を抱き上げて覚を見た。


「だよなぁ」

 はぁっとため息をつく。

(まあこいつならそうするよな)

 そういってキョロキョロと周りを見て、少し離れた公園内の雑木林を指差す。

「あそこにするか」


 二人で雑木林の中に入り、覚が木の枝で穴を掘り猫を埋める。雑木林とはいえ公園内に勝手に動物の死骸を埋めるのが良い事とは言えないだろう。自己満足と言われるかも知れない。それでもそのまま通り過ぎるのはなんとなく嫌だった。


「ありがとう、さーくん」

「おう」


 その後は特に話すこともなく、公園を後にした。




(今日は久しぶりにさーくんと二人で帰れたな。でも今日のあれって、やっぱりそういう事だよね……。えへ、えへへへ。)

 一人ベッドの中でニヤニヤとだらしなく笑う桃香。


『フゥーーーー!!ギャァーー!!』

 突然外で猫の鳴き声が響く。


(なんだろ?今日はやけに猫がうるさいな。春だからかな?まあいいや、明日もさーくんと会えるし、早く寝なきゃ)






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