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番仙奇譚  作者: 秋尾 萩
蛇の話
15/51

次のお話しです。14回で終わる予定です。

 新学期2日目。

 紅が教室に入る。

 先に来て教室の入り口を見張っていた有海がすぐに気づいてやって来た。

「おはよう穂村さん」

 有海は目の前までやって来て立ち止まったまま、じっと紅の顔を見つめる。

「穂村さん?」

 そして何も言わずガシっと紅に抱き着き、胸に顔をうずめる。

「穂村さん!?」

 どよめく教室内。輪と桃香は少し困ったような顔で黙って見守る。


「ほ、穂村さん?どうしたの」

「お~い有海ちゃん?」

 それを見ていたクラスメイトが紅の顔を見て話しかけてくるが、有海は離れなかった。

 しばらく何とも言えない空気が教室を包み、やがて我慢できなくなった輪が有海を引きはがし二人を席に着かせる。それを機に周りの生徒たちも自分たちの会話に戻ったふりをするが、ほぼ全員が聞き耳を立てているのは当然の事だった。

 

 

「あれから婦警さんたちに送ってもらって、事情を説明したら二人ともびっくりしてた。それで黒森くんに電話して、おうちの人とお話ししたんだけど暫く会えないみたいだから、今度黒森くんをうちに招待したいって言ってた」

 

 昨夜娘が突然警察に送られてきたのだから、両親はさぞ驚いたことだろう。

 娘から事情を聴いた両親は、驚きはしたが怒ることはなかった。そして今朝、有海から紅を通じて紅の家族に連絡を取り、娘を助けてくれた礼を述べる。そして治療費や壊された自転車の代金を負担したいと申し出たが、紅の姉はやんわりとそれを拒絶した。

 自転車を壊したのはあくまで犯人であり、怪我をさせたのも有海ではない。たいした怪我ではないので、つばでも付けておけば治る。それに自転車は古くなっていたのでちょうど買い替えようと思っていた、というのが紅の姉の言い分だった。

 それは分かっていても、自分の娘を守っての事であり、自転車が新品である事も有海から聞いたため、有海の両親はどうしてもと頼んだが紅の姉は受け入れなかった。

 一度伺って挨拶だけでもという提案も、父親は長期の出張で、自分は大学でしばらく時間が取れないため、申し訳ないが会うのは難しいとのことだった。

 ならばせめて、紅をうちに招待したいと申し出たところ、それは本人に任せると言われたため、こうして有海からのお誘いとなった。


(((ええい、全然理由がわからん!)))

 それだけを聞いたクラスメイトたちには何が何やらさっぱりである。


(あらあら、早速仲良しね。うふふ)

(うわー、さすが高校。こんなに早く恋人ができるなんてすごい。私も……)

 温かく?見守るクラスメイト。


(あいつ、おとなしそうな顔して初日でボクっ娘を!)

(黒森氏、許せないでござる。クラスで唯一のロリ枠を!!)

 さっそく紅をうらやみ妬む男子たち。


(やるわね有海ちゃん。黒森君目を付けてたのに。まさかノーマークの有海ちゃんに出し抜かれるとは)

(黒森君、西矢さんや委員長でもなくそっち系か。結構マニアックね)

(こっわ、黒森君こっわ。え?催眠、催眠なの?ていうか逆に能力無しに1日で堕としたんならもっとこわいわ。)

 女子たちからのとんだ風評被害。わずか二日目にしてクラスで一番注目される男、黒森紅。




「そうなんだ。すぐは無理だけど、時間ができたら週末にでもお邪魔していいかな?」

「うん!お父さんもお母さんもすごく会いたがってた。」


(((すでに両親にまで!?)))

 もういいから。



 そうこうしているうちに闇子がやって来た。

「よーし、席に就け」

 そう言って闇子は教卓には向かわず、カツカツと紅の方に向かう。

 紅の前で立ち止まり、目の前でジッと紅を見つめる。

「あの、先生?」

 そして紅の頭をぐしゃぐしゃと撫でてただ一言、

「がんばったな」

 そう言って教卓に向かった。

 周りの生徒たちには何が何やら分からなかったが、紅は少し照れ臭かったが自分のやったことが認められたのは嬉しかった。まあ、犯人を捕まえたのは桜だが。



 その一幕が落ち着き、朝礼が始まる。

「まだニュースにはなっていないが、昨日の夜、例の髪切り魔が捕まったそうだ。とりあえずは一安心といったところだが、おかしな奴はいくらでもいる。くれぐれも人気の無い所や危険な場所には近づくな。3年間事故や事件に遭わずに卒業してくれ。私のために」

 最後に自分の心情を込めて、生徒たちの無事を祈る。




 昼休み、昨日と同じメンバーで食事をしていると、

「ねえねえ、みんなはどこのクラブ見学に行ったの?」

 有海が何気なく問いかける。


「あたしは狙撃部に行って来た。一応サバゲ部も覗いて見ようかと思う。桃香は文芸部に行ったんだろ?」

 輪が答え桃香に振る。


「あ、えっと、うん。人数は少ないけど、なんだか落ち着いた感じで良かったよ。好きな作家さんの話で部長さんと盛り上がって、びっくりしちゃった。」

「あー、あのなんとか言うマイナーな詩人か?高校生で知ってる人いたのか?さすが文芸部だな」

「もー、輪ちゃんは。マイナーなんて言い方やめてよ。隠れた大詩人なんだよ、笹原先生は。」

「あー、ごめんごめん」


「俺は色々回ってみたんだけどなんかパッとしたのがなくてな。今日は変わったクラブをまわってみるわ。クロはどこ行ったんだ?」

「うん、僕は昨日交野先輩に誘われたから、ちょっと番長連合に顔を出してきたよ」

「黒森くんすごい!番長ってすごいエリートばっかりなんでしょ?」

「巌流院もいるけどな」

「……」

 嬉しそうに声を上げる有海に覚がツッコむ。


「残念だけど、僕はすごくないんだ。どうも僕の家族の事に興味があったみたいでね」

 すこし寂しそうに紅が言うと、

「そんなことないよ!黒森くんはすごいよ!!昨日だって」

 有海が声を上げて立ち上がる。


 何事かとクラス中が有海たちを見る。

「ちょっと、有海。落ち着きなさい」

「でも、でも」

 少し涙目になる有海。

「ありがとう穂村さん。ごめんね。大丈夫だよ。交野先輩たちが少し困っていて、それで僕の家族にアドバイスを貰いたいって事だったんだ」



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