サークル企画 一本目 小鉢
「盆土産」という作品をご存じでしょうか。地域差はあれど教科書に載っていたと答える人は多いのではないでしょうか。本企画は、あの授業中ずっとエビフライが食べたくてたまらなくなるような文章で、読者のお腹を空かせてみたい。そんな思いから立ち上げたものです。今回のテーマは「和食」紆余曲折あってこのテーマにたどり着きました。「創作」と「引用」様々なシチュエーションで繰り広げられる「食」を目で堪能してほしいです。
なので、始まりのこの文も和食のコースで最初に出てくる「小鉢」だと思って味わっていただければ幸いです。
ところで、この「小鉢」という料理。皆さんならいったいどんな料理を想像するでしょうか?大した量のないよくわからない料理?お腹を落ち着かせるだけの前菜?そうかもしれません。言葉だけの定義で言えば「深さのある小ぶりの食器。また、これに盛った料理」となるのです。イメージとしては和え物、おひたしなどが多いでしょうが、実は中身なんでもいいそうです。でもやっぱり和え物とかおひたし食べたいですよね。
例えばゴマ和え。茹でられた小松菜にすりつぶされて甘みの出てきたゴマを和える。一口食べれば触感は残しつつ柔らかくなった小松菜の食感とゴマの風味が口いっぱいに広がる。でもそのおいしし和え物も小鉢だとすぐになくなってしまう。
例えばおひたし。ほうれん草がいいですかねぇ。醤油が混ざった出汁にひたひたに沈んでいる形よく盛られたほうれん草。その上にぱらぱらとかけられている鰹節。口に入れた瞬間に香るのは鰹節のいい香り。その次に、じゅわりとほうれん草から飲めるほどの醤油と出汁が染み出してくる。ほうれん草が小鉢から無くなったら残った醤油と出汁を味わいながら飲み干す。鰹節の効いた冷えた汁がのどを伝っていく。
すぐになくなってしまう小鉢料理に
「あぁ、何だか食べたり無いなぁ」
と思いながら次に来る料理はどんなものだろうかとお品書きを見ながら想像する。
一番最初に出てくるのはどんなお造りだろうか。メインの焼き物にはまだちょっと時間がかかるだろうか。炊き立てのご飯はどんな形で出てくるか。そのまま器に盛られて出てくる?混ぜご飯?いや、おにぎりもあるかもしれない。
小鉢はそんなわくわくも含めると目に見える量だけでは計り知れないものがあるかもしれません。
前書きはここまでにしまして。どうぞ、ごゆっくり。