↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ではありませんでしたが、聖騎士様に溺愛されそうです  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/142

8:おませさん

 昼食会が終わり、再び村へ向かい、出発するのかと思った。


 ところが。


「お父様、お母様、これから僕はアリー様を庭園に案内したいと思うのですが」


 シリルがそう提案すると、パーク男爵夫妻は「ぜひ案内してあげるといい」と快諾した。するとシリルはとても嬉しそうに私を見て「参りましょう、アリー様」と席を立つ。


 チラリとランスを見ると。


 彼は「どうぞ」という顔をしている。つまり、庭園への散歩、いってらっしゃいということだ。ランスは私に付き添ってくれないのかしら?


 そう思ったら、ちゃんと席を立ち、距離を置いて後ろをついてきてくれた。


 そのことになんだか安堵してしまう。


 一方のシリルは私をエスコートしながら、いろいろ話を始める。まずは二人の兄について。一人は王都で議員をしているという。この兄に会いに、定期的に王都ヘ足を運ぶこともあると言う。もう一人の兄は騎士を目指しており、王都の騎士養成所に去年、入所したばかり。忙しく、ホリデーシーズンにしか領地には戻ってこないのだとか。


 さらにシリル自身は、毎日のように家庭教師から勉強を習い、将来は弁護士になりたいと思っていると話した。勉強が忙しい日々であるが。目下の関心事は、今月末に控えた社交界デビューだった。


 王都の宮殿で開かれる舞踏会に、シリルは一人前の男性として、顔を出すことになっていた。


「僕はいとこのエミリーを同伴するつもりでいたのですが……」


 庭園の噴水の前に着いたシリルは、そこで一旦立ち止まり、私に向き合った。そして突然、目の前で片膝を地面について跪くと、手を差し出した。


「アニー様に出会えたことに運命を感じます。良かったらあなたを舞踏会にエスコートさせていただけないでしょうか」


 これにはビックリし、目が丸くなってしまう。

 服装といい、その髪型といい、シリルはまさに子供の頃に読んだ、物語に登場する王子様そのもの。その彼がこんな風に声をかけてくれるなんて。まるで私はプリンセスになった気分だった。


 一瞬、気持ちは盛り上がる。


 けれど私は、聖女になりそこねた修道女だった。そんな私をエスコートしている場合なのだろうか。というか平民……なのだ。平民は舞踏会に足を運んでもいいのかしら?


 そこからして分からない。

 分からなくて、困ってしまい、ふとランスを見てしまう。


 ランスはとても真剣な表情で考え込んでいる。だが私に見られていると気づくと、とても困ったという顔になってしまう。


「アリー様」


 シリルの声に、慌てて彼に視線を戻す。


「ランス様は聖騎士で、その身と心を聖女に捧げていますよね。勿論、聖騎士を止めれば、結婚できるでしょうが、聞いたところランス様はまだお若い。どこか負傷したわけでもないですし、まだまだ聖騎士としてご活躍されますよね。それに聞いたところ、あくまでアリー様の護衛。アリー様とランス様は、恋仲というわけではないですよね?」


 2歳年下。弟とも思えてしまうシリルからのこの言葉に「な、何を仰いますか!」と、私は激しく動揺してしまう。


 シリルはランスが聖騎士であることを気にしているけれど。私だって修道女で神に仕える身。聖騎士と同じく、修道女を止めない限り、恋愛は許されない。


 要するにランスも私も現状の立場である限り。恋愛などありえない二人なのだ。それなのにいきなり“恋仲”だなんて! シリルはおませさんだ。


 とにかく立場上、恋仲であるはずがないと、全否定する。


「では僕がアリー様をエスコートしても、問題ないですよね?」と畳みかけてきた。


「シリル様、私は修道女です。平民ですよ。そんな私を社交界デビューという記念すべき場に同伴するなんて……。後々後悔されると思います。私よりもいとこのエミリー様と参加された方がいいと思いますが……」


 いとこのエミリーは伯爵家の令嬢。同伴する上で、何も問題はないはずだ。


 するとシリルは首を横に振る。


「僕は今日。あの場であなたと会い、一目でアリー様のことを好きになってしまいました。その美しいお顔は勿論、盗賊に襲われても、気絶することなく、毅然とされていましたよね。あの姿には、感動しました」


 さりげなく。いやハッキリと!

 シリルが私のことを「好きになってしまった」と言っている。

 これにはもうビックリだった。


 だって。


 シリルとは正直、会話らしい会話は、この庭園にくるまでの間しかしていない。盗賊を懲らしめた後、この屋敷に来るまで。シリルは海賊風の男ノリが乗っていた鹿毛の馬に乗り、ここまで戻ってきていた。よってここへ来る道中でも、ほとんど会話をしていない。


 一体この短時間で、どうして私を好きになってしまったの?


 もう頭の中は、疑問でいっぱい!


 それよりも何よりも。


「シリル様。私は修道女ですから、好きと言われても、困ってしまいます」


「それは……そうですよね。では婚約をしましょう! 婚約を機に修道女をやめ、我がパーク男爵家で共に暮らすのでいかがでしょうか。私が弁護士になるまでは、屋敷で花嫁修業をするのでいかがでしょう?」


 シリルは名案だとばかりに、瞳を輝かせている。

 一方の私は、突然のこの提案に、喜びよりも衝撃と驚きが勝ってしまう。


「そんな重要なこと、シリル様の一存で決めることができるのですか!?」


「僕は三男ですから。どのように生きようが自由です。両親もよほどのことなければ止めません」


「あの、平民の女性との婚約と結婚は、よほどのことだと思うのですが」


 だがシリルは「そうですか」と首を傾げる。「そうですよ!」と私が言うと、シリルはこんなことを言い出した。


「だって僕が弁護士になることを認めてくれた両親ですよ? 三男とは言え、男爵家ですから。それこそ騎士、外交官や議員になってくれと言われてもおかしくないのに。その時点で両親は、僕の自由を認めてくれています」


 そう言われてしまうと……。パーク男爵家の二人の兄は、議員に騎士と、しっかり両親の希望に沿った道を進んでいるから、夫妻は安心しきっているのかしら?


「弁護士も、ここにいては安月給ですが、王都に行けば、そこそこもうけられますから。妻と子供一人を養い、生きていくことは十分にできます。むしろ金遣いの荒い貴族の妻を持つ方が、大変だと思います」


 シリルのこの発言に私は……さらに衝撃を受けてしまう。

 なんて堅実なの……!と。

 2歳年下で、子供っぽい男爵家の三男と思っていた。

 でも人生設計は、バッチリだった。

 確かにシリルの目指す職業であれば、とんでもないお金持ち……公爵家の令嬢のところへ婿入りでもしない限り、贅沢は無理だろう。

 でも平民の女性が妻であれば……。

 例え弁護士であっても王都で開業し、そこで妻がサポートすれば、子供一人、親子三人で暮らしていけるだろう。


 聖女になれると思ったら聖女にはなれず。修道院に逆戻りかと思っていた。

 でもシリルの提案を受ければ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページやタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』は
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。