81:冬なのに!?
23時前に宿のロビーに集合した聖騎士達は、23時と同時に宿を出発した。
出発するみんなを、私とロキは見送り、部屋に戻り、休むことになった。
「アリー嬢、何かあったら、思いっきり叫ぶんだぞ。隣の部屋に俺はいるから。もし寂しければ、このまま一緒にアリー嬢の部屋で俺も一緒にやす」「結構です」
部屋に戻り、バスルームで軽く汗を流し、寝間着に着替えた。
窓は、ランス達が向かった廃城の方角にあった。
カーテンを開け、窓を少し開け、廃城の方を見てみたが……。
真っ暗で、そちらの方角に廃城があるなんて分からない。
見上げた星空は、まさに冬空。
この季節、星が普段以上によく見える。
空気がピリッと冷たく、すぐに窓を閉めることになった。
みんな、大丈夫かな。
昼食の差し入れに来ただけだったのに。
夕方には屋敷に戻り、今頃は自分の部屋で休んでいる予定だった。
まさかみんなが廃城へ向かうのを、見送ることになるなんて……。
そうなると自然と私も何かできないのかな、と思ってしまう。
私は、聖女になれなかったただの修道女。
でも魔物やランスの生命の輝きを見ることができる。
そして……魔物を引き寄せる体質かもしれない……。
ただそれだけで、後は非力だ。
酔っ払いの男に絡まれ、襲われそうになっても、何もできなかった。
そんな私にできることなんて、何もないのに。
どうして何かできないのか――なんて思ってしまうのかしら。
寝よう。
そう決意して、ベッドに横になる。
ランスに抱えられ、この宿に戻り、ベッドで横になった時。
薬を飲んでいたせいもあるが、ぐっすり眠ることができた。しかもランスが添い寝してくれたから、もう幸せいっぱいだった。
名前を甘い声で呼ばれ、ぎゅっと抱きしめてくれて。
ランスのつけるグレープフルーツの香水が鼻孔を満たし、心を喜びで満たしてくれた。
そんな素敵なベッドだったのに。
今はとても味気ない。
……というか、眠気が全然訪れなかった。
食後、警察官が来て、酔っ払い男に襲われた時の話をして、終わった時は「疲れた」と感じていた。今晩はぐっすり眠れるわね……と思っていたのに。
その時に感じた眠気は、どこかに行ってしまったようだ。
それでもベッドに横になり、何度も何度も寝がえりを打ち、そして。
「ダメ! 眠れないわ!」
そう言って上体を起こした。
ランスやアンリ、聖騎士達のみんなは、魔物の出現を待っている。四天王ランクの恐ろしい魔物を、この一週間ずっと。
今日、出現するのか。今日は、出現しないのか。
今日、出現しなければ、明日。明日がダメなら……。
もう団長は宮殿に戻っていると聞いた。
禁書に描かれているという、両親が残したペンダントの情報だって知りたい。
でも廃城の魔物を討伐しないと、ランスはこの地から動けなかった。
これは考えないようにしていた。
でもどうしたって考えてしまう。
ほんの一瞬。
ほんの一瞬だけ、廃城で私がペンダントをはずしたら。
潜んでいる魔物が現れてくれるのでは……?
それで討伐すれば、ランスは屋敷に戻れるし、王立図書館に足を運び、禁書の閲覧だってできる。
明日になったら、ランスに屋敷へ帰るよう言われてしまうだろう。
そうなると……。
今しかない。
……一人で廃城まで向かうのは、無理だ。
夜だし、魔物もそうだが、盗賊の不安だってある。
それに私は酔っ払いに今日、襲われそうになったのだ。
一人で動き回るのは危険。
ロキは……今から廃城に行きたいと話したら、協力してくれるかしら?
呆れられ、今すぐ寝るように、言われるかもしれない。
それでも……。
行動しなければ、何も始まらない。
断られたら、それまでだ。
意を決し起き上がり、ワンピースに手早く着替える。
なんだかドキドキしてきたので、深呼吸を繰り返し、気持ちを落ち着けた。
ブーツを履き、部屋を出る。
廊下は壁掛けトーチがついているが、薄暗い。
落ち着けたつもりだが、やはり心臓はドキドキしている。
ロキは……寝ているかな、と思いながら、扉をノックしてみた。
返事がない。
やはり寝ているわよね。
そう諦めかけたその時。
扉が細く開き、ロキの赤い髪と栗色の瞳が見えた。
が!
今は冬なのに。
ロキは……上半身裸!?
「アリー嬢、どうしたんだ? こんな時間に。しかも寝間着ではなく、ワンピースを着ている。俺の寝込みを襲いに来たわけではないようだ」
そう言いながら、扉を勢いよく上げる。
悲鳴をあげそうになり、慌てて自分の口を両手でおさえ、ロキに背中を向ける。
「え、何!? なんでそっぽを向くの、アリー嬢!?」
押し殺した声で、私は答える。
「ふ、服を! シャツを着てください!」
一瞬の沈黙の後、「あ、ああ」と間の抜けた返事があり、「すぐに着るから、部屋に入って」と肩を掴まれ、またも悲鳴を上げそうになる。なるべく床を見るようにしてロキの方を向き、部屋に入った。
「ど、どうして上半身裸なんですか!?」
「どうして。うーん、どうしてだろう? 昔からずっとこれだからな」
「冬なのに!?」
「そうだね。……アリー嬢が温めてくれると、いいのだけど」
これは完全な不意打ちで、ロキに抱きしめられてしまった。
「ランス様に言いつけますよ」「ごめんなさい」
すぐに離れたロキは、シャツを着ると、私に声をかけた。
「それで、アリー嬢。こんな時間にどうした?」と。






















































