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聖女ではありませんでしたが、聖騎士様に溺愛されそうです  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


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44/142

43:その表情だと罰になりませんか?◎

 寝たふりをしていると、ランスはおでこに続き、唇にも口づけをした。

 これにはもう驚き、声を出しそうなのを堪えることになった。


「アリー様、こんなにいい香りがして、朝陽も差し込んでいるのに。まだ、目覚めませんか?」


 ランスの美しい声に、つい、目が開きそうになる。


「……困りましたね」


 そう囁いたランスは……。

 ふわりと唇を重ねる。

 触れた瞬間に唇は離れ、でも再び、ふわりと唇が重なる。


 それが何度も繰り返され、自然と頬が緩みそうになってしまう。


 ランス、私の唇で遊んでいない!?

 口づけでいたずらをしていない!?


 そんなツッコミをしたい気持ちになる。


 その一方で。


 このふわふわした口づけだけで、意識が飛びそうになっている。


 同時に。


 足りない!と言う気持ちにもなっているのだから。

 人間の欲望には、底がないと感じてしまう。


 つまり、もっと深い口づけを望んでいる……。


 違う、違う、違う―――――っ!


 口づけをしている場合ではない。

 何せランスと私は、結ばれる可能性が限りなく低いのだから。こんなに口づけを……。


 長めの口づけが繰り返され、呼吸が……乱れてしまいそうになる。

 何より繰り返される口づけには、魔法でもあるのか、私は酔っているような気分だ。


「アリー様。起きてくださらないなら……」


 不意に耳元でランスの甘い声を感じ、目が開いてしまう。

 でもランスは耳元に顔を寄せているので、私が目を開けたことに気づいていない。

 このまま「おはようございます」と言えばよかったのに。

 なぜか目を閉じてしまった。

 その結果。


 私を気絶させた、あの濃厚なキスが始まってしまった。


 そうなるとさすがに、私は寝ている演技などできなくなる。


 ランスを止めようと、手を伸ばすと……。

 そのまま絡めとられてしまう。

 恋人つなぎのように、手の平を合わせた状態で、ベッドに押し当てられる。

 右手も左手も同じ状態。

 そして口づけは止まらない。


 朝からの濃密な口づけに、もう全力疾走直後のようになり、息も絶え絶え、意識を失う寸前。そんな私をランスはぎゅっと抱きしめると、はっきりと「愛しています」と耳元で囁いた。


 私は肩で息をしたまま、ランスに尋ねる。


「ランス様、お気持ちはとても嬉しいです。でもランス様は聖騎士ですよね!? 私に対し、あ、愛して……いる……なんて……」


 恥ずかしさで、言葉を続けることができなくなる。


「確かに自分は聖騎士ですが、アリー様を愛するためなら、除隊を申し出るつもりです。そしてただの騎士を続けるか、フリーの魔物ハンターにでもなるか」


「ま、魔物ハンター!?」


 ベッドに腰かけ、私の顔を覗き込み、乱れた私の髪を撫でながら、ランスはとんでもない言葉を口にした。


「ええ。需要はあると思うのです。国から仕事を請け負ってもいいですし、隣国に渡って商売を始めてもいいでしょうし」


 ランスの自由人過ぎる発想に驚き、尋ねる。


「聖騎士を辞めても、伯爵家の次男のランス様が、そんな魔物ハンターになるなんて……」


「伯爵家の次男だから、できる職業ではないかと。アリー様は知らなくて当然と思いますが、伯爵家は長男が後を継ぎます。自分は分家扱いで、伯爵家の家名と称号を維持させてもらうことはできますが、経済的な自立は必須。男爵の爵位を得ることもできますが、伯爵家の時のような生活は望めません。魔物ハンターと兼業で丁度いい……と思っています」


「そ、そうなのですね」


「そうなのですよ」


 ランスはクスリと笑うと、私の呼吸が落ち着いたことに気づき、ベッドから起きるのを手伝ってくれる。そしてそのまま窓際のテーブルへとエスコートしてくれた。つまり、朝食が用意されたテーブルだ。


 私を椅子に座らせると「どうぞお召し上がりください」とランスは微笑む。


 朝陽を浴びたランスの笑顔はキラキラと輝き、先ほどまで私を気絶させるような口づけをしていたとは、とても思えない!


 彼が椅子に座ると、共に祈りの言葉を捧げ、朝食がスタートする。


「ランス様が分家になるか、男爵になるか、いずれかを選ぶとしても……。そして魔物ハンターなる聞いたことがない職業で働き始めたとして、魔物を引き寄せてしまう私がいては、ご迷惑では?」


「アリー様。今後、迷惑という言葉を使うことは禁止します。使う度に、アリー様の唇を奪いますよ」


 持っていたパンを落としそうになる。

 迷惑と言ったら、唇を奪う!?


「その表情だと罰になりませんか?」「!?」


 ランスがそんな風に私をからかうなんて!


「アリー様は自分にとって、心から大切にしたいと思える存在です。迷惑なわけがありません。それに魔物を引き寄せる……というのはまだ仮定の一つです。本当にアリー様が魔物を引き寄せているのか。それにそのペンダントをアリー様に残したご両親は誰なのか。まだまだ調べることがあります。昨晩は、一つの仮説がもしかすると正しい……となっただけに過ぎません。ですからまず、悲観的にならないでください」


「ランス様……」


 そこでランスは、柔和な表情でコーヒーを口に運ぶ。


「夜と言うのは、なんとも人に不思議な影響を与えると思います。アリー様も少し、ドラマチックになり過ぎましたね。物語のヒロインとしては最高でしたが。自分もすっかりその雰囲気に酔ってしまったというか……。アリー様が魔物を引き寄せていると断言するような言い方をしたこと、猛省しています。申し訳ないです」


 深々と頭を下げるランスは……やはり真面目で律儀だと思う。


「魔物を引き寄せるかもしれない――これは自分とアリー様しか知らないこと。しかも確定事項ではないのですから。よって、二人だけの秘密です。ペンダントも謎が解けるまで、はずさないでください。はずさないで済むよう、朝食を買いに外へ出た際、チェーンを変えてもらえました。純銀製ではなくなりましたが、ずっとつけていても大丈夫です」


「そうなのですね! もう入浴の時も……」


「つけたままで大丈夫ですよ」


 言われるまでチェーンが変わっていることに気が付かなかった。これには「ありがとうございます」とすぐに御礼の気持ちを伝えた。


 ランスと話した結果。


 いろいろと私が懸念したことは、心配しないで大丈夫だということが分かった。一方のランスは……。

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