↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ではありませんでしたが、聖騎士様に溺愛されそうです  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
38/142

37:お見通し

 ランスが森へとつながる裏口の扉を開けると。

 真っ暗で何も見えない。

 目も暗さに慣れていないので、宿の明かりが届く範囲以外に何があるのか、全く分からなかった。


「階段がありますね。降りましょう」


 ランスに言われるまで、左側に地面に続く階段があることにさえ、気が付けなかった。


 ガシャン。


 裏口の扉は鉄製だった。ランスが手を離した後、鈍い重い音を響かせ、そして今、閉じられた。


 その瞬間。


 見えていた階段が見えなくなり、動けなくなる。


「さすがにランタンもないと厳しいですね。でも森の奥まで行くつもりはないですから」


 ランスは、夜の森が怖くないのだろうか。

 そもそもほとんど明かりが届かないこの場所に、恐怖を感じないのだろうか。


 聖騎士なのだ。

 魔物討伐は夜間になることも多いだろう。そして魔物がいるような場所は、森の中や寂しい場所が多い。つまりこんな場所にも慣れている……。


「さて。目は慣れましたか」

「そ、そうですね」

「では、降りましょう」


 ゆっくり、慎重に階段を降り、地面に無事辿り着けた時。

 心から安堵していた。

 安堵を実感し、自分が生を望んでいることを噛みしめる。


 魔物に魂を喰われてもいいと思っていながら、階段から落ちたら大変と思うなんて。


 完全に思い付きで行動し、魔物と対峙する心の準備など、全くできていないことに気づく。


「少し、お待ちください」


 ランスが私から手を離した。

 途端に不安に苛まれる。


 私から手を離したランスは、腰に帯びていた聖剣を抜いた。


 ウォウォゥォーン。


 狼の遠吠えのような声が聞こえ、体がビクッと震える。

 耳を澄ますと、フクロウの鳴き声、葉がこすれあう音、何かの獣の鳴き声も聞こえていた。


「よし。これでいいでしょう」


「!!」


 ランスは聖剣と聖槍を、地面に突き刺していた。

 宿から辛うじて届く明かりに照らされた場所に、まるで墓標のように、聖剣と聖槍が突き立てられていた。


「さあ、森に入りますよ」

「ラ、ランス様、丸腰で森へ入るのですか!?」

「ええ。そうすることをアリー様は、望みましたよね?」

「え!?」


 私がランスに提案したのは、聖剣と聖槍を手に、私のそばから離れてほしい……だったはずだ。聖なる力が込められた武器を置いて、丸腰で森に入るなど頼んでいない。


 というか、ランスは「アリー様の提案は受け入れることはできませんが、代わりにこうしようと思います」と言っていた。でも、何をするつもりなの……?


 聖剣と聖槍がある場所から離れ、森の中に踏み込んだ。

 足元で枯れ葉が、カサカサと音を立てている。

 同時に。

 寒さを感じた。

 シリルからもらったロングケープを、持ってくれば良かった。


 そう思ったまさにその時、私の右手を掴むと、ふわりとランスが私を抱きしめた。

 その瞬間、ランスは強く光ったが、それはすぐに落ち着く。


 突然抱きしめられ、心臓がドキドキし、さらに訳が分からなくなっている。


 冷たい森の中まで連れてきて、なぜ急に抱きしめるの……?


「こうしていると温かいですよね。一人では、こうはできないです。アリー様は、武器を持って離れるようにと言われましたが……。自分はあなたのそばを、離れるつもりはないですよ」


 そう言うとランスは、さらにぎゅっと私を抱きしめる。

 するとその体がまた、強く輝く。

 私は鼓動が早くなり、そしてランスの胸の中に包まれることで、確かにさっき感じた寒さを忘れそうになっていた。


「アリー様は、自身が魔物を引き寄せるなら、もう村にも、修道院にも、戻るのは止めた方がいいと言われましたが……それは『大勢に迷惑をかけることになる。だから村にも修道院にも戻れない』ということですよね?」


 ランスはそう言うと、自身の顔を私の髪に埋めた。

 先程より、彼の輝きが増したように思える。


「戻る場所がないと考えたアリー様は、何を考えたのか。優しいアリー様のこと。自身が魔物を引き寄せてしまうなら、すぐに消えた方がいい、魔物に魂を喰われた方が、誰にも迷惑をかけない――そう考えたのではないですか?」


 まさにその通りだったので、体がギクリという感じで反応し、動けなくなる。


「魔物が引き寄せられるか試し、もし魔物がやってきたら……自分に知らせることなく、不慮の事故として、ご自身の魂を、魔物に喰わせるつもりだったのでは?」


 何か言わないと、肯定することになると思うが、咄嗟に言葉が浮かばない。


「そんなことはさせませんから。聖騎士として、アリー様を護衛する騎士として。必ずあなたを守ります。アリー様を失う? そんなこと絶対にあり得ません」


「……ランス様、私は……」


「アリー様はずっと、お一人でした。孤児院で仲間もいたでしょうが、どこかで『自分がしっかりしなきゃ。ちゃんと自分で生きていかなければ』と思っていたのではないですか? ご自身が魔物を引き寄せてしまうのではと気づいても、自分に相談することもない。自身の犠牲で済むならと、悲しい判断をされてしまう……」


 ランスは……全部、お見通しだった。


「少しは頼ってください、自分を。頼りないかもしれませんが、信じてください。自分はアリー様を絶対に裏切りませんし、必ず守ると誓っているのですから」


 言葉の一つ一つが胸に染み、泣きそうになってしまう。


「帰る場所がないなんて思わないでください。アリー様の帰る場所に、自分がなりますから。村へ戻り、修道院へ行けば、迷惑がかかる――というのなら、自分の屋敷に来てください。それでは自分の家族に迷惑をかけてしまうのでは?と心配するなら……大丈夫です。自分は本邸ではなく、別邸で、一人で暮らしていますから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。