表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女ではありませんでしたが、聖騎士様に溺愛されそうです  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/142

18:ドキドキの目覚め

「ランスお坊ちゃま、ジョンとまた遊んでいるのですか?」

「うん。ティータイムまで、ジョンと遊ばせて、フラン!」


 子供の頃に飼っていた、ウルフハウンドのジョンの夢を、久々に見た。


 定期的に風呂に入れていたが、あんな薔薇のような香りのジョンは、初めてだった。天国では薔薇風呂でもあるのだろうか。そんな微笑ましさと共に目を開けると、あの薔薇の香りを感じ、目の前には美しいローズブロンドが見える。


 ジョンの毛はフォーンで、晩年はイエローっぽい色だったが、こんなに綺麗なローズブロンドをしていた頃は、あっただろうか?


 だが美しい。

 この香りもいい。


 ぎゅっと抱きしめると……。


 柔らかく、温かい。


 ジョンの毛は硬めで、がっしりした体躯をしていた。超大型犬だったので、大きさとしてはこんな感じだったが、こんなに触れ心地がよかった記憶はない。


 いや、待て。


 ジョンは当の昔に亡くなっている。そして自分は死んだ記憶はない。ということは、これは現実だが……。


 ベッドに横になった記憶もない。椅子に座り、アリーを見守っていたはずだ。


 そこでまさに血の気が引く思いになる。


 まさか……。


 そう思い、しっかり目を開け、確認する。


 そして自分の腕の中で健やかな寝息を立てているのが、アリーだと理解し、驚愕した。


 ど、どうして……!?


 同時に。

 ベッドで女性を抱きしめて寝ていたという状況に、あってはならない事態が起きていないか確認をする。


 良かった……。


 アリーはきちんと白い寝間着を身に着けている。そして自分自身も服を着ていた。ただ、ブーツは脱いでいる。脱いだ記憶はない。


 そうなると……。


 一つの仮説を考える。


 アリーは、どこかのタイミングで目が覚めた。そして椅子に座り、彼女を見守っていたはずの自分は……居眠りでもしていたのかもしれない。そこで彼女は自分に声をかけた。その時、自分は起きたのか、起きていないのか……。


 寝ぼけていたのだろうか?


 優しいアリーのことだ。椅子で眠らず、ベッドで寝ることを勧めてくれたのかもしれない。そこでうっすらと明るくなっている周囲を見る。ソファに、枕とアリーが着ていたロングケープが置かれていることに気づく。


 なるほど。


 アリーは自分のことをベッドに寝かせ、自身はソファで眠るつもりだったのだろう。でも彼女が自分のことをベッドに運ぶなんて無理だ。ということは、寝ぼけた自分がベッドに倒れこんだに違いない。そこでアリーはブーツを脱がせ、自分のことをベッドにきちんと寝かせてくれた……。


 それは……細い腕のアリーにとって、大変なことだっただろう。それをがんばってやってくれたのだと思うと……。起きてしまうかもしれないのに、思わずぎゅっとその体を抱きしめてしまう。


 鼻孔をくすぐる薔薇の香りは、彼女が使ったシャンプーのにおい……。


 ソファで眠ろうとしていたアリーがベッドにいる理由は、ジョンの夢を見ていたので、すぐに想像がついた。寝ぼけていた自分は、アリーをジョンと勘違いし、抱き寄せてしまったのだろう。


 人懐っこいジョンとは子供の頃、よく一緒に寝ていたから……。


 謎は解けた。

 やましいことは、何もなかったのだ。


 それは……安心できるような、残念なような、複雑な気持ちを喚起した。


 ◇


 誰かに見られていると感じ、目が覚めた。


 いきなり視界にランスの美貌の顔が見え、驚きと喜びで悲鳴を上げそうになる。


 長い脚を組み、椅子に座るランスは、その細くて長い指を唇に当て「しーっ」と合図を送った。もうその仕草が美しすぎて、涙が出そうになる。素敵な男性は、自然と動作も洗練されるのね……と感動してしまう。


 組んでいた脚をほどき、立ち上がったランスは、私の方へと近寄り、太陽のような明るい笑顔になる。


「アリー様、おはようございます。間もなく6時半です。そろそろ起きますか?」


 そう言って私の頭にそっと触れるランスに、もう心臓が止まりそうになる。


 いつから見ていたのかしら?


 微笑むランスの、サラサラのホワイトブロンドの髪は、綺麗に整えられており、肌もつやつや。寝起きという感じではなく、身支度をちゃんと整えた後だと分かる。見るとブーツもちゃんと履いている。


 私は全然眠ることができず、目はギンギンしていた。

 でもどうやら明け方にまどろみ、眠ってしまったようだ。

 逆にランスは目覚め、身支度を整えたと思うのだけど……。


 私が起きるまで、そのまま寝ていてくれてもよかったのに。

 寝顔を見られていたなんて、恥ずかしい!


 いや、ベッドで未婚の男女が、しかも修道女と聖騎士が寝ていたなんて、シャレにならない。もしもパーク男爵家の使用人が部屋に来て、この様子を見たら……。

 誤解される!

 そうならないよう、先に目覚めたランスは、きちんと身支度を整え、当初通り。私のことを寝ずの番で見守っていましたという状態にしたのね。


「起きて早々、アリー様は頭をフル稼働ですね。想像した通りです。先に目覚めたので、誤解がないよう、身支度を整えました。……自分が目覚めた時は、本当に驚きました。でも

 部屋の状況を確認し、理解しました。椅子で居眠りしていた自分のことを心配し、自身はソファで休み、ベッドを自分に譲ろうとしてくれたのですね?」


「はい。でもランス様は、私をフランという使用人と勘違いされたようで、ベッドで休むことをすすめると『ありがとう、フラン』と応じ、自らベッドに横になってくれました」


 起き上がりながらそう答えると、ランスは椅子にかかっていたウールのガウンをとり、私の肩にかけてくれる。「ありがとうございます」と御礼を言いながらガウンを着ると、ランスはその後の状況を、自身で分析した結果として教えてくれた。


「ジョン」という名は飼い犬の名前だった。しかもウルフハウンドという大型犬。この犬と私を勘違いしたこと。既に亡くなっているジョンだが、寝ぼけていたランスは、ジョンのことを懐かしく感じ、思いっきり抱きしめることになったと、明かしてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●9/2発売決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ