持てる者は失うことを知り、幸せは苦しみを知る。
開演前にも関わらず、会場内は大変楽しそう。
右隣の二人組はリクエスト募集の話をしている。彼らは「眠れない仮想都市」に票を入れたらしい。できれば「バンド時代」のを投票したかった、と。
いや、それやったら信者とアンチという名の信者が全力だして「曇った心」とか「わがままな誰か」とか「動かせない絡繰人形」とか「高速道路入口」なんかで埋め尽くすだろ。
演奏者の心が大変曇るリクエスト結果しか予想できない。シンシアリーさんも驚きの曇り具合。結果は別の意味で明白だ。
もしそうなら「彼らの最初のアルバムの彼らを最も現した曲」に1票入れている。この曲は「ヴォーカリスト」は歌い直しているのに、確認できた範囲で「彼」は一度も演奏していない。
まあ「彼」が演奏するなら「自分が嫌い」は確実に入るだろう。あとは「メアリーポピンズ」か?「夢を見ている奴らに贈られた曲」はまだしも「いいから飛べよな曲」は演奏まではしても歌わない可能性がある。「君だけに」なんかが入ったらリアル暗澹さる気持ちだろう。なんだかな。
俺が投票した曲は中間で3位。微妙だ。
ダントツなら演奏せざるを得ないが、このラインだと、セットリストに入れなくてもおかしくはない。
「考察」が正しければ、この曲は「彼」への「応援」だ。「彼」と「彼」の「生き様を象った曲」。当時ならまだしも、現時点で演奏したい気分にはならないだろう。
さて、暦自体はクリスマスイブだが、教会歴では今日の日没からクリスマス。時刻的には既に「日は落ちた」。
・・・神様の降誕を祝う日に、何してんだろ。
いや、みんな楽しそうだが。
クリぼっち回避にしても、わざわざよほど好きでもなければここには来ないから、そうだろうけど。
ため息つきながら、待っていると、開始時間のお知らせ。本当にサーカスみたいだな。
前方から「きゃーきゃー」という声。
なんだ?モニターを見ると、ピエロに扮した演出家が会場内を駆け回って、花を差し出している。
みんなが楽しそうに、ピエロに「手」を伸ばす。
ピエロは時々、立ち止まっては「花」を差し出している。・・・酷い「皮肉」だな。
どうとでも取れる意味合いだが「皮肉」に近いと感じられる。だが、会場内は楽しそうだ。周りは既にスタンディング。早くないか?
もう、モニターすらまともに見えない。完全に壁。ライティングがかろうじてわかるぐらい。
まあ、いいか。別に、どうしても見たい訳でもない。音楽だけでも確認できればいい。
そんな感じで「The Fool」に誘われる「時間」が始まった。