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密告  作者: 尾仲庵次
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でじたるな

 さあ、はじめよう。

 あたしの『密告』

 毎日の不満の捌け口。

 ネットの海に……今日あったことを洗いざらい『密告』するのだ。


 夜も更けてきた。

 実家に住んでいるあたしは自室のベッドで寝ころびながらスマートフォンを操作する。

 今日あったことを投稿する。


 いくつ『いいね!』がつくだろうか。


 月曜日は憂鬱。

 だって1週間の始まりだから。

 5日間という長い時間、仕事をしなければならないから。

 こんな日に楽しいことなどあるわけもない。

 なんとなく一日を過ごして、無事に終えることができたから不満はない。

 でもその代わりに達成感のような……何か気分のいいものもない。

 なんだかダラダラと無駄に時間を過ごしている。


 こんなんでいいのかな?


 140字という決められた文字数しか投稿できないから、いろんな思いは頭の中を駆け巡ってはいるものの

『こんなんでいいのかな?』しか投稿できない。

 あたしの投稿に対する返事はない。

 そして『いいね!』もつかない。

 当たり前だ。


 こんなんでいいのかな?


 いきなりそんなこと言われても誰にも何も響かないだろう。

 ああ……もう。

 難しいことを考えるのはよそう。


 そういえば……

 一緒に働いている同期の凛ちゃんはどうしてLINEをやってくれないのだろう。

 彼女は今どき、スマートフォンさえ持っていない。


『LINE交換しようよ』

『LINE?』

『うん。LINE』

『LINEって何?』

『え?』


 最初に知り合った時からこんな会話だったから面食らったのを覚えている。

 彼女はガラケーしか持っていない。しかもメールもやらない。


 なんで?


『だって面倒じゃん。用事があれば電話すればいいんだよ』


『ふふ……』あたしは最初の頃に凛ちゃんとやり取りした会話を思い出して少し笑った。

 ああ、そうだ。

 風変わりな彼女のことを『密告』してみようか。


 変わった同僚がいて……

 彼女、ガラケーしか持ってない。


 うん。

 140字ずつしか『密告』できないのだけど、これはなかなか面白そう。


『今どきそんな人いるんだ……』


 早速、返信が来た。

 あたしをフォローしてくれている『かかぼお』さん。

 プロフィールには男性とあるけど、当然、インターネットの海の向こうにはだれが潜んでいるか分からない。

 とりあえず『かかぼお』さんはネット上だと良い人だ。


 いるんですよ。

 彼女、かなりの変わり者で、普段からメールもやらないんです。


『けっこうそういう人いますよ。特に年配の方に多いですよね』


 今度は違う人から返信。

『犬波ごん』さんだ。

 プロフィールには女性とあり、彼女はどうやらスーパーで勤務している30代らしい。

 普段の『密告』を見ると彼女の仕事の様子を垣間見ることができるが、これもネットの海の向こうの話。

 嘘か真かは分からない。


 会話はこれで終わり。

 あたしはネットの海から現実に戻ってくる。

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