精霊流し
夕空の下家路を歩いていると子供が目の前を横切り不用意にも道路に飛び出してきた。不運にも子供のすぐ近くまで車が迫っている。ひかれると思うと同時に夢中で子供を突き飛ばしていた。瞬間身体が勝手に動いていた。顔を上げると車が眼前に迫っている。ブレーキランプが点りタイヤとアスファルとが擦れる甲高い音が聞こえてくる。危ないと思うがよけることはできずひかれるという事実から逃避するように目をつむる。
汗をじっとりとかき目が覚めた。汗を吸ったtシャツが肌に張り付き不快感がある。最近よく見る自分が交通事故にあう夢だ。細かいシチュエーションは毎回異なるが誰かをかばって自分が事故にあうところは共通している。
人が寝ているときに見る夢は深層心理を反映していて本人が自覚していないストレスや願望が反映されることがあるということを聞いたことがあるがこの夢が自分の自己犠牲願望の発露かと思うと夢の中でしか望みを実現できない自分にほとほと呆れる。
視界は暗くまだ夜は明けていないらしい。フローリングで寝てしまったのか背中に固い感触がする。そもそもいつの間に寝てしまっていたのだろう。横になった覚えすらない。記憶をなくすほどに酒を飲んだとでもいうのだろうか。その割に二日酔いの体調の悪さを感じない。寝起きの倦怠感すらなく思考もはっきりしている。
違和感を感じながらもとりあえず時間を確認しようと思い携帯を探すために立ち上がろうとすると不意の揺れに襲われ、慌てて片手をつく。一瞬地震かと思ったが明らかに揺れ方が地震の物とは違う。
だんだんと暗闇に目が慣れてきて周りの様子がわかるようになってきた。そもそも室内ですらなかった。なぜこんなところで目覚めたのかはわからないが自分は小舟に乗っているらしい。
小舟は木製であり平均的な成人男性が横になっても余裕のあるくらいの大きさをしていた。船頭には灯かりはともっていないが提灯のようなものが備え付けられている簡素な作りのもののようだ。
提灯を手探りで調べてみるが燃料が入っていないうえにマッチ一本見当たらないため灯かりをつけることは早々に諦める。他にめぼしいものは見当たらず櫂すらないため流れに身を委ねる外ないようだ。
周囲には深い霧が立ち込めていて数メートル先の視界すら満足に確保できない。どこかに船をつけることはできないかと周囲を見渡すと遠くで淡い光が点々と灯っていることに気がついた。光は動いてるようでこの船のように提灯が備え付けられている船なのかもしれない。
小舟を動かす手段がないので光に近づくこともできずどうしようかと思っていると小舟の後方から光が近づいてくるのが目に入った。
思った通り遠くに見える光は船に備え付けられている提灯の物だったようだ。近づくにつれて船の姿が見えてくる。自分と同じ木製で大きさもほとんど同じようで船の上に人影が揺れている。
このままでは追い抜かれてしまうと思い「おーい」と声をかけるとまるで船が呼びかけに答えてくれたとでもいうのかに追いつくなり並走するように減速しだした。
やってきた小舟には老人が乗っていて正座でじっと座っている。自分の呼びかけには気づいていないようだったのでもう一度呼びかけると微かに笑っているような表情で「どうしました」と反応を示した。
老人から反応が返ってきたものの、何を聞けばいいのか迷い言葉を継げずにいると何か合点がいったようで老人は僕に語り掛け始めた。
「そうか、まだ目が覚めたばかりか。しかし焦ることはないじきにすべて納得がいくだろうさ」
「どういうことですか。なぜ僕は船の上で寝ていたのかご存じなんですか?」得体のしれない違和感を感じながら老人に問いただす。
「こればっかりは自分で気づくしかないんだよ。私が教えてしまっては意味がないんだ」
「しかし、私の話でいいなら少し話すことはできるよ。ただし質問には答えられない」有無を言わせぬ態度でこちらに視線を送ってくる。
老人の態度に気をされながらもこの状況を説明してくれるかもしれない機会を逃すわけにはいかないため渋々首を縦に振る。
僕が了承を示したのを認めると老人は淡々と話し始めた。
「君もそうだったと思うが、私も気づいたら船の上で目を覚ましたんだ」
「目が覚めてからしばらくはなぜこんなことになっているのか大いにとまどった。周りを見回せども霧が深く立ち込めていて様子をうかがう事すらかなわず、船を操ることもできず途方にくれた」
ここまでは僕と同じようだ。うすうす感じていたが、この老人をはじめ同じような境遇の人が他にも無数にいるのではないかという気がしてきた。同じ状況であるはずなのにこの老人の様子を見ていると、やはりなにか僕の知らない決定的なことを知っているんじゃないかという疑念が大きくなるが気持ちをこらえ老人の話に集中する。
「それでもなにかこの現状を理解する糸口はないものかと立ち込める霧に目を向けると遠くに提灯の物らしい明かりが見えてきた。その明かりに気づくと同時に後方からに私が乗っている船より二回りほども大きく作りもしっかりした船が近づいてくるのが目に入ったんだ」
「船は大きいものの一人しか乗っておらずどこか穏やかな顔をしている人が座っているだけだった。私はその人に対して呼びかけたが聞こえていないのか気づいてくれたようすはなく通り過ぎてしまった」
「それからしばらくは遠くに船の物らしい明かりが見えるだけで近づいてくる船はなかったが不意に誰かのうめき声のような音が聞こえてきて、もしやと思い船の下を覗き込むとすぐ近くに人が辛うじて浮いているような形で板切れにつかまって流されていた」
「助けないといけないと思い声をかけながら手を伸ばすがわずかに届かず、船はその間も動き続けていたためどんどん距離は離れていった。こっちへ来いと声をかけてもうつろな表情で何か呟いたりうめき声をあげるばかりで私の声は聞こえている様子はなく次第に見えなくなってしまった」
「それから長い間小舟の近くに流れてくるものはなく私は途方に暮れてしまった。そこで現状を説明する糸口を探すためになぜこんな場所にいるのか、小舟の上で目が覚める前のことを思いだそうとしたんだ」
ここまで話し終えたところで並走していた老人の小舟は徐々に速度を上げ僕の小舟から離れだした。
「時間みたいだね。話ができるのはここまでのようだ。もう一度言うが自分で気づくしかないんだ」老人はそう言い置くと小舟の距離は離れていき霧の中に消えていった。
確信的なことは相変わらずわからないがとりあえず新しく分かったいくつかのことを整理してみることにする。
まず一つは、僕や老人のような人が他にも複数いるだろうということ。そして、船に乗っている人とどういうわけか溺れている人もいるということ。乗っている船の大きさにはなぜかばらつきがあるということ。最後に、老人が繰り返し言っていたが何かに自分自身で気づかなければいけないということだ。
結局この現状を説明するのにこんな状態になっている経緯をはっきりさせなければいけない気がする。しかし、依然として小舟の上で目を覚す直前のことを思い出すことができない。数日前の事は思い出せるのに肝心の部分はもやがかかったようではっきりしない。
他に手がかりもないので僕も老人がしたように何が自分の身に降りかかることになったのか思い出そうと試みることにした。
昨日布団に入った時間が早かったせいだろうか。朝が弱い自分にしては休日であるにもかかわらず早く起きることができた。
時刻は8時を少し過ぎたほど、休日をほとんど寝て過ごすようなことも多いためなおさらなのだろうが一日で何でもできるような多幸感に包まれる。しかし、明日が提出期限の大学のレポートを休日に片付けようとしていたことを思い出し一気に現実にひき戻された。
自分の見立てではあと三時間もあればおそらく提出できるだろうとふんでいるためそれなりに余裕はあるがレポートは期限直前に提出することが常で期限が守れないこともしばしばある。
原因は単純明快、着手するまでの時間が長いこの一点に尽きる。レポートが残っていて期限が近づいているからと言ってやろうということにはなかなかならず、後回しにしてしまい結局期限間近になってしまう。
今回も例にもれずいまいちやる気が起きない。晩飯の後でも十分に間に合うと気持ちを切り替え、せっかく早く起きたのだから気晴らしに外に出ることにした。
手早く朝飯を平らげ身支度を整え文庫本、財布などをとりあえずバックに突っ込み自転車にまたがり家を出る。
家を出たのはいいが行く当ては特にはない。こんな時はだいたいどこかしらで文庫本を読むことが多い。例にもれず今日もよく行く公園のベンチにでも座って文庫本の続きでも読むことにした。
この公園はそれなりに広く休日ともなると子供が多く少し騒がしいがちょうど木陰の下になるベンチが多くあり天気がいい日でも快適に読書にいそしめるためそれなりに気に入っている。
外に出て青空の下本を読むのは存外気分がいいもので気分転換をしたいときによく文庫本をもってこの公園に来る。
少し風は吹いているものの気温は低すぎも高すぎもせずちょうどいい、読書日和だ。
休日ではあるがまだ午前中ということもあるのか遊びに来ている子供が少なく全体的に人はまばらで、ベンチもいくつか開いていたので人から一番間隔があいて木陰になっているものを選んで腰かけバックに入れてきた文庫本を取り出し、栞が挟んであるページを開く。
栞はこれから山場に差し掛かるという一番いいところに閉じられていた。
この文庫本はよくある勧善懲悪ものではあるが決して退屈ということはなくそれなりに楽しんで読み進めることができた。
主人公は正義感は強いものの弱気で臆病な性格だ。僕はそんな主人公のキャラクターにシンパシーを感じて自分を重ね合わせて読んでいたが、物語が進むにつれて次第に主人公らしい一面をのぞかせていきここぞというときには持ち前の正義感でもって問題を解決していった。
結局のところ、こういったところが物語の主人公たる彼らと僕との違いなんだろうなと思う。彼らは一見人より劣っていたとしてもいざというときには人並み以上の活躍を見せて足し引きでプラスというわけだが僕の場合はいざという場面に遭遇してもしり込みして行動に移すことなどできずただ傍観するのが関の山で結果マイナスが残るばかりだ。こういった本を読むと小さい頃の自分を思い出す。
小さい頃は自分で何でもできると思い込んでいて、物語の主人公と自分を同化させて身を挺して誰かを守りヒーローになる想像などよくしていたがいつの頃からか自分は大した人間ではないことに気づいてしまい小さい頃のヒーローへの憧れはそのまま秀でたところなど何もない自分へのコンプレックスになってしまったように思う。
最近よく見る夢は子供の頃に想像していた場面そのままで、もしかしたら自分の中にまだ小さい頃のヒーロー願望が残っていて僕のそういった部分が見せている夢なのかもしれない。
そんなことを考えながらふと時計を見ると針が正午を指そうかというところだったので昼食でも食べに行こうかと思い読みかけのページに栞をはさみ文庫本を閉じる。
何を食べに行こうかと思案していると最近有名ラーメンチェーン店がオープンしたのを思い出した。電車に乗って数駅ほどのところにあるため少し遠いがせっかくなのでいってみることにする。
自転車にまたがりこぎ出そうとすると、ボール転がってくるのが目に入ったので慌てて止める。僕のすぐ後ろは道路なので少し肝を冷やした。受け止めたボールをサッカーをしていた子供が慌てて取りに走ってきたので蹴り返してあげるとお礼を言ってまたボールをけり始めた。
この公園はボールの使用は禁止されてこそいないものの蹴る方向によってはボール公園のすぐ横を走っている道路に転がり出てしまう事もある。僕がここにいなければさっきのボールも道路に出ていたかもしれない。
気を取り直して自転車にまたがりペダルをこぎ出す。
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ホームに降りていくとちょうど電車が停車していたので乗り込む。都心とは反対方向に行くためか思ったより車両内の人は少ない。
電車がホームを出てしばらくすると女性のか細い声が聞こえてきた。何事かとそちらに視線を送るとまばらな車両内だというのにほとんど密着した状態の男女が目に入ってきた。
まさかと思い二人を横目で観察するが女性は明らかに男性を拒絶している上に死角になっていてよくは見えないがどうも男性の手が女性の体に伸びているようだ。やっぱり痴漢だ。
とっさに助けなければと思った。しかし、躊躇してしまう。なぜできないんだ僕は何を怖がっているんだ怖いのは彼女だろう。声をかけることすらできずスマホを見ながら気づいていないふりをしてしまう。
突然背後から声がする。「おい。何してんだよおっさん」痴漢を働いている男に青年が詰め寄ろうとしていた。
「なんだよお前。」さっと女性から距離を取りながら青年に対して凄む。
「なんだよじゃねえだろ。痴漢だろおっさん」男の腕を掴んで女性との間に自分が入るようにする。
「なにすんだよ。痴漢なんかしてない。言いがかりはやめろ」青年に気をされ、しどろもどろになりながら弁明にならない弁明をした。
「言いがかりも何も現行犯だろ。わざわざ気の弱そうな女性を狙いやがって」
「うるせえ、さわんじゃねえ!おまえ何様のつもりだ!」
「何様も何もないだろ。往生際の悪いことはやめろ。次の駅で警察に突き出してやるからな」
「なんだと、ふざけんじゃねえぞ!」
青年とおじさんが問答している間に電車内の人達の注目が集まりだした。いよいよまずいと思ったのか痴漢男は別の車両に逃げようとするが青年はそれを許さない。
しばらくして電車が停車し青年は痴漢男を駅員に引き渡すといって逃げないように羽交い絞めにしながら降車していった。初めのうち抵抗していた男も観念したようで俯きとぼとぼと歩いている。
被害者の女性はまだおびえているものの青年にしきりに感謝を述べ、青年は笑顔で答えそんな女性を気遣うしぐさすら見せている。一見して清潔感もありいかにも好青年といった感じを受けた。
女性が痴漢にあっているのにいち早く気づいていながら何もできず、ただ傍観することしかできなかった。嫌な感じだ。助けに入った青年も大学生くらいで年も大して違わないだろう。なんで彼にはできて自分にはできないのかったのだろう。
僕にはできなかったのもしょうがないのかもしれない。だって彼は如何にも何でもできそうな好青年だったじゃないか、しかし強引にそう結論づけようとしても慰めにもならない。
彼みたいな人は僕とは違い自分の人生を主人公として生きているんだろうな。
誰もが自分の人生の主人公だという言葉を聞いたことがあるがそんなものは詭弁だ。彼にとってはそうかもしれないが僕には当てはまらない僕は僕の人生においても主役になどなれない。小さい頃ならいざ知らずもう大学生なんだ、そんなことはもう知っている。彼を僻んだってしょうがない、そんなことも知っている。ただ、小さい頃の自分がこれを見たら僕の情けなさに失望するんじゃないかと思った。
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昼の時間には少し遅いためラーメン屋はあまり混んでいなかった。おいしかったとは思うが電車でのことが気にかかってしまい味に集中できなかったのでよくわからなかった。
これから何をしようか。とりあえず腹ごなしは済んだ。持ってきた文庫本を読む気分ではないし家に帰るにはまだ早い時間だ。何より帰ればレポートが待っているのでまだ帰りたくはない。
友達に声をかけることも考えたが急に呼び出すのも悪いかと思いやめた。しょうがないので駅周りで一人時間をつぶすことにした。
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もうそろそろ日が暮れ始めるころなので観念して帰ることにする。結局たいしたことはしなかったがまあいい。
最後の悪あがきに自転車に乗らず押して歩く。この時間にもなると少し肌寒く気持ち程度袖を伸ばし首を縮めてできるだけ風が入らないようにする。
少し気が重い、レポートの事はもちろんあるが電車でのことがまだ頭に残っていた。困っている人がいて助けることができたのにそれをしなかった。こんなに情けないことはない。
確かにあの青年は主人公で僕は脇役であるのかもしれないが女性を助けに入らなかった言い訳にはならない。ただ僕が怖気づいてしまっただけに過ぎない。
いくら頭を悩ませたって嫌な感じはなくならないが引きずったままなのは良くない、それにこのままだとレポートの進行にも影響しかねない。
無理やりにでも今日あったことは頭の隅に追いやって考えないよう努める。なんにしても過ぎたことを気にしてもしょうがない。とりあえず帰ったら風呂にでも入って気分転換をしようか。
よしと頭を切り替えると子供に帰宅を促す放送が耳に入ってきた。ちょうど公園の横を歩いていたのでその放送を聞いて家に帰ろうと友達にお別れを告げる子供たちの声も聞こえてくる。
大学生になった今でもこの流れてくる歌を聞く家に帰らなければいけないという気持ちになってくるから不思議だ。
その時、飛び出してくるボールとそれを追いかける子供が目の前を横切った。嫌な予感がしてとっさにボールの転がる方向に視線を送ると、車が迫ってきていた。車の運転手はまだ気づいてはいないようだ。
危ないと思ったと同時に体が動いていた。押していた自転車を投げ出し依然としてボールに気を取られている少年に駆け寄る。無我夢中だった。少年を突き飛ばし僕はその勢いのまま道路に倒れこんでしまう。
まずいと思い立ち上がろうとするが焦れば焦るほど手足が言うことを聞かなくなる。車のヘッドライトの光を感じてかをを上げると運転手と目が合ったような気がした。運転手も軽くパニックを起こしていて慌ててブレーキを踏むことに腐心しているが車との距離と現在のスピードを考えると減速しきることは難しいようだ。ハンドル操作ももう間に合わない距離に近づいている。
轢かれると思うと同時に眼前はライトの強い光で真っ白になり甲高いブレーキ音と何か重いものがぶつかる鈍い音を聞いたような気がした。
全て思い出した。起きた時に感じたリアルな車に轢かれる感覚は夢ではなかった。僕はあの時に車に轢かれて死んでいたのだ。
そうであるならば目が覚めてからのことも納得できる気がする。
結果として僕は死んでしまったがどこか清々しい気持ちだ。ずっと自分の人生ですら主人公になれなかった僕としてはこれ以上ない最期のように思える。確かに未練が全くないといったら嘘になるがこんな最後も悪くないかなと思えた。
ただ一つ気になることがあるとすれば少年の事だ。少年は無事だっただろうか。まさか自分のせいで余計に大けがをしたなんてことはないだろうか。自分の犠牲が余計であったなんてことになったらあまりにも救いようがない。
生来のネガティブ思考がこんなことになった今でも出てしまった。後ろ向きな考えは良くないとこの考えを打ち消す。
あの小説では主人公の正義感による行動の先には必ず助けられる人がいた。だから、少年も無事に違いないと思いなおした。小説と自分の人生を同一視するのもどうかとも思うが死んでしまったのだし別にいいだろう。第一もう確かめようもないのだから気にするだけ損というものだ。
僕が死んでしまったのは理解できたが結局わからないこともある。
いったいこの川はどこに向かって流れているのか、この川に終わりはあるのか、疑問に思えば尽きないが結局は同じこと小舟が流れるのに身を任せどこかに行きつくのを待つだけだ。
肉体なんかは本来もうないのだから気のせいなのかもしれないが少し疲れた。小舟を背に横になると船はにわかに速度を上げ始めたような気がした。