第3話 ギョウショウニン
ーおい、起きろー -起きろって言ってんだよー
「オイ!オキロ!」
だれかも知らない怒号が目覚ましになるなんて思ってもみなかった。
「おはよう、、、ございます」
取り合えず挨拶だ、挨拶、これ大事。中学時代理不尽なまでに怒られ身に着けた挨拶はすでにひと人と会えば無意識に挨拶をする領域にまで達していた。
「ダイジョブカ?ボウズ」
中年おっちゃんにケモ耳がついている、コメントしづらいうえこの上ない感じだ。言葉もたどたどしい、、このあたりの人ではないようだ。
「あ、はい、ありがとうございます。おかげで助かりました。それで、、どうして僕はここに?」
「ボウズ、オマエガミチ二タオレテタカラタスケタ。」
森の前で倒れたはずだが、、まさかあの兵隊さんが運んでくれたのか?おお、なんだ優しい人だったではないか。
「オレ、イア、ギョウショウシテル」
お?行商人か、行く当てのない俺ならもってこいの職だな。
「俺は達平って言います。イアさん今回はありがとうございます。」
「タッペイ?メズラシイナマエナ、ナニ、キニスルナ[旅には道ずれ世には情け]イウ」
へー、この世界にもことわざがあるのか、、、と達平が異世界について新しい情報に感心していると
「ホレ、モジキ デフチャイル村ツク」
デフチャイル村、この世界に来て初めての村である。
「あのー、俺、家の人たちから追い出されて、、今仕事探してるんですけど、今から行く村になんかしごとありますかね?」
達平、異世界初の文無し宣言である。
「ナンダ?モンナシカ?ダッタラウチデハタライテケチョウドヒトリシンイリガイテナ、ムラデゴウリュウヨテイダカラソイツトイクトイイ」
願ったり叶ったりだ。
それから1時間くらいたっただろうか、達平の『あれ?もうじきてどれくらいのきょりなの?』という心中を無視して荷車はまだ進む。
それからさらに時間を置いて、やっと村についた。
デフチャルド村は小さな農村だった村全体が活気に満ちており、皆常に笑顔だ。村の人たちはふつうの人間、と言いたいところだがふつうと言うには少し大き過ぎた。皆2メートルはあるのだ、いったいこの世界には何種の種族がいるんだ?
「良い村ですね。」
思ったことを素直に言った、
「ダロ?オレガシルガシルカギリコノムラガオウコクイチバン。アトハマツ」
そうだった。この村に来たのは新入りの行商人に会うためだった。いったいどんな人なんだろう。
「シンイリハマダキテナイ、ムラデモマワッテクルトイイ」
「ですね、それじゃあ見てきます。」
ということで達平があたりを回ってみると、元の世界とは平均身長が40センチほど違うこの村にとても違和感を覚える。しばらく歩いていくと1メートル80センチくらいの薄い橙色の髪をした女性が近づいてきて
「ねーねー、おにいちゃんはここになにしにきたの~?」
ーは?-
思わずそう言ってしまった、だって、え?、180センチの女性がこの口調って
「ねーねーおにいちゃん?」
「おはようございます!」
やってしまった、、無意識に出る返事をこの時ほど恨んだことがあるだろうか、
っていうかこの村の身長って全体的にかなり高いんだったな、、、
「こんにちは、俺は達平っていうんだけどさ、この村来るの初めてで、、村の紹介とかたのめないかな?」
達平、自分よりも背が高い女の子に敬語を使わずしゃべる。そもそも、女性が苦手な達平にとってこの子はあまりにも話ずらかった、
ーだって、混ざりすぎじゃんナニコレ!?巨大ロリってやつ?変化球過ぎんだろおい、、、
「うん!わかった!私ティナっていうのたっぺー、こっちきてー!」
よかった、中身はしっかり子供の様だ。達平は子供には好かれるほうであった。両親曰く、覇気が全くないとかなんとか、両親から何か言われると案外傷つきやすいこのお年頃、はじめて言われたときは、それなりにショックを受けた
「最初にここが村の畑だよ、毎日みんながいっしようけんめいやさいをつくってるの」
などとティナが一生懸命説明しているの聞きながら、達平は荷車の中で固めたこれからの計画を再確認していく。大前提として、この先思い道理に事が進めばなのだが。
「だいたいこれでぜんぶだよ!」
どうやらティナの村紹介も終わったようだ
「ありがとう、もうじき待ち合わせしてる人が来ると思うからおれは戻るね」
名目上のお礼を言って、達平はイアのもとへ戻った。
「オウ、モドッテキタカアイツモモウジキクルゾ」
よかった、こっからさらに何分も待つのはごめんだ。
ふと、イアが村の入り口のほうを向いたので達平もそちらを確認する。
どうやら例の新入りがやってきたらしい。
新入りの荷車はおんぼろで、それを引く馬もとてもみすぼらしい、、、
ー大丈夫か?これー
心中でそう思いながら達平は新入り行商人が自分たちの前まで来るのまつ。
「お待たせしやしたぁ、あれ、こいつは?」
聞いたことのある声だ。
「あれ、もしかして風きっ!」
なぜ今俺は右フックを食らわないといけない
「オイ、モシカシテオマエラシリアイカ?」
イアが驚いた様子で聞くが
「いぃや、違いますせぁ」
ーえ、風紀じゃんっ、絶対風紀じゃんー
「マァ、オマエラハキョウカライッショニギョウショウノタビニデル、ケンカナンテスルンジャナイゾ
フウ、タッペイ」
ーえ?フウ?風紀じゃなくて?-
達平の中で混乱が起こる
「了解でさぁ、ほら達平いくぞ」
友達に首をつかまれて、荷台に放り投げられる、この扱い用に達平は機嫌を悪くせずにはいられない
「おいっ!風紀なんだろ?無視すんなよ!おいっ!」
怒りのままに声を荒げる達平に対して、フウは無視を貫いて荷車を進める。